俺はうっかりものだからさ
二十二歳まで二年ある、プリンシアという少女案件をどうするべきか。
よし、情報と戦略と戦術を駆使し、どんな戦場でも勝利を打ち立てられた俺だ。
指揮官として最高の俺ならば、彼女に幸せな結婚を与えてやれるだろう。
方向さえ決まれば俺の足は速い。
俺はプリンシアが忘れ去られていた学園を訪れていた。
そこで案内されたドアを開けて目にしたのは、金髪が目に眩しい一人の美女。
彼女ならば俺のベッドに寝かせても良いと俺の口元は勝手に綻びながら、質素ながらも彼女が仕立ての良い服を身に纏っていることで、この学園に高額の寄付をしても良いかなと考えながら彼女の手を握っていた。
「会いたかったよ、プリンシア・ルル。親父から後見を引き継いだ時はどうしようと思ったが、これならすぐに嫁に出せる。安心して俺について来い。」
なんてしたことだ。
金髪碧眼のプリンシアは、自分が美女であることを忘れた様なぐらいに百歳の老婆みたいに顔を皺くちゃにして見せた。
皺くちゃになった彼女に驚かされている俺は、足に物凄い衝撃と痛みを感じてよろめいて尻餅までついてしまったのである。
さらに、俺が受けたばかりのその攻撃は、目の前のプリンシアが俺に絶対に繰り出せないであろう方向からだった。
「誰があなたについていくか!」
俺の足を蹴りつけて俺を生まれて初めて床に座らせたのは、灰色の巻き毛をしたみすぼらしい格好の小柄な少女だった。
彼女は髪が逆立つぐらいに怒り狂っていたが、丸顔に近い卵型の輪郭に大きな目の組み合わせが、俺が昨年失った飼い猫を彷彿とさせた。
親父の訃報で実家に戻ったばかりのことだ。
葬式で大勢の出入りがあったせいか気が付けば彼女の姿は無く、そして俺のもとにそのまま彼女が帰ってくることは無くなったのである。
どんな赴任先でも、勝手に鞄の中に入っていたあいつのくせに!
その彼女が人間になったみたいにして、俺の目を睨みつけているのだ!
よくも風呂に入れやがってと、ミーアが俺に顔を歪めた時と同じ表情で!!
わお!ダークブルーの瞳は、ミーアと同じサファイヤみたいじゃないか!
本物のプリンシアは一般的な美女じゃないかもしれないが、なんと可愛い女の子であったことよ。
「私は親友シャンタルの申し出を受けます!彼女の――。」
俺は俺が守るべきプリンシアがこれ以上馬鹿なことを言ってしまわないようにと、彼女の小さな頭と唇を両手で挟むようにして口を塞いだ。
「この馬鹿者が!女性同士の恋愛は持て囃されても認められておらん!当主として身内のそんな恋バナを許せるか!」
大声で叱りつけるや、俺は行方不明だった猫の生まれ変わりを肩に担いでいた。
まるで安物のカーテン生地のような質感のドレスだと思いながら、こんな粗末な服を俺の猫に着せるなんてこの学園を潰してやろうかと考えながら。




