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君の為に、俺の為に・・・  作者: 澤田慶次
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減量が始まる……

試合に向け、本格的に始動!

池本にとっても徳井にとっても大切です。

さあ、頑張りましょう!

4月の合宿も終わり、スパーリングも開始され、ジムの活気も溢れて来ていた。

5月も半ばを過ぎると、池本と徳井の減量が始まる。

徳井は新人王も取り試合も10戦目、大分慣れて来ている。だからといって減量が楽になる訳ではない。

それは池本も同じである。試合の度に、試合に匹敵する作業を行う。減量をクリアし試合に勝つ事で自信と経験値が上がり、確実にレベルアップしていく。

知らず知らずのうちに、徳井も逞しくなって来ている。


減量が始まっても練習メニューが変わる事はない。

食事量を減らし、水分の制限をしていく。基本はこれだけである。

ここの苦しい時期にどこまで妥協しないで練習を積めるか、これが試合でピンチになった時の支えになる。

そして、その減量を何回もこなす事により、折れない心を作っていく。少なからず池本は、この期間を大切にし、肉体と共に精神面も練り込んでいる。


減量が進んで行く。

始めこそ食事が取れない事へのイライラをぶつける場所として、練習は格好の的だが減量が進むに連れて疲れも溜まり、体も重くなっていく。スパーリングもどんどん動きに精彩を欠いていく。

例に漏れず徳井は、どんどん動きが重くなりスパーリングの動きも悪くなって来ている。

しかし、池本となると幾分か話は違ってくる。

確かに体もキツくなってくるのだろう、会話は減る。バイト先でも必要以上に話をしない。どこか張り詰めた空気を感じるが、それだけである。練習もいつも通り、黙ってやるべき事をやっていくだけである。

減量が佳境になると、流石に池本も動きが重くなってくる。スパーリングでも精彩を欠く事があり、パンチを貰うシーンも出て来る。スパーリングパートナーは東洋太平洋のランカーと日本ランカー達である。まして減量をしていないナチュラルウェートである為、体調は万全である。元気いっぱいの相手、1日3〜4人を相手にする訳であるので、相当に厳しい。

しかしそこは池本、要所要所を締め、確実にスパーリングをこなしていく。

どんなに辛くても自分で決めた道であり、誰かに頼まれた事ではない。だから妥協しない、言い訳もしない。全て自分で受け止めて前に進んでいく。だから池本は、どんなに減量が進み、練習が過酷になっても変わらないのである。


6月も10日を過ぎ、疲労もピークである。

ウェートは池本が1kgを切り徳井は残り400g、順調である。

徳井はここで、池本と同じ日での試合という事が功を奏している。

いつもなら動き・集中力ともに散漫になる所だか、格上の、しかも憧れでもあり目標でもある男が自分よりキツイ減量を黙って黙々とこなしている為、自然と集中力も高まり、仕上がりはまさに順調であった。


6月19日、2人共ウェートは落ち切った。

後は疲れを抜きながら練習をし、ウェートをキープしていくだけである。難しいとはいえ、慣れたものである。

スパーリングでも動きが戻ってきており、軽快にステップしている。減量がひと段落した為、余裕が出てきたのが大きい。しっかりと現在の体調を確認しながらスパーリングを行う為、どこを締めるか·どう試合をコントロールするかを試し、身のある練習になっておりトレーナーも満足そうである。とはいえ、トレーナーの満足そうな顔は、2人は確認出来ていない。


6月28日、池本と徳井は2人で計量に向かう。

徳井、対戦相手は1発でクリア、池本とチャレンジャーも1発でパスした。

計量の後、池本は世界タイトルの会見場に移動した。池本とチャレンジャーが座る。記者から質問が飛ぶ。チャレンジャーは通訳を介して答える。

「チャレンジャー、チャンピオンの池本選手の印象は?」

「まぁ、こんな感じか…という感じかな?……明日にはチャンピオンが変わるしね!」

「チャンピオン、どうですか?」

「特にはないです。どんな相手でも、やる事は変わらないのでね!」

「明日の試合の豊富を、チャレンジャーから!」

「明日は自分の日、日本の皆さんには悪いけど、楽しませるつもりはない!」

「同感だ、楽しませるつもりはない。手ぶらで自分の国に帰って貰う!」

お互いの向き合った写真を何枚か摂られ、会見は終了した。

喜多・手塚はこの緊張に慣れない。徳井は自分の試合の事でそれどころではないらしい。


計量が終わり、4人で食事を摂る。明日の試合に向け、池本と徳井はエネルギーの補充をしている。

4人での食事が終わり歩いている。いつもの公園の前に渡辺さん伊藤さん豊本さんが居る。3人は声を掛け、7人で公園に入っていく。

「どう、調子は?」

「俺は大丈夫!豊本さんに会って元気100倍!」

「元気100倍アン◯ンマンだな!」

「池本さん、相変わらずですね!」

「池本さんは、私達に会ってどうですか?」

「俺が元気100倍とか言ったら気持ち悪いだろ?」

「俺はどうなんですか?」

「お前は大丈夫だ、徳井!…何たって、そこからいじられるからな!」

「うへぇ!」

「池本さんも徳井もやってくれるよ、なあ、手塚!」

「ああ、大丈夫だね!俺達も楽しみだ!」

公園を出ると別れた。池本は渡辺さん伊藤さんと歩いている。

「池本さん、私達に会って何もないんですか?」

「うん?…元気になったよ、ありがとう!」

「「!?」」

「どうしたの?」

「いや、池本さんから素直に言われるなんて……」

「ちょっと照れくさいです!」

「照れるなら聞かなければいいのに……」

「「それとこれとは話が別です!」」

「そうなの?……なんか大変だね……」

「「池本さんのせいでしょ!」」

「!?……何かごめん……」

池本は2人を送って行き、アパートに帰る途中に本屋に寄った。ボクシング雑誌を買いアパートに帰った。


アパートで買って来たボクシング雑誌を読み出す。明日のタイトルマッチの特集が組まれているが、池本の読みたい記事はそこではない。タイトルマッチの記事を飛ばし、目的の記事を探す。

めくっていた手を止める。カラーページではあるが、アメリカでのタイトルマッチの結果である。

[フェリックス・ホプキンス豪快KO防衛!]

池本は記事を読む。

(やっぱり強いな……こいつはどうすると……)

池本は考えるのを辞めて、またページをめくって行く。白黒のページにPFP(パウンドフォーパウンド)特集が組まれていた。世界の名だたるチャンピオンの名前が載っている。池本の名前は無い。

しかし、1位の所には先程の男、

[フェリックス・ホプキンス]

の名前がある。

WBA・WBO世界ミドル級統一チャンピオン、これがホプキンスの肩書きである。この先、必ず避けては通れない時が来る。

そして、誰もが認めざるを得ない強さの証明には格好の相手である。何度もビデオで確認し、その強さを見てきた。攻撃も防御も高いレベルで装備されており、一つ一つのパンチが超一級品。試合運びも冷静で焦る事はないが、チャンスとなると強引にでも掴み取る。隙が見当たらない。

(こいつを倒す事……それが俺の答えになる……しかし、こいつはどうするかな…………)

気が付くと、またホプキンスの事を考えていた。明日は大切な試合がある。

(いかんいかん、まずは明日の試合だ!しっかり勝って次に繋げないとホプキンスもクソもない……集中集中!)

池本は一度深呼吸をして、明日に備えて休んだ。

池本の目標が分かりました。

誰もが認めざるを得ない強さ・・・

入門時に言っていた事です。

改めて池本の頑張りを見守って下さい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 池本さんなら最初から攻め立てて相手の心から折りにかけそうですね。 池本さんタフだし、ダウンすら想像できないほど、やってくれそうです!
[良い点] 池本さんなら必ずどんな相手にも勝つと信じてます! 絶対倒してほしいですね!
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