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君の為に、俺の為に・・・  作者: 澤田慶次
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不穏な出来事!

防衛に向けて頑張れ池本!

みんなも応援してる。

さあ、5ラウンドだ!

5ラウンド…………

池本が前に出る。池本は変わらず、左ジャブから前に出て行く。

挑戦者の動きが重い。挑戦者が左ジャブを放つが、池本はそれを掻い潜る。

懐に入り、左ボディを打つ。挑戦者は返しのフックを気にするが、嘲笑うかのように左アッパーを叩き付ける池本。挑戦者はダウンする。

レフェリーが割って入り、カウントが始まる。カウント8で挑戦者は立つ。

再開の合図が出ると、池本は一気に間合いを詰める。

ここで起きてはいけない事が起こる。

池本が懐に入った時、挑戦者は右フックを出す。

池本は頭を下げ、難なくかわすが、挑戦者はその右の拳で池本の後頭部を叩いた。「ラビットパンチ」反則打である。

池本は一瞬、意識が振らついた。レフェリーが止める前に挑戦者は右フックを池本に叩き込む。

試合がストップする。挑戦者は減点1を受ける。池本はふらふらしている。リングドクターに確認チェックを受ける。少しの間、時間が止まる。

挑戦者はダメージが回復する。

池本のダメージは回復しない。

池本がドクターとのやり取りをしている時、挑戦者と目が合った。笑っていた。明らかに故意である。

池本は大丈夫とのジェスチャーをする。試合が再開になる。

挑戦者は距離を詰め、手を出してくる。池本も手を出すがいまいち定まらない。挑戦者はクロスレンジまで距離を詰めると池本の足を払い、縺れた振りをして池本と倒れた。その際に池本の左目に右肘を入れた為、池本の左瞼は腫れ上がった。

両者立ち上がった所でゴングが鳴った。


赤コーナーサイド、

「大丈夫か池!」

「大丈夫ですよ!」

「池本、訴えるぞ!」

「大丈夫ですよ、トレーナー!」

「「しかし!」」

「あいつは、もうボクシングはやらせない……」

池本の目が、深く暗く沈んでいった……


応援席……

「おい、反則だ~!追放しろ!」

「辞めさせろ!」

「ありえねぇぞ!」

「何だあいつは、今すぐリング降りろ!」

「ふざけんな~!」

「ズルするな~!」

「最低~!」

「死ね馬鹿~!」

「退場だ~!」

かなり荒れていた……


6ラウンド…………

池本は余り変わらず出て行く。

挑戦者は不敵な笑みを浮かべて、前に出て来た。

挑戦者から手を出す。左ジャブを打つ。池本はガードを上げ対処する。それでも挑戦者は前に出て来る。挑戦者が左ジャブから右ストレートを打ったその時、池本の動きが変わる。

挑戦者の右ストレートが伸びきる前に懐に入り、伸びきる時には池本の左ボディが挑戦者にめり込んでいた。

挑戦者は前のめりになるが、池本の返しの左アッパーが入り倒れる事を許さない。顔が上がった為に空いたボディを左右で連打する。

挑戦者はコーナーに追い込まれる。池本は更に左ボディを叩き込む。挑戦者は左フックを返すが池本はその左に自身の左フックを合わせる。挑戦者の顔が弾けるが弾けた顔を池本の右フックが捉える。

崩れそうに下を向いた挑戦者の顔を池本は丁寧に左アッパーで起こし、渾身の右ストレートを叩き込む。

糸が切れたマリオネットの様に崩れ落ちる挑戦者、レフェリーはカウントをせず、両手を交差させ試合を終了させた。

6ラウンド56秒TKO、池本の勝利である。


担架が運び込まれ、挑戦者が担架で運ばれる。文字通り病院送りである。担架で退場する挑戦者に容赦なくブーイングが浴びせられる。そしてリング上の池本にはスタンディングオベーションであった。

しかし池本は、賞状を受け取りベルトを巻かれると、すぐにリングを降りてしまい、インタビューは無しである。

会長·トレーナーと花道を歩き、客席に一礼すると控え室に戻ってしまった。


控え室にて会長とトレーナーと話しをしている。取材も無しにしている。

「池、良くやった!」

「ありがとうございます……」

「池本、あいつが悪いんだ……気にするな!」

「分かってるんですけど……」

「池、ああいう奴はああなる運命だ……お前は良くやった……胸を張れ!」

「はい……でもあんまり……気分は良くないですね……」

「いや、ボクシングの威厳を守ったんだ!胸を張れよ池本!」

「はい、ありがとうございます!」

池本はシャワーを浴び、会長、トレーナーと会場を出た。

9人が待っていた。会長とトレーナーは夜の街に消えて行く。

池本達は電車に乗り、帰っていった。


藤沢とは駅で別れた。9人でいつもの公園に寄る。

「池本さん、ほんとに凄かったです!」

「うん?……そうか……」

「池本さん、大丈夫ですか?」

「ああ、何かいつも心配かけてごめんね……」

「私達は大丈夫です!」

「池本さん、どうしたんですか?」

「いや、ちょっとな……」

「あんな奴、ああなって当然ですよ!」

「ああ……そうかもな……」

「池本さん、本当にどうしたんですか?」

「……あのな……世界チャンピオンは狭き門なんだって事を改めて思ってな……」

「どういう事ですか?」

「人によっては、どんな事をしても取りたいと思うって事だ。だからって、反則は俺は認めねぇ!」

「それはそうでしょ!」

「池本さんは、ボクシングを守ったんです!」

「大袈裟だよ!」

「「「そんな事ないです!」」」

公園で別れ、伊藤さん渡辺さんと帰った。

「「池本さん、おめでとうございます!」」

「ありがとう!」

「池本さん、本当に強かった!」

「でも、ちょっと怖かった……」

「ああ、ごめんね……あいつはボクシングをやらせちゃいけないと思ってね……」

「池本さんは正義感が強いから!」

「確かにあれは、相手が悪かったですしね!」

「いや、そうじゃないんだ……ボクシングだけじゃない……格闘技にはルールがある。何故だか分かるかい?……ルールが無ければ単なる暴力だ……意味がないんだよ、何でも有りになったら夢も希望も未来も見れないんだ……俺達はやってはいけない……やっている奴は止めなくてはいけない……俺達プロの責任だ……ただ、それが分からない奴がプロにいる……世界戦まで手にしている……寂しい限りだ……」

「……大丈夫ですよ池本さん!池本さんの仲間達は絶対そんな事しないですよ!なんたって池本さんが手本なんですから!」

「渡辺さんの言う通り!池本さんの教えを受けてるみんなは大丈夫!池本さん元気出して、池本さんが元気出して見本見せないと!」

「ああ、そうだね……ありがとう2人共!」

「「はい!」」

「そういえば池本さん、徳井さんいじるの好きですね!」

「あ~……いじり易いんだ、あいつは!」

「徳井さんも嬉しそうですよね!」

「そうか?」

「え?そうじゃないんですか?」

「ははは、徳井はいじる事で余計な事を考え過ぎないようにって思ってる。徳井は考え過ぎるんだ……いじって考える暇を与えない事も必要なのさ、特に試合前はね!」

「喜多さんと手塚さんは?」

「喜多はマイペース、自分を良く知っている。だけど、自分を過小評価する事がある。だから時には自分が考えているより少し上の課題を出す。例えばKO勝利を誓わせたりして、自分で何とかさせる。手塚は目標に向かって一直線だ。何も小細工は必要ない。目標を見せて頑張らせる、時々煽ってね。ただ、3人に言える事は上手くいかない時も作る事、まだまだこれからなのに、勘違いされても困るしな……あいつ等は叩けば叩く程強くなる……いつかジムの顔になるって思ってる……きっとトレーナーもね!」

「池本さんは3人の事、良く分かってますね!」

「本当にいい先輩だよね!」

「そんな事ねぇよ、付き合いが長いだけだよ……」

「いや、本当に良く考えてると思いますよ……色々と考えて、理解して、見本を見せて……」

「3人の為にいつでも先頭に立って、どんな事にも弱音を吐かない!」

「「本当にいい先輩!」」

「!?……何か、ありがとう……」

「ほんと、私達の事は理解してくれないのに!」

「理解する気、あるんですか?」

「そんな事ないよ、分かってるって!」

「えー、本当ですか?」

「じゃあ、今欲しい物は何だと思いますか?」

「!?」

「「ほら~……答えて!」」

「あっはっはっは!今日は試合で疲れた疲れた!あれ、声が聞こえねぇぞ?」

「「あ~、ズールーイー!」」

いつの間にか笑いで包まれていた。

少し後味の悪い防衛戦・・・

それでも勝たないといけない!

池本はそれでも前に進みます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 正義のヒーロー池本さんが屈するわけないのでよかったです!
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