1話 プロローグ
『カエデ!カエデ!カエデ!おはよう!!これやろ!これ!』
8月の朝、学校の教室に着くや否や、一足先に来ていた友達の『布施谷 一水』がケータイを突き出しながら詰め寄ってきた。
ケータイにはゲームの広告が映し出されており内容は。
『おはよう、ヒトミ。え~っと、そうる、すてーじ...「魂の舞台」?ゲーム?』
『そう!ほら、カエデはアレ。FD3をお兄さんから貰ったって言ってたジャン!対応してるから一緒にヤろうよ!』
FD3とは『full dive3』という名前のVR機器の事だ。この年の4月に一人暮らしを始めたお兄ちゃんからお下がりとして貰ったけど、そのまま使ってい無かった。
『落ち着いて、ひとみ。それってどんなゲームなの?』
押せ押せで詰め寄ってきたひとみを、落ち着かせながら自分の席に着く。
『なんかね、私たちがキツネっぽい奴やトカゲっぽい奴になって遊ぶオンラインゲームなんだけど、どう?』
どう、と言われてもフワッとした説明だとしか...
そもそも、あまりゲーム自体をしたことがない。
...ま、いいか。
『いいよ、やってみよ』
『やったー!』
そんな事が有り、私たちは帰り道でゲームショップに寄って『sole stage on-line』を買って帰った。
「安請け合いするんじゃなかった~~」
高い、高いよ!ゲームってこんなに高かったんだね!!7000円もしたよ!お小遣い2カ月とチョット!
「...」
チラリと時計を確認する。ヒトミとは3:30に約束している。今は大体3時。
「やろ」
FD3にゲームカセットを差し込んでから頭に被って、ベットに横になる。
【now loading】
『現在、この機体には2つのアカウントが有ります』
___
【天田 光】
►【天田 楓】
___
『認証中...ようこそ、楓さま』
【now loading】
少しのシステム音の後、急に視界が開ける。
そこは、ポットがいくつか並べられ、そこら中に太いコードや配管が走るこじんまりとした部屋だった。
『ようこそ、マスタールームα-2245へ。そして初めまして、楓さまはこの度が初ログインとなりますので、これよりマスタールームご利用に当たっての説明をさせていただきます。説明は私、t2が務めさせていただきます。気軽に「トニー」とお呼びください』
目の前に立っていた女性がにこやかに話しかけてきた。
まだ、ゲームは始まらないのかな?
私がキョロキョロ周りを見ているとトニーさんが話し始めた。
『この部屋はログインルームとなっています。こちらの部屋ではログイン時の酔いを抑える為に情報量を簡素化される処理が行われています』
『こちらへどうぞ』と言いながらトニーさんが部屋を出る。
言われるままに後を付いて部屋を出る。
『こちらはホームルームとなっております』
小さな部屋を出た先には、大きな部屋。ホテルのロビーみたいな場所だ。
そして、部屋の中央には、受付の様な場所がスペースを取り、トニーさんと同じ服をしたnpcが2人着いている。
『先ほどのログインルームと、このホームルームの二部屋を合わせてマスタールームとなっております。現在は説明中につきオフラインとなっていますので入れませんがもう一部屋、コニュニティルームがあります。コニュニティールームではインターネットにご接続頂くことでご自身のアバターを用いてオンラインでのコミュニケーションをお楽しみいただけます』
そこまで話すと、トニーさんは受付前へ移動する。
そう言えば、ヒトミと約束した場所はコミュニティルームだったけ。
それにしても良くできてるなー。
わ!ソファーがすごいフカフカ!
キョロキョロとホームルームを見ていると、トニーさんが手招きしているのが見えた。
ので、受付前まで移動する。
『こちらは、受付となっております。ここからは、ゲームを開始することができます。また、その他にも様々な機能がございます...例えばアバターの購入なども行えます。』
トニーさんは『では、次に』と言うとウィンドウを差し出してきた。
『ニックネームをお決めください』
ネックネームかぁ...う~ん「楓」「カエデ」と言えば「紅葉」と言えば「モミジ」
『モミジ様ですね。いいお名前です』
ウィンドウを受け取ったトニーさんは数回うなずいてから。
『では、何かご質問はありますか?』
「無いです」
『わかりました、最後に諸注意を。モミジ様は18未満ですので指定を受けたゲーム全般をお遊びいただけません。また、ゲームによっては内部時間と現実時間に差がある場合がありますので、定期的な時間の確認を推奨します。また、モミジ様は18歳未満と言うことでゲーム稼働時間に制限がかかります。時間が近づくとメッセージが表示され、超過すると強制的にログアウト処理が行われます。また、内部課金が存在しているゲームもございますので、内部課金につきましてはそのゲーム内での指示に従ってください』
そう言い切ると、一息ついてから。
『以上で最低限の説明を終えました。その他に疑問点がありましたら私は此処におりますので、ご遠慮なくご質問ください。それでは良きゲームライフと偽神の加護が在りませんことを』
トニーさんが言い終えるとウィンドウが目の前に現れた。
【アバターアクセサリー1~7を入手しました】
【アバター衣装1に着替えました】
【『アオ』よりメッセージが届きました】
【開きますか〈はい〉〈いいえ〉】
アオ?
ヒトミかな?〈はい〉っと。
【ヒトミだよ、キールームにいます。パスワードは2at13tre2だよ】
時計を確認すると3もうすぐ時半だ。
急いでコミュニティルームへの扉へ向かい、パスを打ち込む。
『接続中』
『接続完了』
そうポップメニューが出ると同時に、自動で扉が開く。
「あ!キタ!かえ…じゃなくてぇ、モミジ?」
ヒトミの頭上には『アオ』と出ている。
おそらく、ヒトミも同じ物を見たのだろう。
「うん、早いねアオ」
「じゃ、早くフレンド登録してゲーム初めちゃお!」
「どうやるの?」
「腕輪に触るとメニューが出るから、その他の所にあるよ」
腕輪?
自分で腕を確認するといつの間にか左腕に腕輪が付いていた。
ヒトミに言われた通りに操作する。
「えーっと、idが654,528」
「りょーかい...はい、承認よろしく」
『プレイヤID421,906の「アオ」」より、フレンド申請が届きました』
承認っと。
「おっけ!じゃぁ次はゲームの中で!」
「はいはい」
それだけ言い残して一水はコミュニティルームから出て行ってしまった。
「私も行こ」
と、呟いてから私もコミュニティルームからでた。
『現在プレイ可能なゲームは以上です』
___
►sole stage on-line
___
『sole stage on-lineを起動しますか?』
___
►はい
いいえ
___
『では、良きゲームライフを』
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