3/4(後編)
目の前にいた女性はドレスを着ていたが泥?などで汚れていて少し破れている所がある、服そのものだけを見ると結構きれいな形ではあるがあまり大事なされてないのが分かる
髪の毛もかなり乱れていたが白、黒、茶色…染めているように三色ある様に見る
もしかして、ラルさんが言ってた行方不明の人?
「傷大丈夫ですか!?治療はっ……」
「だ…大丈夫です……先ほど、門番さんに治療していただきましたので」
「そ…そうなんだ、よかった……」
そう言って三毛猫の女性は私たちに優しい目を向けていたが、その瞳は急に鋭くなり相手の男らに向ける
「あなた達…いったい何をしたか分かっているの!!」
「お…お嬢様、ご無事で…」
「私を探しているのは分かったけど……だからと言って別の村の人達に迷惑をかけないでよ!!」
「いえ…てっきりお嬢様がこの村の人達にさらわれてしまったかと…」
「バカっ!なんでそんなバカな発想になったのよ!」
「村の外中を探してもいなくて、もしかすると村の人がこぞってさらったのではないかと」
「あなた達から逃げていたからに決まっているでしょ!!ずっと隠れて過ごしてきたけど、こんなひどいことしないでよ!!」
「逃げ?隠れて?お嬢様どうゆうことですか?」
お嬢様と呼ばれている三毛猫の女性はしっぽを膨らませて話して…いや訴えていた
「私はあなた達の所から家出したいのよ!!一切遊ばせずに勉強しろとか!学校で出た宿題と別に課題を設けたりとか!運動も決まったことしかできなかったりだとか!遊び禁止だとか!!
私はあなた達の物じゃないのよ!!自由に遊びたいし生きたいから家出したのよ!!」
……その言葉を聞いて、私は…私の人生と重ねてしまう
一切として自由がなかったこと、決められたことしかできなかったこと、少しでも抵抗したら叩かれて教育される事、自由がなかったこと、助けを求めても誰も助けてもらえなかったこと
---自由を求めた末、自分の命を投げ捨てたこと
「…さん!ルウマさんさん!!大丈夫!?」
「……はぁ………はぁ………」
「ルウマさん!!」
恐怖で押しつぶされそうな感覚の中、突然暖かく抱きしめられる感覚がする…この感覚は知っている……
「……ラ………ル…さ…………ん?」
「うん、大丈夫?調子悪いところない?それとも怖かった?」
「………怖いの…」
心の中に深く塗りつぶされていった恐怖心はラルさんの言葉と共に溶けていった
「うん…ありがとう、門番と一緒に村を守ってて。
村にいた男の人達を呼んできたけど……状況的に大丈夫そう?」
「……分からない、行方不明と思う三毛猫の女性が入ってきたら、あの男の人達が止まったの……お嬢様とか言っているんだけど……分かる?」
「……ああ!」
「ひっ!?」
突然手をポンと叩きながら大きい声で納得していた、ものすごくびっくりした……
「ご…ごめんね!驚かせちゃって……」
「いえ…大丈夫です」
普通の人よりも声がはっきり聞こえるから本当にびっくりした……
「あのね、猫の人達の中に貴族というのかな?その人たちがいるんだけど、貴族の娘のサリー様の事だったの!」
「サリー様?」
「えっと…貴族と言うのは……なんといえばいいのかな?」
「街とかをまとめているから偉い人…みたいな感じですか?」
「そうそれ!その人たちの娘さん何だけど……本当にどうしたの?」
と、話していたけどサリー様?が言っていた内容を聞いたのか私が話すまでもなく理解したみたい
「……そういう暮らしをしていたのね、だからずっと街の外で過ごしてきたんだね何十日間も」
「何十日間?分かるのですか」
「こんな言い方するのもアレなんだけど……ずっと森の中に過ごしてきたのか汗や土の匂いがよくわかるもん…それに、何だか涙の匂いも分かる」
鼻がよく聞くからこそ分かると言う事なのかな…でも私も声からして悲しみが分かる
「で…ですから、お屋敷の一族としての自覚を……」
「いらない!分かって!お願いだから」
「ねぇ……」
「…今は大事なお話し中ですお邪魔は」
「あなた達は黙って!!
……どうしましたか?」
言いあっている中、ラルさんが乱入して話を聞くみたい……この状況でよくここに入れるね
「あなたはサリー様?」
「様……あまり様を付けないでほしいのですが」
「じゃあ…サリーさん?」
「それでお願いします。どうしたのですか?」
「その、家出した理由とかを聞きたいのですが?
答えたくないなら答えなくても大丈夫だよ?」
「……大きくご迷惑をかけたようなので事情を話します。でもその前に」
そう言って男三人の方に向かう
「あなた達に言うけど…私はお父様が私を縛らないようにしない限り帰りません。どうしても私を帰させたいのであればお父様を呼んでください!」
そう言うと納得した?のか引き返していった……
「私から、全てをお伝えします」
「うん、しっかりと聞くね」
周囲を見ると犬の人達が集まっていた。誰もが真剣に聞いている様子……私は怖いけど、ラルさんが手をつないでいた……ありがとう
そう感じてると、サリー様…いえサリーさんが事情を話し始める
「私は…猫の種族の町にあるお屋敷にて一家の娘として生まれました。でも、親は非常に厳しくて何をするのも決まってて勉強も一家の恥にならないように最高にならないといけない、運動も決められたことしかできないし……私は自由に遊びたいの
自由になりたかったから家出して森の中で過ごしてました」
自分の前世と重ねてしまい私の手は震えていた、でもラルさんはつないだ手を強く握った
自分と唯一違うのは、自由を求めるために死んで逃げたの事と自由を求めて家出した事
「犬の種族の街に迷惑かけないように誰にも見られないように、森の中で誰にも見つからないように過ごしてました。見つかったらお屋敷の方に言われたり、犬の街の方で匿うようにしたら迷惑になると思ったので…
無駄に学んだごとが役に立って森で生きるのは大丈夫だったんですが……まさか、こんな誘拐したなんて言いがかりをつけて迷惑をかけるなんて……」
そう言って村に人達に向き合って……
「このたびは…本当にあなた方に迷惑をかけて本当にすいませんでした!!」
そう言って地べたに土下座をして謝罪をした。
周囲の人達も慌てているしここまでしなくても…いいと思うんだけど…
「特に、あなたに謝罪したいです」
「え?」
言われたのは…私!?
「えと……お名前は?」
「ル……ルウマです」
「ルウマさん、私の従者のせいで怪我を負ったとのことですね……本当にすいません」
「……大丈夫ですよ」
本当は身体的よりも痛みのせいで前世のトラウマを思い出して心が痛かったけど、そのことは押し殺して飲み込んだ
「こちらをお渡しします。治療費だけでなく好きなことするのにお使いください」
「……お金?」
片手で持てるぐらいの袋を渡されたけど…結構重たい、貴族と言っていたし多分大金かもしれない…私にはこの世界の金銭価値が分からないけど中から出したらもしかすると周囲の人達はパニックになるかもしれない
ここで開けない方がいいかも
「はい、後で中身を見といてください」
「傷は治っているのですが……」
「服も血で汚れていたりしているのでその弁償もありますが……」
「あ…ありがとうございます?」
「そこまでだ」
突然重量感のある感じの声が聞こえる振り向くと、集まっていた人だかりが突然避けて行って、一人の猫の男性が歩いて来た
髪を見ると三毛色になっており服は高級そうなスーツを着ている
「お…お父様……」
「このたびはうちの娘と従者がご迷惑をかけた。
だが、代わりに娘を見つけていただき感謝をする」
父親は淡々と言葉を続けていた、本当に感謝をしている感じはなく、ただまるで事務的に話している感じであった…父親は厳しい目をしてまっすぐにサリーさんの所に歩いてくる
「ほら、行くぞ」
「やめて!」
サリーさんは逃げようとするが、父親は腕をつかみ引っ張っていく
……許せない、サリーさんの言っていることが現実味を帯びてくる。
自分の言いなりにやらせようとするその姿に本当に憤りを感じた
「ちょ…ちょっと!!」
「どうしました?」
「あの……なんでそんな無理矢理?」
「あの屋敷で生まれたなら何もかも文武両道に一人前にならなくてはいけない…そんなのは常識だろ?
今回は猫の街どころか犬の街にも迷惑をかけたんだ、帰ったら説教をする」
「離して!」
「言うことを聞け!」
「す…少しは娘の意見を聞いた方が……」
「それは困ります、わがまま過ぎるので」
ラルさんは必死で説得しようとするけどあの父親は何も聞こうとしない
我慢できない、我慢なんてできない、自分を客観視しているような気分でであって、抗っても大人の力でねじ伏せられてしまう、そんなこと……そんなこと!
「いい加減にしてえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」
黙って見てられることが出来なかった。私はこの世界に転生してから初めて…いや、前世で生きていた時よりも大きな声を上げた
声も裏返っているし喉が痛いけどそれでも叫んだ
ざわついていた周囲は一気に静かになり、視線が私に集まる
ラルさんもサリーさんも父親も村の人達も誰もが私に注目していた
「子供は……子供はあなたの物じゃないのよ!!
なんでそんなに娘のことを否定するの?!いろんな人たちがいるけど……犬も猫も誰もが完璧に一人前に出来ると思ったら大間違いなんだよ!最初から優れた才能を持っている人なんていないのよ!!それを一家の名誉だとか恥にならないようにだとか……決めつけるんじゃねよ!!!誰だって間違いはするし完璧じゃない!だからと言って指摘じゃなくて否定するな!」
説得なんてしたことは無い、説得なんて前世でやっても無駄だと思って言うから説得なんてしてるような気持ちは無い、代わりにあるのはとにかく言いたことをガムシャラに言っているだけ
「分かってるの?あなたの娘のサリーさんは何が言いたい分かっているの!?サリーさんは確かによくわからないお屋敷に生まれたとか言っているけどそれだけの普通の猫の人なんだよ!!完璧なんて私も誰も出来ないのよ!!できないからと言って拳だろうと言葉だろうと叩くと壊れちゃうんだよ!
壊れたら完全に手遅れになっちゃうんだから!!」
しっぽを膨らまして、顔も真っ赤にして、涙も流しまくって
それでも私は訴え…いや叫び続ける
「自由に……自由にしてあげてよ!!そんな楽しくない事ばっかすると笑顔とか無くなっちゃうのよ!!
そんなことしてもいいのかよ!!それでも連れて行くんだったら私がサリーさんをさらってやるんだから………猫の町でも犬の町でも出身でない私がさらう!こんな監獄みたいなところで不自由な暮らしなんてさせたくないんだから……お願いだから自由にさせてよ!!」
そういって、サリーの腕を父親からさらってこちらに引き寄せる
「ル…ルウマさん?!」
「はぁ……っはぁ……私は絶対にあなたを屋敷に行かさせない……行かせないんだから!!」
「………」
父親は静かに私のことを見ている……これでも否定するなら森の方に逃げるつもり
私と同じ不幸な目にあわせたくない
「………サリーよ、お前の意見としてはどうだ?」
「私は……自由に生きたい、遊びたい、だから家出したの分かって!
それでも否定するなら……本当にどこまでも逃げるから」
逃げる…サリーさんの言葉としても非常に重い一言であった、私も前世であの一家から逃げたかったけど許されなかった
「……分かった、だがそうだとしても娘は引き渡してもらう」
「……っ!?おまえ!!」
「身構えるな、まぁ…お前がここまでやるとは思わなかったから驚いているが、お前の…いやお前たちの必死さは分かった、いい親友を持ったなサリーよ」
は?親友?
「いや…親友じゃなくて…」
「いやいや、そこまでやってくれるなんて親友だろ?
だから、親友の必死な頼みに免じて教育を再度見直そうと思う」
「見直すじゃダメ!!」
見直すだなんて信頼できない言葉、とっさに食い気味に叫んでしまった
でも、親友か…ゆうことにした方がいいかも
「まあ待て……だからその家族会議と言う名の反省会をして娘に謝罪することにする」
………私の………叫びが奇跡的に届いた?
「だから、これからは自由を必ず保証するから一度話し合いをするために屋敷に帰ってくれないか……それとも…もう、親友の言っていた手遅れな状態か?」
「……サリーさん」
心配そうな目でサリーさんのことを見ると、決意をした表情で1回頷くと…
「……大丈夫ですよ、お父様の顔が今まで見たことのないぐらい優しい顔しています。本当に今までの行いは反省されたようですね」
そう言って父親の方に歩いて行った
「私の大事な親友さん…ありがとう…本当にありがとう……私のためにそこまで言ってありがとう!!
明日……また遊びましょう!」
少し涙を流しながら親子2人は去って行った………
「ルウマさん……すごいよ!町だけでなくサリーさんのことを救ってくださりありがとうございます。私は見ていたけど本当に……ルウマさん?」
「……ぐすっ」
前世でも起こって欲しかった。
前世で必死に助けを求めたり救いの手を伸ばしても解決できなかった。
そんな私が
「あああぁぁぁ………うわあああああああぁぁぁあぁぁああ!!」
否定され続けた人を救えた……言葉に表すことができない感情が濁流のように押し寄せてくる
ラルさんはそんな子供のように泣きわめいている私を見て「よく頑張ったね」と抱きしめながら撫でる
門番の人も村の人も「村を守ってありがとう」と感謝をされている
周りから『肯定』されている
ラルさんのような信用できる人もいる、サリーさんのように親友になった人もいる…街の人達もみんな優しい…これから先、楽しく生きれるような気がする
もう……自殺の事なんて諦める
楽しく暮らして生きたい……そう心から感じた
村の人達から感謝されながら、診療所に帰ることに
気が付けば、空は夕方を超え夜になっていた
町に明かりが灯り、町の雰囲気と相まって少し幻想的な感じがした
泣き終わったときには周囲にいた町の人達はみんな戻っていつも通りの暮らしをしていた
「……ありがとうございます」
「いや、逆に私から、本当にありがとう」
「うん……どういたしまして」
歩きながら診療所に戻って行ったけど、診療所の人はもう「退院できる」と言われた…溺れていたけど私の戦いを見て体調的に問題は無いと言われた。
魔法で受けた傷も診てもらったけど、門番さんの魔法のおかげで傷は完全になかった…本当にありがとうございます
怯えていた心も落ち着いてきたから、問題なく過ごせると言われました
「ねえルウマさん、お金はサリーさんから頂いたのよね?それで支払ってもらっていい?」
「もちろんです」
ここでもしおごりとか言われたら絶対に断っていました
…でも
「その……本当に価値とか分からないからどう支払えばいいのか……」
「んー?分かった、じゃあその小袋貸して!支払うから」
そう言ってラルさんに渡す
「うっ…重たいね、どれぐらい入って………わぁ!?」
「…っ!?」
突然吠えるような声を出したラルさんにビックリしてしまった……
「ご…ごめんね!でも本当にびっくりしちゃって……」
「う…うん、重さで結構あると思ったけど……そんなに?」
耳をたらしながら怯えた感じで聞くと、ラルさんも耳をたらしながら話し始めた
「ほ……本当に多いよ、しばらく何もしなくても暮らせるぐらいの……とととりあえず小さいお金もあるからそ……それで支払うよ……ほほ本当にお嬢様なんだね」
本当にとんでもない量なのか声が物凄く震えていた……自分の世界で例えるとしたら、1千万円も入っているという事なのかな?
支払いは済んで、診療所を出ることに……でも、私はどうしたら
「ねぇ?確か家ないんだよね?」
「え……うん……」
「じゃあ……案内の続きとして私の家に来る?」
「え?」
「それに今日はもう遅いから泊まる?」
「……いいん……ですか?」
「うん!村のために守ったし元気になったし!お礼としてシチューを振る舞いたいよ!」
事実、私はこの世界の住人じゃないので家なんてそもそもない………
「うん……でも家がないからその後は…猫の街で家を探したいのですが、手伝っていただいてもよろしいですか?」
「うん!あなたのおかげで街同士の喧嘩が収まったから全然やるよ!!」
……善意は本当にこんなにも暖かいんだな
しばらく街を歩いていると、道行く人はみんな「街を守ってありがとう」「助かった」と誰もが私に向かって話していた
感謝されることなんて慣れてないから恥ずかしくて顔が赤くなる
「ルウマさん、本当に元気になったね」
「え?まぁ……溺れて運ばれてから1回眠りましたし体調は……」
「違う違う、あなたの気持ちよ」
「気持ち?」
「うん……初めて会った時からずっと耳を後ろ向きにして怯えていたけど今は……前向きになっているよ!とても落ち着いているのが分かるよ」
自分では全く自覚がなかった、でも、言われてみればこの世界に来たばっかりの恐怖心は無くなって来てた
歩いていると、1つの綺麗な家が見つかる
暗くても猫なのか夜目が効くらしく色もはっきりわかる
石のレンガに屋根はオレンジ色の瓦……他の家と変わらないみたい
室内の様子は外は石造りに見えたが、中は木造になっていて暖かい色合いの造りになっている。
建築に関しての知識は必要ないと教わらなかったからあまりわからないけど、テーブルに椅子、料理を作るためのキッチンと…とにかく生活感がよくわかる造りになっていた
「シチューを作るからそこで座ってゆっくり待ってて!」
私が椅子に座るとラルさんはキッチンに向かい、買ってきたものを置いて料理をし始める……見た感じ、キノコとブロッコリーにニンジン、ジャガイモに玉ねぎ、それに牛乳かな?そんな感じの真っ白な液体を一通り用意して、サクサクと切っては鍋に入れてコトコトと煮込んでいく
材料も作り方も元の世界と変わらないみたいだ
キッチンから分かるその匂いを感じると急に自分のお腹から音が鳴った
「あっ……」
「まっててね、すぐにできるから」
恥ずかしい……猫の種族でもお腹がすくんだな……そういえばこの世界に来てからはお粥しか食べたことなかったな
「…うん、出来た!持ってくるね!」
そう言って前に食べたときと同じ木の器にお玉を使ってシチューを入れて木製のスプーンを刺して私の前に運ぶ
別の世界の食べ物であっても、目の前にあるのは自分の世界と同じ外見のシチューであった
真っ白な液体の中によく煮込まれた食材たちが沈んでいる
ニンジンもジャガイモも綺麗な色をしている
…本当においしそう
ラルさんも同じように自分の器の中に入れてテーブルに置いて向かい合って…
「いただきます」
「い……いただきます」
ご飯の始まりのあいさつは何処の世界も変わらないみたいだ
スプーンにシチューをのせて口に運ぶ
湯気立っている白い半液体の濃厚なまろやかさ、その旨みは口の中にあっという間に暖かく広がっていき飲み込んでも味が続く、こんなに口の中においしい空気が漂う心地よさは初めてで少し驚いた
沈んでいる食材もそれぞれの味は皆で協力をしているように、どれもおいしい
ジャガイモとニンジンは火がよく通ってて口の中ですぐに崩れて
玉ねぎとキノコからは噛めば噛むほどおいしい汁が出てきて
ブロッコリーはつぶつぶしているつぼみの部分にシチューがよく絡んでいて
どれもがおいしい……
ラルさんも一口すくって口の中に入れてうれしそうに目を細めながら咀嚼している
テーブルで見えないけど多分しっぽも振っていると思う
「おいしい~
ルウマさんもおいしい?」
「…はい、こんなにおいしいものは今まで食べたことなかったです」
「そ…そこまで言うなんて嬉しくなっちゃうよ」
ラルさんは照れていたけど決して嘘ではない
……その味は前世を含めて今まで食べた物の中で最もおいしかった。
静かにだけど、無我夢中で食べてしまった。
「おかわりする?」
「お願いします」
「ありがとう!喜んでもらえて嬉しいよ!」
そのまま合計3杯ほど食べてしまった。
「ごちそうさま…」
「ごちそうさま!」
食べ終わった後キッチンに開いた皿を運ぶとラルさんは皿を洗いながら会話をする
「今日…本当にすごかったね」
「……その、衝動的にやってしまいました」
「でもそのおかげで村を守ってサリーさんも守れたから本当に私から感謝いっぱいだよ!」
「…ど、どういたしまして」
器とスプーンはそれぞれ2つしかなかったから洗い物はすぐに終わったらしく、手を拭きながら戻ってきて向かいに座る
「それでね…相談があるんだけどいいかな?」
「相談ですか?」
「成り行きでサリーさんと親友になったけどその………私も親友になってもいいかな?
そうじゃなくても友達になりたいんだけど……ダメかな?」
親友……友達………前世では完全に無縁であった言葉、正直どうゆう物か分かってないけどそれよりも
「その………」
「どうしたの?」
「わたし…事情で名前も家も分からない人なのにですか?」
「でも、あそこまでやるならいい人だって信じられるよ!」
「その……そんなに正体不明な人を信じられるのですか?」
「うーん、今回は特殊な感じだったけど、誰も悪い人はいない平和な所だから」
随分と警戒心がないというか…優しすぎるというか…この世界はさっきのようなことは稀で基本的に平和なのかな?
私も……友達になりたい、親友になりたい
「………その、私………ずっと抱えていることがありました」
「深刻なことなの?」
「はい……事情にも関係することです」
私は……自分のずっと抱えていたことそのことを全部話すことにした
「私はもともと……この世界の住人じゃないのです」
「この…世界の?」
「はい、別の世界の人……だったのです」
「…別の世界の人?……全部話して」
「私は…前の世界はサリーさんのような高貴な一族の1人の娘として生きてました……でも状態はサリーさんよりも非常に悪い状態で……何をしても否定され続ける毎日でした。
私は、前世の時色々なことをして抗い続けました……自由が欲しかった、誰も寄り添ってもらえる人はいなかった…味方なんていなかった!誰も敵だった!!」
話している間、ラルさんは真剣に聞いていました
「だれも……誰も味方はいなかった、親だってきょうだいも誰もが否定して………私は……否定から逃げるために自ら命を絶ちました」
「自ら……そこまで追い詰められたと言う事なの?」
「はい……本当に救いがなかった。
最初私と会った時……私、沈んでいまたよね?私はようやく死ねたと思ったら、自分の姿が変わって自分のいた世界とは違ってて……何が起きたのか分からなくて……また自殺をしたくなって…それで自ら沈んでました」
「そんな……そこまで…ぐすっ………追い込まれていたなんて…………」
ラルさんは…泣いていた…
自分も…泣いている…
それでも話を続ける
「それで、救われて……ぐすっ……最初は隙を見て死のうとしました…でも!ラルさんのやさしさに…美味しい食べ物に優しい人々……それに自分と似た境遇の人を救えて………皆さんから感謝の言葉を聞いて………ひっく……私は……私は自殺をやめることをしたんだよ!!
本当に…ありがとう………ずっと抱えていたの……
別の世界の人だからこの世界の事は知らないし……あまりに世間知らずなのも…それが理由なの!
住むところだってないし…名前も……嫌いだから捨てた!!
これが私の事情なの…こんな私でも……親友になっていただけますか?」
別の世界から来たとか言ってて精神異常と思われるかも知れない、自殺したことに関して幻滅されるかもしれない…言った後の不安と後悔が自分に押しかかる
…それでも、全部吐き出したかったから話した。全部を吐き出したんだ!
これで、ラルさんから……否定はされたくないけど、何を言われても受け入れる……そう思いたい
「……ひっく………まって……泣き止むまで……」
「お願いします……私も涙が止まらなくて」
静かながらに、お互いの泣く声がただただ聞こえる……しばらく経ってからようやくラルさんは話し始める
「…うん、あなたのことは分かった
別の世界とか聞いたことないから信じたいのに信じ切れてない、現実味を感じることができないのよ……でもね、あなたが本当に何も知らないことが多すぎるし…こんなに必死に話してるから事実なのは本当なのね…それに、サリーさんのお父さんに言っていた説得、言葉に重みを感じていたし…」
「うん……信じ切れないの分かるよ……私だってなんでこうなったか分からないし……」
「うーん……」
少しラルさんは考え込んだ後に真剣な顔をして話し始める
「辛い人生があったんでしょ?」
「うん…」
「『死にたい』と昔は感じていたけど今は今は『生きたい』と心から感じているでしょ?」
「うん…」
「だったら…それで生き続ければいいと思うのよ!
私は…その話を聞いてもあなたと親友になりたい!!
もしさ……これから先、否定されたりして辛かったら相談して!
助けるよ!それが親友と言うことだから!!」
ラルさんからのその言葉に
「あり…が………とう…ござい……ます」
心の中にずっと抱えていた枷が外れていくような…解放されるような……そんなスッキリとした感情があった……
「思ったんだけど」
私が感謝の言葉をつづった後に私はしばらく泣いていた
泣き止んだ後…突然ラルさんは口を開く
「ずっと、ルウマさんルウマさんと言っているけど一応仮の名前なんだけど…そのままの方がいい?」
「お願いします」
「わかった…と言いたいけど、納得いかないことが一つあるんだけど言っていいかな?」
「な…なんでしょうか?」
「……親友なんだから呼び捨てでよんでいい?」
「え…いいですけど」
「その代りあなたも、呼び捨てで読んでほしいんだけどいいかな?」
「え?!」
呼び捨て……呼び捨て……何だか恥ずかしいな
「恥ずかしいの?」
「はい…」
「1回呼び合えばなれると思うから…ねえルウマ!」
「えっ……あ……その………ラル……」
「もう1回!ルウマ!」
「ラ…ラル!」
「ルウマ!」
「ラル!」
「うん……これで、私たちは親友になったね!!」
「う…うん!!」
「あっ…今すごくいい笑顔になってる!」
心の底から本当に嬉しかった。多分私は今までの人生の中で一番幸せだと思う
それからは寝る準備を一通りした…ラルはベットがあるけど私は敷布団で寝ることになった。
物語で見た友達とお泊まり会した時ってこんな感じなんだろうかな?
「ねぇルウマ…明日の予定どうする?」
「サリーさんと…遊びたいな…もちろんラルと一緒に遊びたい」
「うん!楽しみだな……街までもちろん案内するよ!」
「…本当に…ありがとうね…おやすみ」
「うん…おやすみなさい」
そう言って…お互い眠りについた……明日が楽しみ
明日から……もう怯えて暮らさなくて済む……寝るときはいつも「明日なんて来なければいいのに」と思っていたけど、今は全く違う
明日が楽しみなんて初めて…
「遅くなって……手遅れな状態になって…本当にごめんなさい…『白の魔術…固有の空間を…この人に』」




