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あなたの横に立ってみて

――娘に自分が父親だと伝える勇気が無くてね。あの子はどんどんと大きくなっていくのに、僕は見守ることしかできないんだよ。


 公園で出会った男性は、私に会うといつもそうぼやいたものだった。

 私はいつも聞くたびに彼が想う少女が羨ましいと思い、そして、もしかして彼が悩みを打ち明ける私こそ彼の娘ではないのかと夢想もしたのだ。


 そうすれば、私は忘れ去られた子供じゃ無くなる気がしたから。


「まさか、本気であの親父に恋をしていたなんて言わないわよね。」


「ち、ちがう!こ、恋なんかしていない!」


 私は慌てて立ち上がり、そのせいで私の目の前のワイングラスはガチャンと倒れ、せっかくの晩餐の白いテーブルを汚してしまった。


「ああ、ごめんなさい。」


 私はそっと後に引かれ、それから気が付いた時には、私はバスティアンの横に、それも彼の腕に手をかけているような姿で立っていた。


「え?」


「気にしない。場所を変えようか?せっかく気心が知れた友人同士の食事なんだ。いつもは出来ないことをしてみようか?」


「え?」


「フォルマン!食事を大皿にしてさ、カード室に運んでくれないか?軍隊の立食パーティ式を俺の初めての貴族のお友達に教えてあげたいからね。」


「ハハハ。バスティアン。せっかくだが晩餐会の時のカード室は女性禁制じゃないのか?」


「ここは俺の家だ。無礼講だろ?」


 ルーファスはバスティアンの返しに瞳を金色に輝かすと、席を立つなり自分の大事な妻に手を差し出した。


「いこうか、君。悪い遊びを教えてあげるよ。」


「うふふ。楽しみね。」


 二人の雰囲気に私は、いいなあ、と溜息交じりに呟きかけた。


「いいなあ、バスティアンは。本気で惚れそうだよ。」


「え?」


 私は私にウィンクして見せた伯爵の顔を、唖然として見つめるしか無かった。

 私の何倍も美しいヒューであるが、とってもかわいく見えた事に胸がズキンとなぜか痛んだのである。


 なぜか、じゃない。


 あんな風に可愛らしく笑ったヒューに対して、なんと、バスティアンが頬を赤らめてしまったからだ。

 私ったら、彼に俺の、なんて何度も呼ばれているうちに、彼を自分のもののようにして考えるなんて思い上がっちゃったのかしら?

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