合コン!
合コンです。
楽しい筈ですが、池本は苦手みたい・・・
何か心配事でも・・・
お店に入ると女性達が座っていた。
「ごめんね遅くなって、全員到着しました!」
手塚が言う。手塚は大学生、どうやら手塚が企画をしたらしい。
「とりあえす、飲み物を頼みましょう!」
徳井が言う。店員を呼び飲み物を頼む。サワーやビール等を頼んだが、池本はウーロン茶を頼んだ。飲み物が来て、
「とりあえずカンパーイ!」
藤沢の掛け声で乾杯をした。
「では、自己紹介!」
喜多が言う。
「まずは男性陣、俺は喜多。21歳大学生!」
「俺は徳井、同じく大学生!」
「手塚です。俺の事は知ってるよね?」
「藤沢です。フリーターってとこですかね……色々やってます。こちらは俺達の偉大な先輩、池本さん!…本日は俺が頭を下げて参加してもらったの!」
「偉大でもねえし下げて貰ってもねぇよ……池本です。とりあえず、おまけですかね……」
「出た、池本節!」
藤沢が言った。
「はいはい、女性陣どうぞ~」
「はい、豊本です、19歳女子大生です!」
「工藤です。同じで~す!」
「伊藤です。私達同じ大学です!」
「金田です。恋人募集中です!」
「渡辺です。今日はお願いします……」
(渡辺?…まさかね……)
池本はそちらを向いた。渡辺さんだった。
「あ、この前渡辺さんと話してた人!……彼女がいるかどうか渡辺さんに聞いたら知らないって言ってたけど、ここにいるって事はいないんですね?」
伊藤さんが言った。
「そう、池本さんは現在寂しい独り者!…っていうか俺らもだけどね~!今日の出会いで独り身脱出~!」
(藤沢テンション高け~……)
池本は思った。
「とりあえず、乾杯が終ったので席替え~!」
徳井が言い
「は~い!」
何故か池本以外全員が返事をしていた。男女交互に座る。池本の隣には、右に伊藤さん、左に金田さんだった。
とにかく色々聞かれる。池本は酒を飲まないのでのらりくらりとかわしているが、酒が入った後輩が心配であった。
池本はボクサーという事を表立って言わない。他の4人はプロではないから構わないが、池本はプロである。プロボクサーというだけで好機の目で見られる事がある。
以前、池本は酷い目にあっていた。プロボクサーというだけで勝手にイメージを持たれ、飲み会等の迎えに呼ばれた。迎えに行く度にその時のメンバーに紹介をされ、見世物のようにされていた。
減量が始まると会えない日々が続くが、その時に浮気をされていた。浮気がばれると池本に暴力を振るわれていたと嘘を付き、池本が悪者となり、池本は色々な人からパッシングを受けた。事情が分かり謝ってきたが、池本はその事がありプロボクサーである事を隠していた。
大分みんな酔っぱらってきた。2回目の席替え、池本の隣は左が伊藤さん、右が渡辺さんであった。
「渡辺さんは飲み過ぎない様に!」
「分かりました……すいません……」
渡辺さんはちびちびやっていた。
「ちょっとぉ、私も相手して!」
伊藤さんが入ってきた。
「2人は知り合いなんでしょ?」
「バイトが同じ所…渡辺さんが最近入ってきたの!」
「そうなんです!」
「そうなんだぁ……だったら、池本さんを狙っても大丈夫だよね?」
伊藤さんに言われ、池本はウーロン茶を吐き出しそうになったが我慢した。
「ここで重大発表!……俺らはボクシングジムの仲間で~す!こっち4人は練習生ですけど、池本さんはプロですよ~!」
手塚は言った。
『えーっ!』
女性陣が声を上げた。
「そうなの渡辺さん?」
伊藤さんは聞いていた。
「私も知りませんでした……」
(出たよ~あの馬鹿……うわー帰りて~……)
池本は思った。
そこからは思った通りであった。色々と聞かれる。ある程度で答えているがめんどくさくなっていた。
「しかも池本さん強いんだよ!日本ランカーだぜ……10戦全勝、日本タイトルも取れそうなんだよ!チャンピオン候補だぜ、凄くねぇ!何年かしたら世界チャンピオンかもね!」
藤沢が言った。
(盛り過ぎだ……辞めろ!)
池本は思ったが話が、池本の思いとは裏腹に池本の話題で盛り上がっていく。周りは好機の目である。不意に渡辺さんを見たが、渡辺さんはきょとんとしていた。
「ボクシングをやっている人は怖いイメージがありましたけど……池本さんは怖くないですね……」
渡辺さんは不思議そうな顔で言った。
あまりにも盛り上がり過ぎてうるさいくらいであったが時間が来た為、お開きとなった。
2次会に行く者と帰る者に分かれた。池本は帰る方におり、女性3人は帰る事になった。徳井と喜多は用事があるとの事で電話番号を交換して先に駅に行ってしまった。
藤沢と手塚は2次会へ、3人の女性を池本が送る事になった。伊藤さん・工藤さん・渡辺さんである。タクシーを拾い全員を乗せる。一人ずつ送っていった方が良さそうである。みんなかなり飲んでいる。
最初に工藤さんを送った。次に伊藤さんを送る予定であったが、伊藤さんが忘れ物をしたとの事で渡辺さんを送っていった。送った後、居酒屋に戻るように池本はタクシーに伝えた。伊藤さんに後ろに乗ってと言われた為、席を後ろにした。
居酒屋に戻り、伊藤さんが入っていった。池本は待っていた。居酒屋から伊藤さんが出てきて、
「付き合わせてごめんね!」
と言われた。
「大丈夫!」
池本は返し、タクシーに乗った。
少しタクシーが走った後、伊藤さんが気持ち悪いといった為、タクシーから降りた。お金を払い少し歩いた。
「ちょっと休みたい……」
と言われた。
「ここで休んでいこう?」
伊藤さんが指した場所はラブホテルだった。
「いいでしょ、池本さん?」
「パスしよう、それは無し!」
「なんで、私が嫌い?」
「嫌いとかではなくて……そういう事は順番があるでしょう?」
「いいじゃない、入ろうよ?」
「自分を大切にしなさい。ダメとは言わないけど、きちんとしないと後で後悔するよ。綺麗なんだから自分を大切にして、自分がいつか自分の人生を見直した時、胸を張れるようにね。多分、このまま入ったら後悔するよ!」
「そんな事言って……池本さん、私の事嫌いなんでしょ!」
「アホか!…全然知らないのに好きも嫌いもあるか!……そもそも俺も男だよ、誘われたらそりゃ行きたいさ!でもね、後悔されたら嫌なんだよ……顔を合わせる度に嫌な思いをされるのはごめんなんだ……」
「じゃあ、ちゃんと付き合ってからならいいの?」
「俺の事、全然知らないでしょ?そっちの方が先でしょ!」
「じゃあ、池本さんの事をちゃんと知って……池本さんと付き合って、そしたらいいの?」
「それなら問題ないんでないのかな?」
「だったら私は……彼女に立候補してもいいの?」
「立候補ならどうぞ。ただし……俺に価値があるかは知らないよ」
「価値は私が決めます!」
「はいはい……とりあえず送っていくよ!」
池本はホテルを通り越し、タクシーを拾って伊藤さんを送った。
タクシーの中では伊藤さんは終始静かであった。伊藤さんのマンションに着いたので、池本は下りた。タクシーにお金を渡し伊藤さんに、
「お疲れ様、あんまり変な事しないようにね!」
「池本さん……ホテルに行こうと思わなかったんですか?」
「思ったよ!行くのも有りかなってね!……でもさ……これからも会うかもしれないのに、そんないい加減な事できないでしょ?…自分を大切にしな、伊藤さんならそんな事しなくても綺麗だから大丈夫でしょ!」
「池本さん、質問いいですか?」
「何なりと!」
「どうして彼女がいないんですか?」
「それは……俺の知っている女性に聞かないと分からないかな……俺が知りたいよ……」
「もう一つ、連絡先を教えて貰ってもいいですか?」
「それなら別にいいよ。ラインはやってないから、電話かショートメールにしてね!」
「はい、分かりました!」
池本は伊藤さんと連絡先を交換した。
「じゃあ、おやすみ……」
「池本さん、この近くなんですか?」
「いいや、少し走って帰ろうと思ってね。少し食べたからね!」
「池本さん、試合見に行ってもいいですか?」
「どうぞ、手塚に聞けば教えてくれるよ……じゃあ!」
池本は右手を上げ、走って行った。
池本は真面目ですね・・・
見習わないと・・・
合コンで息抜きできてないような気が・・・
池本はあまり気にしないかも知れませんね。