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初めまして、練習台様方

 夕方には悪魔夫人の相方と大叔母と、ピンクな王子様が我が家にやって来た。

 見るからに魔物な、黒髪に金目という組み合わせの長身で筋肉質な男はシャンタルの相方のルーファス・ミレイであり、プラチナブロンドだと言い張る白髪お婆ちゃん人形はオフェーリア・ミレイであるのは確実だ。


 では、にこやかに笑顔で我が邸宅の玄関を突破し、今や俺の親友のようにして俺の肩に腕をまわしている、ペルソナのんぐらーた、数が合わないピンクブロンドに水色の瞳の王子様は、一体誰様なのであろうか。


「まあああ!ヒュー!よくぞいらしてくださいました!」


 ちょっと黄色い悲鳴に近い声は、シャンタルではなくプリンのものだ。

 マダムパニシエの手直しのいらない既製服で可哀想だが、茶色の小汚いドレスを脱がせて、今風の水色のドレスを着たプリンは食べて下さいと言うキャンディにしか俺には見えなかった。

 ドレスから丸出しのつるっとした肩は、若々しい白い肌を輝かせている。

 こんなに清純な彼女が男を知っているだと?


「まて!君は女学院の男子禁制の寮で育ったおぼこだろうが!どうして俺が名前も知らないこの海千山千の王子風味男を知っているんだ!」


 俺の周りにいた人間達はピタリと和気藹々だった口を閉じ、なんと、俺を哀れむような目で見返してきたではないか!


 いや、俺の肩に腕をまわして俺に寄りかかっている男は、俺の横にいるので俺を見返してはいない。

 畜生、にやにや顔で見つめているではないか。

 で、ニヤニヤ顔のまま、俺の耳元にその女性でもおかしくないどころか欲しがるだろう完璧な唇を近づけた。


「ルーファスとシャンタルの結婚式。僕はヒュー・ウォルフォード伯爵様って言うんだ。今後ともよろしくね。ごめんね、仲間外れな気持ちにさせてさ。」


 俺は両目を瞑り数秒だけ数を数えた。

 俺はこの家の主人で、今夜は晩餐会のホストじゃないか、と。


「フォルマン!今夜はしきたり通りの男女交互の席じゃなくて、女席と男席に分けてくれ!プリンは親友と心置きなく初めてと言える食事を楽しみたいだろ!」


「まあ!でも私はあなたの事だって知りたいわ。これからあなたと仲良くしていかなければいけないのだもの!」


「プリン。前半はグッとくるけど、後半の義務感みたいな言い方はバスティアンが傷ついちゃうよ。」


 間男は俺のプリンの両手を掴むという、油断も隙も無い行動を取り、俺はそんな伯爵様の首根っこを掴んでプリンから引き離した。

 そして、こんな軽薄な男が社交界デビューもしていないプリンにコナをかけないようにと、俺こそ彼の肩に腕をまわした。


「俺もさあ、軍隊生活で友達がいないんだよ。せっかくシャンタル様が紹介してくれた君達だ。男同士でゆっくりと話し合いたいねぇ。」


 金色の目をした次代の侯爵はニヤリと微笑み、ピンクな伯爵は俺にしなだれかかって来た。


「僕はさ、男の方が好きだからね。すっごく嬉しいお誘いだよ。」


 今夜はおぼこな俺が社交界で生きて行けるようになるための練習会、だったのかもしれない。

 両手がおしべだけとなった俺は、陰鬱な気持ちで彼等を食堂へと連れ立った。

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