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1、二週目の世界の始まりは

目が覚めた。

視界に映った天井は懐かしい色合いで、慌てて飛び起きた。

ベッドから飛び降りて、思ったよりも視界が低い事に勘づきながらも、バルコニーに続く窓を開けて目を疑った。

眼下に見えたのは煌めく街並み。

あの日燃えつきたと思われたあの街がそこに息づいていた。

「ま、さか……」

勢いよくバルコニーの窓が開いた音が響いたのだろう、廊下から慌てたような荒い音と共にメイドが入ってくるのが見えた。

「王子!いかがなさいましたか!」

「あ、いや……、ちょ、ちょっと悪い夢見ただけだから、大丈夫」

「……は、はぁ」

凄く不思議そうな顔をしたメイドは、微妙な返事を返してしまった後に、慌てて背筋をしゃんと伸ばした。

「失礼いたしました、それではお着換えの準備をいたします」

お辞儀をした後、出ていったメイドを見送り、部屋にあった鏡を見て、やっぱりと腑に落ちた。

時間が戻ったように、自分は今子供の頃の姿で。

けれども頭の中は、自分が死に、塔が燃え盛るのを視界におさめていたところまで覚えている。

「どういうことだ……?」

魔術の中には確かに時空魔法等も存在するが、時間を完全に巻き戻す魔術は存在しない。

そんな事が出来るのは、神がそれに近い何かか。

考えつつも、自分の姿から見て恐らく学園に入学する五年前、十歳ころだと気づいて、あ、と声を漏らす。

そりゃあメイドが微妙そうな顔をする。

確かこの頃は何でもかんでも、嫌だ嫌だ、と騒ぎだしたころだと。

流石に今の精神状態で、それをやろうとは思えず、人生で一番短い反抗期は三日で終わった。




真新しい服に着替え、メイドについていき扉の前へ。

開いた扉の奥、懐かしい顔を見て一瞬泣きそうになったが何とか堪えた。

「おはようございます、父上、母上」

その言葉を告げ、頭を下げてから部屋の中へ。

少し驚いた顔をした両親へ、申し訳ないと思いつつも、椅子へ座る。

用意された朝食へ手を付けていると、恐る恐ると言った様子で父が声をかけてくる。

「二、ニア……?何かあったのか……?」

「?何かとは、何でしょうか」

「あなた、聞き方が酷いわよ」

「い、いやそうなんだがぁ……」

困ったような、情けないような声の父は、ここだけ見ると王には見えないが、公私混同しないだけで、王としての顔の時は威厳に満ち溢れている。

対して母はいつも通りに、少しほわりとしつつも突き刺すような言葉だと思った。

「急に貴方が大人しくなったから、お父さん、びっくりしたのよ」

「はは……まぁ、そうですね」

「本当にどうした!?熱か!?熱でもあるのか?!」

「父上、まだ食事中です」

「貴方、行儀が悪いわ」

妻と子に注意されてしまえば、夫は座るしかない。

しょぼしょぼとした顔のまま、座り直した父にくすくす笑いが込み上げてしまう。

「熱はないですよ、ただちょっと夢見が悪くて、」

嘘は言っていない。

もう二人がいない世界で、必死に生きた世界の記憶で、ずっと前に別れてしまった二人に逢えたのだから荒んだ気持ちは存在しない。

「……反抗してるのもちょっと馬鹿らしくなっただけですよ」

「あらあら、本当に怖かったのね」

楽しそうに笑う母に、あいまいに笑って返した。

「そ、そうなのか……、あ、ああそうだ、今日は勉強以外に一度出かけるから、用意をしておくように」

ごほんごほんと父が咳ばらいをした後、穏やかに微笑みながらも予定を告げる。

思えば今日は何かあったか、記憶をたどるがすぐには思い出せない。

何せ、もう何十年も前の話で、積み重なった記憶の山から掘り返さなければ出てこない。

「何処へ行くのでしょうか」

「ん?んんん、なぁ、これは言っていいのか……?」

「あら、別に言ってもいいじゃない」

言いづらそうにする父に対して、母は面白そうに笑いながら頷くばかりだ。

いや本当に何だっけ。

「今日は貴方の婚約者と逢う日よ」

未だに悩む父に代わって母が告げた言葉に、ぴしゃーんと雷に打たれたかのような衝撃が走る。

婚約者。

それは、死ぬ前に一瞬願ってしまった相手だった。

「えっと、それは、ハルモニア家の、」

「あら、もう知っていたのね」

「なんだ、そうだったのか」

「ハルモニア家のメリニウスと言う子が貴方と同い年なのよ」

メリニウス・フォーン・ハルモニア。

それが彼女の名前だ。

僕の婚約者であり、僕が断罪してしまった少女であり、最期に一目見たいと願った存在。

最初に逢ったのはどんなだったか、朧気だが、あの断罪した時にこちらをキッと見つめた目は覚えている。

自分はやっていないと、そもそも貴族として大事なことを教えていたと。

その言葉をちゃんと聞いていたら、きっと王国はあんな目に合わずに済んだかもしれないと、たられば論が浮かんでしまう。

「とてもしっかりしている子でね、貴方と是非にと思ったの」

「そう、なんですね」

そうだ、しっかりしすぎていて、確か昔の僕は負けているような気がして反抗してしまっていたような、気がする。

負けていると改善の問題に、彼女は努力の鬼だからなぁ、努力してない僕が勝てる訳でもない。

「逢うのが、楽しみです」

今回は、君を助けられたら、罪滅ぼしできないだろうかと考えてしまった。






あとがきって、後から編集できないんですね。

気力が続く限り投稿しますが、不定期です。

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