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第三の怪談:鏡の中の少年

【第三の怪談:鏡の中の少年】

———『鏡の中の少年』、夜中に踊り場の鏡を覗いて見ると、鏡の中にいる少年によって鏡に引き摺り込まれてしまうという。

「なぜ鏡の中に少年がいるんだ?というか、鏡に引き摺り込まれたらどうなるんだ?」

「同じように鏡に引き摺り込まれる系の怪談話だと、大抵はそのまま帰ってこなかったり鏡の中の自分と入れ替わられるとかだけど、まぁ鏡の中の少年は恐らく前者だろ」

「つまり鏡に引き摺り込まれたら最後、二度と戻ってこれない鏡の中の世界に・・・・・・はっ!つまり鏡の中の世界という名の異世界に連れていかれるってことか!なら今度こそ俺の肉体美と愚息を異世界の住人に見せつけるチャンス・・・・・・」

「落ち着け成志。・・・・・・そろそろ静かにしろ、踊り場の鏡の近くまできたぞ」

戦の言う通り、一向はいつのまにか踊り場の鏡付近にまで来ていた。こころなしか、鏡からは昼間の時とは違って禍々しい雰囲気が漏れ出ている。

「ふふふ、ここは僕の出番ですね」

そう言って鏡の前に立ったのは、眼鏡に全裸スタイルがお気に入りの眼鏡出手だった。

「眼鏡、お前抜け駆けする気か!?」

「そんなことはありませんよ。まぁ任せてください」

そう言って眼鏡は踊り場の鏡の前に立った。


さて、鏡の中の少年からの目線では目の前にはちょうど自身の次の獲物となる人物がいた、が、その人物のシルエットはいつもの獲物達と異なっており、蔓のようなものが所々から飛び出ている。

その蔓をよく見てみると、蔓は蔓でもメガネの蔓だった。そう、さっきまで全裸だったはずの男は、全身に大量のメガネを身につけていたのである。どのくらい大量かというと、それはもう、皮膚の部分が全く見えない程に。

だが目の前に立っている以上、たとえメガネまみれだろうと相手を引き摺り込むしかない。少年はとりあえず目の前の人間が纏っているメガネを剥がそうと手を伸ばし、メガネを掴んでは鏡に入れ、掴んでは鏡に入れを繰り返した。だが少年がいくらメガネを剥がそうと、何故か目の前の人間の皮膚すら一向に見えない。

———おかしい。もう大分メガネを剥がしたはずなのに。

少年がそう思いながらも、ふと顔を上げて目の前の人間を見てみると・・・・・・そこには、世にもおぞましい光景が広がっていた。

「あがががががががががががががががが」

そう、目の前の人間は口から大量のメガネを出していたのである。

実は眼鏡出手という人間は、全裸にメガネスタイルが気に入っているがゆえに、いつどこでメガネだけがどこかに行ってしまっても大丈夫なように体内に常に大量のメガネを仕込んでいるのだ!

当然鏡の中でもの少年はそんな情報を知るよしもない。だがこの事実を知ったうえでも、いやむしろ知ったからこそ、鏡の中の少年に「絶対こいつに負けるものか」という闘志が湧いた。

そして少年に闘志が湧いた瞬間、少年のメガネを剥ぎ取るスピードが格段に増した。その早さたるや、さながらイナズマ。少年の手は1秒間につき100本のメガネを人間から剥ぎ取っていた。そしてそんな猛スピードでメガネを剥ぎ取り続ければ、例え相手が常にメガネを補充していたとしてもやがては追いつける、皮膚が見えるようになる!そして!

グニッ

掴んだ!ついに人間の皮膚を捕らえた!

・・・・・・のだが、

グニッ、グニッ

間違いなく皮膚ではあるのだが、その割にはどうも感触が変だ。これはどこの部位だ?

そう思った少年は、確かめるために再び人間の方を見た。そして、掴んだ皮膚の正体に気づき顔を青ざめさせた。

「俺の愚息は中々だろう?・・・・・・少年」

そう、鏡の中の少年は高速でメガネを剥ぎ取り続けるのに夢中になったあまり、いつの間にか目の前にいた人間が変わっていたことに気づかなかった。

少年は、自分が陰茎を握らされたショックも相まって、そのままバタンと倒れ込んでしまった。


「お前のおかげで異界の住民に愚息を認知させるだけでなく触ってもらうこともできたよ。ありがとう眼鏡」

「いえいえ、これくらいお安い御用ですよ成志君」

そしてまた、一行は次の怪談の元へと向かっていく。

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