序盤……
ファーストコンタクト・・・
1ラウンド…………
池本はいつも通り頭を振り、左ジャブを出して行く。
頭を振る事で相手に的を絞らせず、自分から仕掛けて行く。まさにいつも通りである。
しかし、相手は最強ホプキンス、いつも通りはいつもの様にいかない。
池本の振っている頭に合わせ、ホプキンスは左ジャブを合わせていく。池本の頭が跳ね上がり、何度も被弾する。ホプキンスは打ち終わるとすぐに動く。両者の距離が再び開く。
池本は改めて体を振り出す。その体の振りが少しずつ速く、滑らかになってきた。池本のエンジンが掛かって来た。
池本は再度トライする。頭を振り、前に出て行く。今度は先程より速く滑らかである。
今度こそいつも通り、誰もがそう思ったがその期待は裏切られる。
またもホプキンスの左ジャブを池本は被弾する。またも距離が開く。
池本はファイター型である。近付く事が出来なければ話にならない。
池本はガードを上げ、前に出て行く。
今度はホプキンスの左ジャブを1つ1つ丁寧にブロックし、距離を詰めて行く。丁寧に丁寧にブロックし、間合いが詰まる。
池本は深く潜り込む様に一気に間合いを詰める。池本の打ち込んだ左ボディは、ホプキンスはガードする。
池本は返しの右フックを返そうとするが、池本の右フックを出す前にホプキンスの左フックが池本を捉える。池本の頭が弾かれる。
それでも構わず池本は手を出す。この距離で勝負出来ないと話にならない。池本はよく分かっている。だから池本は、打たれても手を出す。
ホプキンスも手を出す。池本のパンチはガードの上か空を切る。ホプキンスのパンチはしっかりと池本を捉える。
気が付くと池本は、コーナーを背負っていた。
池本のボディがホプキンスに当たった。
比較的に動かないボディなら当たる、池本は確信する。池本はボディに狙いを定めるが、ホプキンスのコンビネーションの方が速い。池本が1発ボディを打つ間に、何発ものパンチを受ける。
それでも池本は引かない、打ち返して行く。1ラウンド終盤、コーナーを背負った池本は必死に抵抗する。
しかし、ホプキンスの「最強」は伊達ではなかった。
池本は何度かボディを入れるが、ホプキンスはその何倍も池本にパンチを叩き込む。
池本はホプキンスの左フックをウィービングでかわした。ホプキンスは一瞬バランスを崩す。
池本は僅かだがバックステップをし、スマッシュを放つ。
しかし、ホプキンスは池本のスマッシュをかわしながら右を被せてきた。ホプキンスの右は池本が咄嗟に上げた左肩に当たり、ぎりぎりの所で届かなかった。
「カーン」
終了のゴングが鳴った。
赤コーナー…………
「いつも通りだな、余り遊ぶなよ!」
「なかなかやるが、そこまでだ……慌てずにいつでも終わらせる……準備しながら戦うさ……」
青コーナー…………
「池、動きは悪くない!」
「池本、パンチは当たるぞ!」
「池本君、始まったばかりだ!」
「慌てないで、想像通りだ……想像は超えていない……ホプキンス退治、なかなかに面白い……」
池本はホプキンスを見て笑っていた。
2ラウンド…………
池本は頭を振り、左ジャブから前に出て行く。ガードを高く上げ避ける事を前提でなく、ブロックをして間合いを詰める事を前提に池本はガードを上げながら前に出る。
ホプキンスは左ジャブを打ち、距離を取る。
池本がガードを上げ前に出るや否や、ホプキンスは外からパンチを放り込み、フットワークを使い左に回り出した。
池本は追うが、ホプキンスの左ジャブがタイミングよく当たり、なかなか追えない上、リズムも掴めない。
池本は回り込む様にリングを使うが、ホプキンスはそれを織り込み済みである。
先回りした池本が左ボディを打ち込むタイミングに合わせ、ホプキンスは右フックを合わせる。池本のパンチが下にある為、ホプキンスのパンチは綺麗にヒットする。池本の動きが一瞬止まる。
ホプキンスはパンチをまとめて来た。
池本はガードをすぐに上げ、追撃を耐える準備をしたが、ホプキンスはお構い無しに打ち込んで来る。
池本はガードをしたままコーナーに追い込まれていく。ホプキンスは池本のガードの上から更に打ち込む。池本はその中のパンチを選び右フックを合わせるが、その右フックにホプキンスは左フックを合わせる。池本の頭だけが弾ける。
池本はすぐに反撃するが、ホプキンスには当たらない。池本はホプキンスのボディにパンチを集める。
またも池本が下に、ホプキンスは上下にパンチを打ち込み出した。
しかし、やはりホプキンスの方が連打が早い。
池本が数発打つのに、ホプキンスは何発も打ち込む。池本の方がジリ貧である。
しかし池本は、全く引かない。徹底的に手を出し続ける。いつの間にか池本の顔が鮮血に染まる。
ホプキンスの攻撃に、池本はボディを打ちながら強引に前に出て行く。池本がコーナーから力ずくで3歩前に足を出し、ホプキンスに左ボディをヒットさせた所でゴングが鳴った。
池本は意地を見せているが、明らかにホプキンスにポイントは取られている。
ホプキンスの強さを会場の全員が目の当たりにしていた。
赤コーナー…………
「なかなか粘るね!」
「変わりは無い、いつも通りだ……」
青コーナー…………
「池、これからだぞ!」
「池本、今までで一番の動きだ!」
「これからだよ!」
「落ち着いて下さいよ……これからこれから……」
池本の目の光は失われていない。
ラリオスが通訳と話している。
「見事だな……ホプキンスは強い……」
「池本の反撃は難しいのか?」
「池本は大丈夫だ……意外に楽しんでるかもな!」
ラリオスが不敵に笑った。
劣勢・・・




