それぞれの戦い……徳井
徳井の話です。
池本のお気に入りのいじりキャラです。
どうやら池本にとってはそれだけではないようで・・・
「判定、1-0ドロー!」
徳井は客席に頭を下げ、リングを降りる。 会長、トレーナーと控え室に戻る。
「何やってんだ!勝てただろ!」
「お前は何やってきたんだ!」
会長、トレーナーから厳しい言葉が飛ぶ。徳井は下を向き俯く。
シャワーを浴び、着替えをして会長、トレーナーと会場の外に出た。応援に来ていた面々が待っている。喜多は用事があり来られなかった。女性陣は、金田さん工藤さんがいない。会長とトレーナーは夜の街に消えていった。珍しく不機嫌であった。
いつもの公園にみんなで寄る。珍しく徳井が静かである。
「どうしたの?徳井さん?」
「そうだよ徳井、負けたわけじゃないんだから、元気出せよ!」
「気持ち切り替えていこうよ!」
「次、しっかり勝てばいいじゃないですか?」
池本以外のメンバーが励ますが、徳井は俯いている。
「徳井さん、元気出してよ!」
「ありがとう豊本さん……でも、納得いかないんだ……絶対に勝ったと思ったのに……」
池本が口を開く。
「徳井、今日はラッキーだったと思えよ!10回戦なら負けてたぞ!」
「いや、絶対勝ってますって!」
「いや、負けてたよ……だからドローなんだ!」
「池本さん、酷くないですか?俺勝ってましたよ!」
「根拠は?」
「ないですけど、自信はあります!」
「そうか、そういうのを根拠の無い自信って言うんだ。勉強になったか?」
「はい……って、違うでしょ池本さん!」
「どう言う事ですか、池本さん?」
「そうだな、手塚も知っておいた方がいい……5ラウンド終了間際、左フックがカウンター気味にヒットした時、なんで詰めなかった?」
「いや、残り時間が少なかったから……」
「そうだよ、そこなんだ!お前は試合中に電光掲示板を見て時間を確認した。左フックが当たり、相手の腰が落ちかけた時に時間を気にして追撃しなかった……追撃のない相手は怖くない。ましてや、ポイントで負けているなら、尚更前に出て来る。何より厄介だったのは、一度終わった者にチャンスを与えた事!すでに一度負ける瞬間があったんだ、今更KOされたって変わらない……そんな開き直る時間を与えてしまった時点で負けてたんだ……確実に倒せる時に倒さないと逆転は起きる……レフェリーに勝利者の名乗りを受けるまでは、隙を見せてはいけないんだ……俺がお前に伝えきれていなかった。俺の試合から分かってくれると思っていた。俺の慢心だ。徳井、すまん……」
池本は深く頭を下げた。池本が頭を下げた事に衝撃を受け、一同が声を失っている。
少しの時間が過ぎた。
「辞めて下さいよ池本さん、俺が甘かったんですよ!」
「そうですよ、徳井が悪かったんです!」
「いや、口に出さなくても伝わると思った俺の責任だ……徳井、引き分けた事はラッキーだと思えよ!」
「はい……すいません……」
「後な、ついでに伝えとくぞ……相手がチャンピオンだった時、引き分けでは何も貰えないぞ……引き分けで得するのはチャンピオンだけだ!だから、どんなに小さな勝機でも、死に物狂いで掴み取りにいくんだ。上に行けば行く程、チャンスは少ないからな……」
「「はい!」」
2人は返事をした。女性陣は黙って池本を見つめる。
「そしていいか、勝利者には責任が付き纏う。何故だか分かるか?……ある者は夢を持ち、またある者は生きる為にボクシングをやっている。上に上がる為には、そいつらに勝たなくてはならない。ある意味、そいつらに引導を渡すんだ。渡された者が納得できるよう、責任を持って戦わなくてはならないんだ……だから、試合中に隙を見せない、徹底的にやらなくてはダメなんだ!ましてチャンピオンになるなら、そんな奴等を倒して頂上に登る事になる。だからこそ、絶対に妥協しない、絶対に隙を見せない、そして絶対に諦めちゃダメなんだ……分かるか?」
「はい、俺……甘かったです。頑張ります!」
「俺も、しっかりやっていきます!」
「おう、頼むぞ!」
「「はい!」」
「なんかいいな~……分かり合えてる感じがする。羨ましいな~!」
「本当に羨ましい!」
「でも、徳井さんは……私の事も理解してよね!」
「はい!それはもう、この上ないくらいに理解させて頂きます!」
「うん?徳井にそれは難しいぞ!なんて言っても3歩歩くと忘れるからな!」
「俺は鶏ですか?」
「何言ってんだよ、鶏に悪いだろ?ねぇ池本さん!」
「手塚、流石にそこまでは言えないよ……お前酷いな……」
「がぁ、こんな時だけ裏切りですか?」
「何言ってんだ?…俺は優しい先輩だよ?」
「池本さん、3歩歩くと忘れるも結構酷いですよ!」
「お、言うねぇ~……徳井も偉くなったもんだ……」
「せっかくいい話してたのに……池本さん、なんで茶化すんですか?そのまま終われば格好いいのに?」
「俺が格好良くても、こいつ等は強くならないよ!だから、格好良くなくていいの!今は自分も含めて強くなるのが先決だよ!」
「「そうですね、池本さん!」」
「そういえば、徳井のおホモ達の件は豊本さんに話したの?」
「徳井さん、何ですかそれ?」
「わぁ~、誤解だよ!池本さんが勝手に言ってるだけ、そうだろ手塚!」
「確かにそうだな!」
「おう?流石、おホモ達セカンドは言う事が違うね!涙ぐましい庇い合いだよ!」
池本は嘘泣きをする。
「「池本さん!」」
「はっはっは!明日から頑張れそうだな、徳井!」
「はい、ありがとうございます!」
「「「やっぱり羨ましい!」」」
みんなと別れ、徳井は豊本さんと帰った。
「やっぱり池本さんって凄いね!」
「うん、凄いよ……プロになって、改めて感じるよ!あんな風になりたくて、ボクシング始めたんだ!」
「うん、頑張らないとね!」
「そうだね、頑張るよ!」
「きっと、池本さんも徳井さんならやってくれると思ってるんじゃない?」
「どうかな?池本さんの心は青空みたいなんだ!……掴み処ろがなくて、それでいて暖かい……大切な事を教えてくれるけど、必要以上には教えない……そして、自分で決めた事は無条件で応援してくれる。それこそ、時には叱咤激励してでもね!嫌でも目指しちゃうよね、あんな男になりたいって!」
「そうだね……でも、おホモ達は辞めてね!」
「あれは池本さんが勝手に言ってるだけ、根拠も何もないよ~!」
2人で笑いながら帰った。
翌日のジムには、会長・トレーナーに頭を下げた徳井の姿があった。そして練習に取り組む。池本の様に無言でキツイ練習に取り組むのであった。
徳井はここから連勝していくが、それはもう少し後の話……
これからの徳井に期待です。
きっと池本も期待してます。
池本も後輩達の頑張りに刺激を受けてるんでしょうね・・・




