【全裸肝試し、終幕〜逃走】
善は翁達と別れた後に峠に入っていたが、そこでも戦いが繰り広げられていた。
運転技術に自身がある雌餓鬼達が、車に乗ってドリフトピアノに乗った善を追いかけて来たのだ。
懸命に逃げるピアノの後を、雌餓鬼達の車がピッタリついて回ってくる。
ドリフトピアノ達は急カーブが多い道でも走れるように、コップに入った水が一滴もこぼれないよう走行する訓練を受けてきていた。
おかげで峠中の急カーブも難なく突破できている。
だが、雌餓鬼達の方も難なく急カーブを突破して、ピッタリ善をマークし続けているのだ。
(すぐさま捕まえるんじゃなく、あえてピッタリ背後をマークし続けることで、こちら側に確実に少しつづプレッシャーを与え続け、消耗させる・・・クソッ、いやらしいな!)
実際、雌餓鬼達からマークされ続けていた善が乗ってるドリフトピアノは、峠に入った時に比べて大分消耗しており、スピードも徐々に落ちてきていた。
(このままじゃいずれ捕まる・・・そうだ!)
「おい、ピアノ!」
善はピアノの筐体をペチペチ叩いた後、小声でピアノに対し命令をした。
命令を聞いたピアノはポロポロポローン!と返事をした。
峠の急カーブに再び差し掛かった時、曲がる直前で善の乗っていたピアノが突然真上に飛び跳ねた。
「「ザコ!?」」
突然飛び跳ねたピアノに驚いた雌餓鬼達は、ブレーキをかけるのも忘れてしまい、そのままカーブを曲がり切れずに下に落ちていってしまった。
真上に飛んだピアノはポロン♩という軽快な音を鳴らしながら着地した。
「無茶な要望に応えてくれてありがとうな、ピアノ。脚とか大丈夫か?」
ポロローン♩
ドリフトピアノが軽快な音を立てて返事をした。
ドリフトピアノの脚は通常のピアノよりも丈夫に作られている。
着地の衝撃ぐらいで折れるほど脆くはない。
「そうか、それなら良かったよ。」
ポロポロポローン♩
ピアノが再び軽快に返事をした。
(・・・さて、これからどうするか。)
追手の雌餓鬼達は倒した。しかしまだ逃げ切れたとは言えない。
遠くから小さな子供の足跡がたくさん聞こえる。恐らく他の雌餓鬼達のものだ。
(まだピアノの脚はやられていないとはいえ、さっきまでの攻防でこいつもだいぶ消耗しちまってる。このまま逃げ切れるかは怪しい)
(だがここでグズグズしてるわけにもいかねぇ、ピアノにもうちょっと頑張ってもらって、一気にこの峠を抜けて・・・)
ざぁ〜こぉ〜
「!?」
ポロローン⁉︎
下の方から聞こえてきた声に、善とドリフトピアノは身を震わせた。
先程落とした雌餓鬼達が生きていたのだ。
こちらに向かって崖を登ってきている姿が見える。
「「「ざぁー、こぉー!!!」」」」
さらに上の方からも雌餓鬼達の声が聞こえてきた。
見ると仲間をスケートボードにしてこちらに急速に近づいてきている。
ざこざこざこざこざこざこ♪
パラリラパラリラパラリラ♪と同じようなリズムの音があちこちから聞こえてくる。
その音を発しているのは暴走族の雌餓鬼である。
まさしく『前門の虎、後門の狼』、あるいは『四面楚歌』。善達は完全に包囲されていた。
(・・・これは流石にもう無理だな。すまねぇ翁、竹本。俺はここまでみてぇだ。)
善が絶対絶命のピンチを前に諦めかけたその時である。
「まだ諦めるのは早いぜ、ラスキー!」
上空から声が聞こえてきた、見るとそこには2人の全裸の影。
『スケボ雌餓鬼』と『下から這い上がり雌餓鬼』が善のすぐ近くまで接近してきた。
「「「ざぁ〜こぉ〜!!!!」」」
雌餓鬼達が善に襲い掛かろうと飛びかかる、しかし、
「顔面ビーム!!!」
「「「ざこぉぉぉぉぉ!!!!」」」
影のうち一人が顔面から放ったビームによって、雌餓鬼達は一掃された。
顔面ビームとは、めちゃくちゃ顔の良い男の顔面からのみ発動できる、必殺のビームである。
ビームである程度の雌餓鬼は一掃できたが、まだ暴走族の雌餓鬼達が残っている。
暴走族の雌餓鬼達はざこざこざこざこざこざこ♩と音を鳴らしながら善達のいる位置まで近づこうとするが、
「破ァッ!!!!!」
もう一人の影が振り下ろした拳を持って地面を叩き、その衝撃で地面が盛り上がって壁となった。
「「「ざこぉ!?」」」
盛り上がって壁となった地面を目撃した暴走族の雌餓鬼達は、これでは近づけまいと思って急いで引き返して行った。
「お前達、無事だったんだな!」
「お前こそ。・・・無事でいてくれて良かった、ラスキー。」
影の正体は善の仲間、成志事武と戦杉雄であった。当然二人共全裸である。
成志は善を抱き止めると、軽いキスを交わした。キスの瞬間だけ、戦は少し顔を二人から逸らした。
「そうだ、ラスキー。俺達はお前に伝えたいことがあって、ずっと探してたんだ。」
「俺に伝えたいこと?」
「とある筋から聞いた話なんだが・・・お前は知ってるか?———雌餓鬼の始まりの地のことを」