合宿……池本の特別メニュー
さあ、合宿が始まります。
しっかりと練習して、土台を作りましょう!
池本とトレーナーは覚悟が決まっているようです。
7月も後半になり、合宿になった。今回は海である。
参加は池本·徳井·喜多·手塚の4人に石谷トレーナーと篠原トレーナーである。会長はジムで他のジム生を見ている。
現地に着いた。
「池本、徹底的にやるぞ!」
「はい、お願いします!」
2人は着替えてすぐに出て行く。
徳井·喜多·手塚は篠原トレーナーとロードワークにでる。
3人は自転車の篠原トレーナーに声を掛けられ、ダッシュやジグザグダッシュをし、かなり走り込みを行い戻って来た。
しかし、いつもなら自分達より早く帰って来ている池本が居ない。3人は不思議に思ったが、トレーナーと出ている為、さほど気に止めなかった。
池本はトレーナーのスクーターの後を付いて行く。トレーナーの声でダッシュをし次の声でスピードを落とす。これの繰り返しをし、ある程度走ると砂浜に着く。
砂浜では何本もダッシュをする。柔らかい砂の上を走るキツさは誰もが知る所、しかし池本のダッシュはそれだけではない。砂浜をジグザグにダッシュする。一通り走り終わるとかなり時間が経っていた。
池本とトレーナーは、練習所に戻る。池本の息が尋常じゃないくらいに上がっている。それが走り込みの量とキツさをものがたっている。
池本は帰って来るとタイヤ叩きを行う。
いつもなら打ち下ろしのみだが、立て掛けられて固定されたタイヤがある。そこへハンマーで横から叩く。これを片手100回ずつ行う。
すでに池本からは激しい呼吸音しか聞こえない。タイヤ叩きが終わり、池本は着替えてからジムワークに移る。すでにジムワークに入っている3人は、池本の様子に絶句している。
池本はシャドーボクシングの後、ミット打ちを行う。このミット打ちが今まで見てきた物とは比べ物にならないくらいに厳しい。
トレーナーのミットを動かすスピードも速いが池本も付いて行く。しかし、トレーナーの怒号が飛ぶ。
「やる気あんのか?辞めてもいいんだぞ!」
「ガス欠か、情けねぇ!」
「打て打て打て!休むな!」
「気合い入れろ!」
12ラウンドに及ぶミット打ちが終わると、
「サンドバッグ打って出直して来い!」
と言われ、池本はサンドバッグ打ちに入る。
あのタフな池本が、すでにへばっているのはすぐに見て取れた。
夜、3人は池本とロードワークに出るが池本は話をするのもキツイ状態である。
しかし、ダッシュ·ジグザグダッシュは池本が先頭で走り続ける。3人は池本に付いて行くのが精一杯である。池本との差を痛感していた。
とはいえ、池本も人間であった。
帰って入浴をし、洗濯の途中で眠ってしまっていた。3人は洗濯を引き受け、池本を休む様に促した。
3人は池本の練習への姿勢を改めて尊敬し、池本の為に心を鬼にしているトレーナーの人間としての暖かさ、そして2人の信頼関係を感じた。
2日目、朝から池本の練習はハードである。
起きてすぐにロードワークに出る。3人も付いて行くが、明らかにいつもの合宿より走る距離が長く、ダッシュも多い。このロードワークだけで3人は軽く息が上がる。
食事の後の練習は、池本と3人は別メニューである。
池本はトレーナーが付きっきりで見ている。昨日同様に徹底的に走り込みを行う。合宿前でも走り込みの量が増えており、体力の増強をしているが、それと比べてもかなり増えている。それでも池本は走り抜く。
戻ってタイヤ叩きの後ジムワーク、こちらも昨日同様激しいものになっている。
ミット打ちはトレーナーの激しい激が飛び、ラウンドも12ラウンドしっかり行う。サンドバッグ打ちの後、池本は横になり3ラウンドトレーナーにボディを踏んで貰う。
かなり濃密な時間を過ごしているが、これは午前中のメニューであり午後は別のメニューがある。
午後になるとスパーリングを行う。勿論、相手は3人である。アップが終了するとすぐに始まる。
手塚、喜多、徳井の順で行う。
3人共やられる。前回よりはいいが、やはりまだまだ歯が立たない。
3人は珍しく感情を表に出し、サンドバッグを叩いている。池本はトレーナーとロードワークに出て行く。3人はそれぞれ篠原トレーナーにミットを持って貰う。かなり熱が入っている。
夜のロードワークの後、3人は池本の部屋を訪れた。
「何か用か?」
「池本さん、俺達の弱点を教えて下さい!」
「強くなりたいんです!」
「お願いします!」
「自分で分からないか?」
「「「はい!」」」
「…………色々な意味で大丈夫か?」
「「「!?」」」
「……サービスだぞ……手塚は我慢が足りない、思い切った攻めはいいが焦れるのが早すぎる。我慢比べの試合は必ず来る。我慢の向こうに勝機がある。練習で自分をもっと追い込め!」
「はい!」
「喜多は何でも出来るが、その為に相手の距離に付き合い過ぎる。自分の距離をもう少し分かった方がいい。自分の距離で試合を支配するんだ!」
「分かりました!」
「徳井はなかなかお笑いの才能がある。R-1グランプリに……」
「いやいやいや、それ違うでしょ!」
「そうか?しょうがないな……徳井は慎重過ぎる。相手を見過ぎてしまう。自分から手を出し、自分から動き、いつでも自分から試合を作る。あくまで先手だ!」
「なるほど、自分からですか……」
「あの、池本さんは?」
「池本さんが思う池本さんの弱点は?」
「池本さんが自分と戦うとしたら、どうしますか?」
「俺か?俺は1つの戦い方しか出来ない。アウトボクシングが出来れば徹底的に距離を取り、打ち合いは避けて行く。接近戦はお互いのパンチが当たる距離だからな、間違いが起こる可能性も高い。しかし、俺が俺とやるならクロスレンジでの勝負になる。それしか出来ないからな!」
「池本さん、結果の予想は?」
「愚問だな……昨日までの俺は今日の俺には勝てない。昨日より今日、今日より明日、俺は強くなる。そう思って辿り着いた今日だ。今日の俺が俺の歴史で1番強い。今の俺に勝てる過去の俺は居ない!」
「池本さん、どうやったら池本さんみたくなれますか?」
「俺みたいに?……はっはっはっは、なる必要ねぇよ。お前等はお前等のやり方で強くなれ。頑張り方は人それぞれだろ?俺がどう頑張ったってお前等みたいになれない様に、お前等は誰かにはなれないし、なる必要もない。羨ましいくらいの才能が有るだろ?」
「「「????」」」
「まあ、後は目の前の事をしっかりやって、1つずつ確実に強くなるだけだ。その為にも、いつでもボクサーである事を自覚して生活しろよ!」
「「「はい!」」」
「さあ、もう休め!明日も早いぞ!」
「「「はい!」」」
3人は各自の部屋に戻る。
合宿3日目、午前中は昨日と同じように過ぎていった。
午後になり、4人で走り込みとなった。砂浜を池本のメニューで行う。池本は黙って行うが、3人はふらふらしながら池本に付いて行く。
「篠原さん、3人には無理じゃないですか?」
「そう思いますか?多分、大丈夫ですよ!」
「まあ、3人は篠原さんに任せてますからね!」
「はい、任せて下さい!」
4人の走り込みは終了する。何とか3人はやりきった。
夜のロードワーク後、池本は洗濯をし、すぐに休む。
篠原トレーナーが自分の部屋に3人を呼ぶ。
「どうだった、池本君の練習?」
「キツイっす……」
「あれで半分ですよね……午前中とかもっとですよね……」
「あれをやり切る……ある意味化け物……」
「3人共何か勘違いしてるね。池本君は普通に人間だし、キツイのは分かるけど池本君は君達より激しい練習してるのにきっちりやってるよね。池本君を目指すなら、現実を見つめないとね!」
「「「…………………………」」」
「池本君は確かに才能が有るかもしれない……でもそれだけで勝てる世界じゃない……あの練習があるからこそ、今の池本君があるんじゃないかな?……彼の現役中に追い付くなら、弱音を言ってる暇はなさそうだね!」
「「「はい、頑張ります!」」」
篠原トレーナーはにっこり笑う。夜も更けていく。
池本の練習量がとんでもなくなってきました。
しかし、この練習の先には最強が・・・
今はただやるだけ・・・
頑張れ!




