意外な押し掛け助っ人!
池本の悩み、解消されればいいのですが・・・
最強への挑戦、大変です・・・
池本は1人で歩いていた。
後輩達は素晴らしい試合をした。後は自分だが、どうにもスパーリングパートナーが見付からない。並みの相手なら何とかなるかもしれない。
しかし、相手は[フェリックス・ホプキンス]である。
スパーリングで練っていく必要がある。しかも、スパーリングもただするのではない。かなりの実力が必要である。
アメリカなら、或いはそれなりのパートナーがいるかもしれないが、ここは日本である。重量級の選手が少ない上、世界のレベルとなると難題である。
「八方塞がりだな……」
呟いた池本は、下を向きながら歩く。
「ヘイ、池本!」
突然声を掛けられ、池本は振り向く。
そこには、通訳を連れた[デイビッド・ラリオス]がいた。
オリンピックの金メダリスト·ウェルター級·Sウェルター級の2階級を制覇した元チャンピオンであり何より、ミドル級に転向後、池本との死闘を演じ、その果てに引退をした男である。
「……ラリオス……」
「困っているようだな、俺でどうだ?」
「……お前、引退したろ?」
「練習は続けてるよ……お前がホプキンスとやる時に力が必要だと思ってな!」
「何だよ、ホプキンスと何かあるのか?」
「まぁ、少しな……俺はお前に勝って欲しいんだ!」
「随分勝手だな……ホプキンスと何があったんだ?」
「……ホプキンスにな……何が俺のライバルだ、日本人に負けた弱虫がって言われたんだ……俺はあの試合に満足してる……しかし、あいつはお前を知らないくせに見下してる……俺に勝った男を馬鹿にしたんだ、許せるかよ!」
「俺は別に構わねぇよ、馬鹿にされても気にしねぇ!」
「お前は馬鹿か?…俺の誇りを傷付けた奴を許せるか!だが、俺では勝てない……お前に託したい……」
「申し出はありがたいけど……引退したロートル相手は、俺が気が引ける……」
「!?……ロートル?……この野郎、俺をロートル扱いしやがったな……話は後だ、すぐに相手しろ!ぶっ潰してやる!」
「熱くなるなよ……大人しくしてろよ…実際ロートルだろ?」
「この野郎……用意しないなら、この場で叩きのめしてやる!」
「分かったよ……ちょっと待ってろ!」
池本が電話をする。
「ああ、篠原トレーナーですか?今からジムに来れますか?俺も行きますから……はい、はい、分かりました、お願いします」
「俺のジムに行くから付いて来いよ……」
池本・ラリオス・通訳で歩く。
3人でジムに入る。
「池本君、どうしたの?急用らしいけど……」
「これからスパーリングをします、ちょっと立ち会って下さい!」
「別にいいけど……!?…ラリオスとやるの?」
「力になりたいらしいけど、ロートルでしょ?……身の程をわきまえろって言ったんですけどね!」
「またロートルって言ったな……俺のプライドに掛けてぶちのめす!」
「だそうです!」
「分かった……2人共用意して!」
ラリオスと池本は着替え、マウスピースとグローブを嵌める。
「池本君、ヘッドギア!」
「ロートル相手にいらないでしょ!」
「俺も必要ねぇ、あいつを殴り倒す!」
「……危ないと思ったら止めるからね!」
ラリオスと池本は右手を上げる。
ゴングが鳴った。
スパーリングが始まる…………
池本は頭を振って左ジャブから前に出る。ラリオスも左ジャブを突いて前に出る。お互いが前に出て、距離が近付く。
池本の左フックをラリオスがかわして右フックを打つが、それを池本がかわして左ボディを打つ。ラリオスはボディをガードして左フックを打つが池本は左フックをかわして右フックを打つ。ラリオスが池本の右フックに自分の右フックを合わせる。お互いにこのパンチをよけると同時に左フックを出す。
この左フックが相打ちになり、頭が弾ける。
ラリオスは左ジャブを打ち距離を取る。
池本は左ジャブを打ち前に出る。
ラリオスの左ジャブを池本が掻い潜り左ボディを放つが、ラリオスはこれをガードし、左のショートフックを打つ。これを池本がガードし、左アッパーを打つ。ラリオスは間一髪でかわし、左フックを放つ。池本はウィーピングでかわし、右フックを打つ。ラリオスはこれをスウェーでかわし、右ストレートを被せる。池本はこのストレートに左フックを合わせる。お互いが寸での所でお互いのパンチをかわす。
一旦2人共距離を置く。
2人が初めから全開である。
ラリオスが突っかける。
前に出て、池本の懐に潜り込む。池本は右ショートアッパーを出すが、ラリオスが右で上から池本のアッパーを抑え、左フックに繋げる。池本はこの左フックに自分の左フックを合わせる。お互いがパンチを避けた為、お互いの左腕が絡まる。体が近付き、クリンチの様な体制になる。
その刹那、池本の膝が少し沈み、腰が回転する。ラリオスの右脇腹に池本の左ブローが突き刺さる。ラリオスは一瞬動きが止まる。
「カーン」
ゴングが鳴った。
「さすが池本だな……やられた……」
「いや、流石だ……やっぱり強い!」
「どうせ、俺を怒らせて今の実力を見たんだろ?」
「あれ?バレてる?」
「拳を交わした仲だからな!」
「そうか……なら、失礼な事言って、悪かったな!」
「いや、大丈夫だ……それよりどうだ……お前と試合は無理だが、スパーリングパートナーなら行けそうか?」
「いつまでいる気だ?通訳は?」
「通訳は俺の親友だ、だから心配ない。ホテルも取ってある。今日からお前の試合が終わるまで、俺をパートナーにしてくれ!」
「いいのか?俺は手加減出来ないぞ!」
「手加減したら、試合前に俺が潰す!…どうだ、手伝わせてくれ!」
「……こっちからお願いする……手伝ってくれ、ラリオス!」
「ああ、任せろ!」
池本とラリオスは硬い握手をした。
「こ、これは大変だ……会長と石谷さんに……」
篠原トレーナーは会長と石谷トレーナーに電話し、事の顛末を話す。
5分もしないうちに会長とトレーナーがやって来る。
「いいのかラリオス!」
「そのつもりで来ました!」
「ありがとう、池本の相手が居なくて……」
「まぁ、スパーリングしか出来ないですよ……試合だったらやられてるな……」
「助かるよラリオス!」
「池は、必ず勝つからな!」
「ええ、楽しみにしてますよ!」
夜のジムが眩いばかりの輝きを放つ。
今、最強のライバルが同じ目標に向かい、1人は主役として、1人は協力者として、お互いの手を取った。
思わぬ協力者が現れました。
まして、過去のライバル!
後はやるだけ、そんな気がします。
いざ、最強の道へ・・・




