新しい風……
試合が終わって、いつもの日常に戻りつつあります。
みんな、あの試合から何を感じ取ったのでしょうか?
3月1日、池本は孤児院に行く。
「院長、おはようございます!」
「あら、純也君……今日は随分早いわね!」
「まぁ、やる事がないですからね!」
「色々話しがあるし、中にどうぞ!」
「??ありがとうございます……」
池本は院長室に入った。
「これ……」
池本はファイトマネーの一部を渡す。
「ありがとう純也君……」
「どうしたんですか?」
「実はね……ここの土地なんだけど、百合子ちゃんの旦那さんが買い取ったから、ずっと続けられるのよ……これもあなたのおかげね!」
「そうですか……良かったですね……」
「純也君……大切な話があるの……」
「何ですか?」
「……北村さんの息子さんから連絡が有ったの……2月27日に俊夫さんが亡くなったらしいわ……」
「……そうですか……」
「病院であなたの試合を2人で見てたらしいの……試合が終わって、息子さんが帰ろうとした時……俊夫さんがね、[お前には迷惑を掛けた、本当に申し訳ない]そう言って頭を下げたらしいの……そして翌日……眠るように亡くなってたって……」
「……そう……ですか……」
「息子さん、あなたにお礼が言いたいって……昨日、連絡が有ったのよ……純也君に直接お礼がしたいって……」
「……直接会うのは辞退します……もう充分でしょう……もう昔の事に囚われる事は無い……俺とはもう……関係無い……」
「でも純也君……」
「まぁ、1つだけお願いを聞いて貰えるなら……俺の両親の墓の近くに俊夫さんの墓を……そう伝えて下さい…………父さんも母さんも、俊夫さんと話がしたいだろうから……」
「純也君……本当に立派になったわ!」
「……ありがとうございます……」
池本は院長に頭を下げ、孤児院から出て行った。
池本は空港に向かった。途中で西田と合流する。
空港に着いた時には、午後になっていた。
「よう、体調はどうだ?」
「「池本さん!」」
「俺も居るんだけど……」
「西田さん!」
佐伯と甲斐は、本日アメリカに出発する。
「池本、徳井達は来ないのか?」
「あいつ等は練習だ。自分の事で精一杯だ。現役だからな!」
「「はい!」」
「池本はいいのか?」
「俺は統一チャンピオンだからな、たまにはお休みだ……」
「池本さん西田さん、俺達頑張って来ます!」
「絶対強くなって帰って来ます!」
「興味ねぇな……自分で始めた事だ……自分で責任取れる様になってから帰って来い!」
「「はい!」」
「そういえば、西田……うちのジムに来るんだって?」
「ああ、そうなんだよ。甲斐が居なくなったらお払い箱でさ……人手不足らしくて、声掛けて貰ったんだ!」
「俺達、アメリカから帰って来たら……」
「同じジムになるのかな?」
「大丈夫だろ?西田がどこかで会長やるから!」
「何言ってんだよ!どこからその話が来たんだよ!」
「いいじゃねぇか、2人の対決の為にジムやれよ!」
「お前がやればいいだろ?」
「馬鹿だな……俺が会長になったら大変だぞ!」
「何でだよ、いいじゃねぇか!」
「いいか……俺は4冠王者だ……佐伯も甲斐も、頑張っても俺まで届かない……可愛そうだろ?…世界チャンピオンになっても俺と比べられるんだぞ?……その点お前なら大丈夫、何せ大した成績じゃない!」
「お前、ふざけるなよ!」
「ふざけて言えるかっての……ちゃんと考えろよ……」
「何言ってんだよ!」
「俺は本気だ……お前はジムをやるべきだ……今はトレーナーとして学んで、いつかやった方がいい……お前は向いてる、選手も安心だ……」
「お願いします西田さん……佐伯とは、いつかちゃんと決着したいんです!」
「俺からもお願いします!」
「お前達……」
「感動の所悪いが……お前等2人は決着も何も、このままじゃ勝てないからラリオスにアメリカまで呼ばれたんだ……決着云々の前に、自分でしっかり歩いて行ける様にな……しっかり覚えておけ、お前等は弱いんだ!」
「「はい!」」
「時間だろ?早く行け!」
「「はい、行って来ます!」
2人は消えて行った。
池本と西田は2人を見送った。
池本は西田と別れ、1人でアパートに帰る。
アパートでシャワーを浴び、ラフな格好で横になり、テレビを付ける。久しぶりにゆっくりテレビを見る。池本の好きなお笑い番組がやっていた。池本はその番組をみながら笑った。楽しそうに笑った。
池本は笑いながら、今までの事を思い出していた。
初めてボクシングに出会い、会長・石谷トレーナーの指導を受けプロになり、今では世界チャンピオンである。ボクシングも8年やって来た。長い期間に聞こえるが、池本にとってはあっという間であった。
(楽しかった……本当に楽しかった……会長が居て、トレーナーが居る……いつしか後輩が出来て……さらに新しい奴等が来た……俺は何か残す事は出来たのかなぁ……ただ、楽しかった……楽しかったなぁ……)
池本は笑いながら涙を流していた。番組は臨時ニュースが流れていた。
しかし池本には、テレビ画面は見えていない。笑いながら、ただ涙を流していた。
若い2人が新たな一歩を踏み出しました。
頑張って欲しいですね。
さあ、次ですね!




