1/4(前編)
「続いてのニュースです。昨日正午ごろ、○○区にて殺人事件が起こりました。死亡したのは会社員の○○で警察は現場にいた同じ会社員の○○と○○を殺人容疑で逮捕しました
容疑者は被害者をヘリコプターで空に連れていき突き落としたそうです
容疑者は罪を認めていますが『死体が蘇えった』と意味不明なことを言っており警察は慎重に調査を進めているようです」
そんなニュースを見て思う「人の悪意は本当に醜い」と…不幸に殺されてしまった会社員の男性に弔いの気持ちを抱えながら私は準備を進める
生まれてから17年間、私の人生を一言で表すなら「否定」であった
高貴な一族の娘として私が生まれた
その一家のモットーとして文武両道として決まっており何もかもが完璧にしなくてはいけないという決まりがあった
勉強も全て満点でならなくてはいけないし、運動も学年で1位にならなくてはいけない
私はそんなに優れた才能なんてなかった
「人間は誰もが完璧でない」そんなことはアイツらは考えない
私がテストで1問でもミスれば長い説教があり
私が運動会で2位以下になればひっぱたかれた
そして、たまたまアイツらの求めている完璧な結果を出しても一切として褒められることはなかった
「それが普通だ」と言っているかのように
私には何人ものきょうだいがいた、兄も弟も姉も妹も私と違って優れていた
何もかもが完璧だった
でも、きょうだい愛は無かった
優れた一族を増やすための世継ぎの手駒という扱いであった
私以外のきょうだいはそう理解していた
きょうだいは劣悪な私のことが嫌いであった
「一族の恥」と何回も叩かれた
体中にあざが出来た
世間体を気にされて服で隠された
だから顔は殴られなかった
私は警察に助けをもとめた
あざも見せた
言いくるめられたのか、金の力を使われたのか警察は役に立たなかった
それどころか私の扱いはさらに酷くなった
立場なんてなかった、居場所なんてなかった
それが家だけならまだよかった
学校も酷いありさまだった
小学校に入って早々、私は「あの一族」と教師から説明があった
周りの視線はとても鋭かった
あの一族は世間に嫌われていたからである
下らないプライドで調子に乗っていると言われていた
入って早々いじめられた
罵詈雑言を言われ続けた
「死ね」とも「生きている価値もない」とも言われた
暴力も普通に振るわれた
体のあざを見られた
心配なんてされなかった
寧ろを気味悪がられた
特に私に酷く突っかかったアイツは小学校も中学校も高校も「私を陥れるため」にずっとついてきた
家に報告したこともあった
「お前が原因だ」と自己責任にされた
教師に報告したこともあった
どの学校の教師も注意をするだけで収まらなかった
結局いじめの酷さが増すだけであった
酷いけがを負っても誰も助けてもらえなかった
助けられる人もいない、だったら逃げるしかない…
---だから私はこれから否定まみれの人生を私の手で終わらせようとしている
今、私は無断侵入した6階立ての建物の屋上にいる
身長よりも高い柵を登り越えて立っている
人間は5階建ての高さから飛び降りるとほぼ確実に死ぬと調べたことがある
だったらそれ以上高いところから飛び降りれば確実だ
一歩を踏み出せば自由になるけど地上には人が沢山いる
恐らく飛び降りたらクッションかなんかを使って私を助けるつもりだろう
有象無象には分からないだろうが助けられたら今度はアイツらに囚われて一生自殺の機会を無くすだろう
無断侵入の通報か私の自殺を止める為か屋上の扉が乱暴に開いてそこから警察が飛び込んでくる
「君!自殺はやめたまえ!」
止めたらアイツらに監禁される。やめる理由なんてない
「困ったことがあるなら相談してくれないか?」
今日、出会った誰かに相談なんてする?それに助けてくれなかったんでしょ?金とかの力で?
「生きていればきっといいことあるから止めてくれ!」
きっと…そんな曖昧な言葉で心変わりできないし、よくある綺麗事なんか気分が悪い
……どうせこの警察共が自分の都合でやっていることには変わりない、私が死んだら警察である自分たちの信頼が無くなる、逆に私を助けて自分達の信頼を得るために行動しているに決まってる
…私はアイツらの悪行を書きまくった遺書を警察共に投げつけて私は横に逃げる
前に落ちたら野次馬共に受け止められて生きてしまうし、もしかすると下の階に待機している警察に受け止められるかもしれない
屋上の給水タンクを飛び渡り歩いて、人たちが集まっている所とは逆の場所に思いっきり助走をつけて飛び出す
…下を見ると私は確かに落下している
6階の高さから落ちているんだ…
投身自殺の時、落ちている最中に恐怖を感じて心変わりしてしまうと知ったこともあるが、今の私は多幸感に満ちている!
幸せだ!自由だ!アイツらから逃げられる!それに警察にぶん投げた遺書の内容を公開してくれれば一族のアイツらもいじめたあいつも世間体が終わって復讐が出来る!あの内容は私にしたことを全て書いた!
でも、どうせ役に立たないことは知っている
金の力でまたもみ消されるんだろうな…
私の体から鈍い音だけが聞こえる
落ちてつぶれる不快な音だ
私の体は固いアスファルトの上に落ちた
あまりの衝撃なのか痛みは感じなかった
こんな世界からようやく解放されるという気持ちがいっぱいだった
自殺について調べたとき、人間は最後まで聴覚が生きていると聞いたことがある
そんな聴力も次第になくなっていく
遠くから野次馬共の声が響く
死んだことについて私に罵倒する者
助けられなかった私を嘆く者
手遅れなのに応急処置して私を助けようとする者
…ああ、なんだ、私の選択にそこまで言うなんて
私の行動を「否定」するなんて
私なんかいなくなってよかったじゃないか人間ども
解放の喜びを感じながら私の意識は薄れていった……
ようやく…解放されるんだ、こんな否定的な世界から
じゃあな、クソッたれな否定世界
…
…
……
……
………?
体が動かせる?
さっきまで全身の感覚がなくて、ボロボロになった機械のように鈍く動かなかった体が……軽くなった?
それに最期まで私を取り囲んだ野次馬共の声も聞こえない?
風を感じる、アスファルトであったはずの地面も草のような感触がする?
目も開けられる…
そこはとてもきれいな草原であった、そのまま真上を見れば…視界にたくさんの緑?木の葉で大木の側で私は寝転がっているようだ
暖かい風が頬を撫でて心地いい感触がした、上体を起こすとはるか遠くの地平線まで隙間なく大地を埋め尽くしている
人工物と言えるような建物らしいものは見当たらないし動物もいない
…ここがあの世かな?虚無なイメージがあったけど随分と綺麗なところなのかな?
「綺麗…何だか優しさを感じる、でも幻想的ではなく随分と現実感を感じるような?」
何だろう?あの世だとしても死神や天界の人みたいな案内人がいると思ったけど誰もいない?自分の思っていた死後の世界とは違うのかな?ちょっと周囲を探索しようと立ち上がる
「あれ?何だ?自分の感覚とは何か違う?」
でも違和感を感じるだけですぐに慣れる感じがした?ちょっと自分の体に異常がないかを見てみて……
「え?な?なに……これ……」
自分の体は自分の体ではなかった……死ぬ前はあの忌々しい学校の制服の格好ではあったが、自分の服装は下は灰色のズボンにベルトを着けていて、上は…ポンチョと言ったかな?下半身まで長いクリーム色のアウターを着ていた、内側には白いシャツのような服を着ていた
膝にはプロテクタのような金属製の膝あてが
肘にも金属製の肘あては付いていて……家の奴らから隠れて読んでいたファンタジー漫画に出てくる旅人みたいな恰好をしていた、動きやすい…動きやすいけど……
視界にチラチラ見えていた髪は死ぬ前の時は短くされていた黒髪だったが今は長くて白色をしていた
背後に違和感を感じて背中を見てみると髪と同じ色の…長いしっぽがあった
「鏡…水面でもいい…自分の姿は一体どうなっているの!?」
半場パニックになりながら私は何かしら「映る」物を探して駆け出す、美しく青色をしていた水辺を見つけて意を決して息をのんで水面に映った自分の姿を見る
……そこにいたのは私じゃなかった
顔つきはまるで外国人のようになっており目の色も髪の色も真っ白…それに、人間の耳があるはずのその場所には「猫のような耳」があった、死ぬ前よりも風の音などがはっきりとうるさいぐらいに聞こえていた
水面に映ったその表情は恐怖に満ちていて猫の耳も後ろ向きになっていた、今自分自身が理解できない現象にはっきりと恐怖している
少し服を持ち上げて体を確認してみる、体中のあざは無くなっている、でも嬉しさよりもぐちゃぐちゃな感情が私の中を巡っていた
「……てくれ」
昔読んだことのある、死んだ人が別の世界に転生して幸せに過ごすという物語を…現実で理不尽なことが起きて死亡し別の世界で生きるという内容
親からこっそり隠れて読んでいたから読んでいた巻数はバラバラだった、物語として楽しむ暇はなかった
それでも、その主人公の自由さには憧れたことがある…でも今は
「……死なせてくれ」
私は理解した、そんな物語の主人公……別の世界へ転生してしまったと言う事を
私の耳が水平に伏せて私は世の中の理不尽に訴える
「死なせてくれよ!こんなわけの分からない姿でこんな知らない世界で生きろっていうの!?誰がこんなことしたの!何のためにこうしたんだよおおおおおおおお!!」
死ぬ前が生き地獄と思っていたけど、今も地獄……正直もう生きたくないのにこんな否定され続けた記憶を抱えたまま生きるなんて……記憶なんて何もない、そんなまっさらな状態になりたい……もう一回死ねば忘れられるのかな
「…ああ、目の前に水辺……投身するよりは苦しいけどこれなら逝ける、周囲にはだれもいないし」
私は目の前の水辺に倒れるように入水する
水辺は深く、深く……かなり底が暗かった
投身自殺した時とは違ってかなり苦しい、こんな転生さえなければこんな苦しい思いはしなくて済んだけどそれでも私は死にたい
これから死ねるという幸せな気持ちで無理矢理苦しさを押し殺して肺の空気を全部出していく、口や鼻に大量の水が流れ込んでこのままいけば………
「なっ!?誰か溺れてる!?『上がって』!」
そんな声が聞こえると私の体は突然上昇して水面から引き上げられる!?
「なっ・・・?!ぶぐっ!がはっ!げほっ!!」
急に起きたことにまたパニックになる、無くなってきた酸素が一気に入り込んで状況が理解できない
「大丈夫!?息できる!?深呼吸して!」
「はぁ……ごほっ…………ごほっ」
何が起こったのかは理解できない、でも助けられてしまったというのは分かった、でもここで怒ったら自殺と思われて余計に自殺から遠のいてしまう
何とかごまかしてここから立ち去って欲しいが、多分無理
「はぁ……すうーはぁーーあっあの……すいません」
「すいません?」
人と話すことは正直苦手、転生前はまともに話を聞いてもらったことは一回もなかったからコミュニケーションに関しては点でダメなことは分かっている、建前的に敬語で話すことはあったけど何言っても叩かれたから正解は何かを一切知らない
「あ……あの……その…痛いのは嫌だ……何もしないで」
「そういうことね?さっきまで溺れていたからパニックになっているんだね……落ち着いて」
パニックになっているのは間違ってない、相手の姿を見れば…読んだ物語に書いてあった「獣人」と言える姿であるけどこっちは髪の色などは黒く、犬みたいな?狐みたいな?耳が顔の横についている女性であった
背中の方からちらっとみえる尻尾も犬のように見える
動物を見たとき普通だったら生きている時の僅かな癒しとして野生の動物を撫でたりしたところだけど人間と犬が組み合わさったその姿は不思議な感覚した……でもどうでもいい、私はとにかく死にたい
「…落ち着いているから……叩かないで………」
「随分と怖い目にあったのね……大丈夫よ、治療するだけだから腕とか足とか見せて」
言われるがままに両手両足を伸ばしてしまう、何かを命令されると勝手に行動してしまう、こういう時に少しでも背いたらすぐに叩かれるから
自殺の時は本当に無我夢中で本当によくできたと思う…
「…震えてる?大丈夫?寒いの?」
震えているのは、とにかく今目の前にいる黒い犬の女性に恐怖をしているだけ……早く行って欲しいな
「どうしよ…でも温まろうにも風通しのいい草原で火おこしは危険だし…うーん…よし!『一緒に飛ぼう!』!」
一緒に飛ぶ?いったい何の話…って
「えっ?えっ!ええええええええええええええ!?!?!」
黒い犬の人に手を取られると先ほど水中から持ち上げられたのと同じように犬の人と一緒に体が上空に浮いた!?もしかしてだけど…物語で読んだ魔法という物なの?!怖い!!意味不明なものほど怖すぎるっ!
「た…助けて!嫌だ!怖い!」
「大丈夫…大丈夫だから!落ち着いて!今私はあなたを街にまで連れて行ってお医者さんに見せるために連れて行っているだけなの!!私あなたを治すぐらいの魔法は無いからちょっと無理やりなことをしてごめんね!だから今は我慢して!」
この女の人は私を助けようとしているのは分かる…連れて去ろうとしていることに怯えている訳ではない、念願の自殺することができたと思ったら何も知らない世界で生き返り、その上自分が自分でない姿に変わり、もう1回自殺しようとしたらあまり人とかかわったことないのに助けられて、そのうえ物語にあるような魔法を体験して…現代社会で生きてきた一般人が精神的にかかる負担はかなり大きくパニックになるには十分すぎる状況であった…
「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁ!!」
くしゃくしゃな顔になり涙で滅茶苦茶になって訴える私の声が空の中心で響いていた……
しばらくその女性の魔術で飛んで行ったあと1つの森に囲まれた集落に付いた、木の柵で囲われていて壁は石のレンガ、屋根はオレンジ色の瓦で出来ている家が10軒以上あった
集落というより村かもしれないけどそんなことを考える心の余裕は無かった
「離して!!」
「落ち着いて!町に入のにちょっとした手続きが必要だからちょっとでいいから落ち着いて!」
そう言われてもパニック状態で全然落ち着けるわけないよ!
「ラルさん?!どうなされたのですか?!」
「猫の種族?いったいどうしたのですか?」
そこに近づいてきたのは2人の男性の人達?!2人とも私を連れて行った犬の女性と同じように犬のような耳としっぽがはえているけどそんな様子をよく観察する場合は無い……
「話は後!この子溺れていて助けたけど…よっぽど怖かったのかパニックになっているの!診療所は空いてる!?」
「はい…そうですが、いったんこの子を落ち着かせましょう『眠ってください』」
そう言われると、離れようと必死に抗っていた四肢は急に力が入らななくなり、意識も急に遠のいて行った………
「………」
「…!!……!!」
「……………」
「………『起きてください!』」
「ッ!?」
眠っている最中に冷水をぶっかけられたかのように急に意識が覚醒する
「…急に起こしてごめんね、大丈夫?体に痛いところない?寒いところもない?」
でも、生きていた時とは違ってかけられた言葉は罵倒ではなく優しく私をいたわっている言葉であった
「…え……あ………」
「落ち着いてる?大丈夫?」
起きていた時のパニック状態は完全に落ち着いていたけど、それでも他の人に対する警戒心は一切晴れない……
「……だ…大丈夫です」
「大丈夫?無理をしてない?それならよかった…」
そう言うと黒い犬の女性はベットの近くの椅子に座って視線を合わせて来ます……やっぱり余りの状況に恐怖は晴れないな…
「私の名前はラル、あなたの名前は?」
「私は……」
……本名なんて捨てた、あんな奴らに管理されるかのような名前なんていらない
でも偽名なんて持ったことないし、とっさに名前なんて思いつかない
「……どうしたの?」
「名前は………ない」
「分からないと言ったの?記憶喪失なの?」
「記憶?違うけど……何が何だかは分からない」
「分からない?お家は?」
「………ない」
「え?ど…どうしよう……」
「あ……あの……」
「ん?」
記憶喪失とかで誤魔化そうとしたけど、尚更…ラル?さんが困っている様子を見て、正直に話そうと思ったけど……別の世界からの転生と言ったりしたらまたパニックと思われちゃう
……誰かのために言葉を選ぶなんて前世で考えたことなかったな
「…ごめんなさい…誤魔化さないで言いたいのですが話したくないのです」
「離したくない?事情があるの?」
「………ある…でも名前も家もないのは本当なの」
「え……その、私たち犬の種族と猫の種族のそれぞれの村同士で喧嘩中なんだけどそれと関係あるの?」
……え?つまり?犬の人達と猫の人達で戦争しているの…?
自分の猫の耳を触りながら自分が改めて猫の種族の方なのを理解すると……私は捕虜にされて何かしらの情報を吐くまで拷問にかけられるんじゃないかという恐怖感が一瞬で心に湧いた
「たっ……叩かないで!痛いのは嫌だ!」
「叩かないよ!貴方のその言い方からしてあなたはあの一軒に関して関係ないの分かった……」
あの一軒?
……とんでもない時に私はここに来たみたい?
ちょっと落ち着いてきたから情報集めるしかない…のかな
「その……今起こっていることも、あなた達の常識も分からない状態なので教えていただきませんか?」
「え……あ……え?………うん、いいよ?話しているうちに落ち着くかもしれないからね」
そういってラルさんは座りなおして真剣な話をすることに
「私たちは犬の種族なんだけど……それも分かる?」
「まったく分かりません…」
「えっと、私たちは犬の種族で基本的に鼻が良くて走るのが得意だったり嬉しくなるとしっぽが無意識に振っちゃったり……」
それから話された犬の種族の特徴はまさしく、自分の世界にいた犬と特徴は一致していた。犬が人形になった……と考えば分かりやすいかな?
「猫の種族の事も分からない?」
「……はい」
「あなたの事情が気になるけど、それはあなたが落ち着いたら聞くことにするよ
猫の種族は、ジャンプなどの身体能力も高いし暗いところも良く見えるらしいのよ
耳を見るとある程度感情が分かるわ、あなたは……まだ今の状況が怖いのね……耳が後ろ向きになってるわ」
猫の種族も自分の世界にいた猫と特徴は一致していた。猫が人形になった感じみたいだね…物語だったら普通主人公はどんな反応するのかな、私は正直、受け入れているのか、理解できないのか分からないが恐怖だけは確かにあった。
人間じゃない…それに恐怖している訳でなく、今の理解しがたい状況に恐怖しているから
「これらが犬の種族と猫の種族の特徴だけど……ここまで大丈夫?」
「……はい、でも戦争中なのですか?」
「戦争!?そこまで怖いことが起きている訳じゃないけど……でも今は喧嘩中なのよね」
物事をネガティブにとらえすぎたのか勝手に戦争と勘違いしてしまった
「ご…ごめんなさい」
「勘違いは誰にだってあるわ、怯えなくて大丈夫よ
それでね…私もよく理由が分からないんだけど、猫の種族で女の子が1人行方不明になったんだけど、なぜか一部の猫の村の人たちが私たち犬の種族のことを怪しんでいるのよ」
「…行方不明なのはどんな猫の人なんですか?」
「黒と白と茶色…三毛柄と言うんだけど見たことない?」
「ないです……ごめんなさい役に立たなくて」
「謝らなくていいのよ、大変なときにこの村に来たけど一週間しないうちに落ち着くと思うからここでゆっくり過ごしてて」
「ここ…そういえばここは一体どこですか?」
「ここは村の診療所、怪我をした人や病気になった人が治すために来ることろよ」
「……私、猫みたいなんですけどここにいて大丈夫なんですか?」
「大丈夫って?」
「猫の人達と喧嘩しているのですよね……私のような猫の人がいても……それに喧嘩中なのに助けるんですか?」
「大丈夫よ!確かに喧嘩はしているけど怪我人だしあなたがこの村の人に喧嘩をしたりしなければ攻撃的になる人は絶対いないわ、もしいたら私に報告して!私が止めるからね
それに、溺れている人がいたら誰であっても助けるのが普通だよ!」
「は…はい……」
そう言われても相手のことを完全に信頼できない
「後は疑問とかある?」
「あの、私が飛んだり、あなたも飛んだり、急に眠くなったり………いったい何が起こっているのですか?」
「魔法のこと?魔法はみんな使えるけど?それも分からないの?」
「……はい」
「分かった、知らないことはいくらでも教えてあげるわ!
魔法というのは誰も使えることよ、物を持たずに持ち上げたりとかできたり、傷を癒したり、火を出したりできるけど……結構危ないのもあるから人に使う時は緊急事態でしか使わないわ、あなたを連れて行ったときは本当に緊急事態だったけど…」
魔法も物語とかで知ったのと変わらないみたい……でも、この世界の人にとっては『当たり前』だから逆に説明は難しいみたい……
「それで……落ち着いた?」
「……ごめんなさいまだです」
「そうね、落ち着いたならあなたの現状や事情を聞きたかったんだけど…難しいなら後で聞くね、えっと……名前がない?からどう呼んだらいいかな?」
「……『あなた』とかでいいですよ」
「それは嫌よ!名前は自分だけの物だからちゃんと知りたいんだけど……仮の名前でもだめかしら?」
「でしたら………『ルウマ』でお願いします」
名前を聞かれてから時間は少しあったから、話を聞きながら自分の偽名を決めていた。物語の名前は忘れたけど、ある3作品の主人公の名前を少し貰って使うことにした。それぞれの主人公3人とも転生しながらも一生懸命生きていたからね
「ルウマさんね?分かったわ、明日も様子見に来るから今日はここでゆっくり休んで、じゃあ私は自分の家に帰るからこれで」
「あ…あの……」
「どうしたの?」
「ありがとうございます、助けていただきまして」
「いえいえ、どういたしまして」
そう言ってラルさんはこの部屋を出て行った。感謝を伝えたが感情はこもっておらず事務的な感じで伝えただけであった…助かりたくなかった、死にたかった
今、猫と犬で戦争とまでは言わなくても喧嘩をしている中、この村を出ていくのは正直目立つと思う
その喧嘩にあまり関わりたくないけど、落ち着いたら完治を装ってこの村を出て…遠くで死ぬことにしよう
余りにいろんなことが起きた疲れなのか、遠くに行くために少しでも体を休めようとしているのか横になり10秒もかからないうちに深い眠りに落ちて行ったのであった
「……また生命に異変?『記憶を引き継いだままの転生』した生命は何処の世界に行ったの?」




