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君の為に、俺の為に・・・  作者: 澤田慶次
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報告と謝罪!

世界チャンピオンになった池本・・・

でも、何故か色々あります。

それでも池本は前を向きます。

池本を気にしている人達がいます。

天涯孤独でない事に気付くといいんですが・・・

翌日、池本は不在であった、誰にも何も言わずに朝から居なかった。伊藤さん渡辺さんは何度かメールをしたが返信もなく、もちろん電話も繋がらない。不安になった2人は、バイトの帰りに池本のアパートに寄った。


………………

池本は朝早くから電車に乗っていた……


目的の駅に着き、池本は改札口を抜け歩いて行く。

池本が歩いていると、すれ違う人達がみんな振り返る。世界チャンピオンであるから、当然といえば当然だが当の本人は意に介していない。いや、それよりも何か思い詰めている様な表情である。何かを考えている様だ。


途中のコンビニで飲み物を買う。ホットのブラックコーヒーである。コーヒーを飲みながら歩いて行く。少し歩いていた所で花屋に寄り花を買い、また歩き出す。

暫く歩き、とあるお寺の中に入っていく。お寺に入る際、時間を確認しようとして、ポケットに手を入れる。

(携帯忘れたみたいだな……あんまり必要ねぇしな……まぁ、大丈夫だろ)

お寺の中に入り、住職に挨拶をする。住職は笑顔である。

「世界チャンピオン、おめでとうございます。今日はご報告ですか?」

「はい、大分来れなかったですからね……謝罪も含めてですかね?」

「ははは、謝罪は必要ないでしょう。親はいつでも子供の味方です。忘れずに来てくれているんです。それだけで満足ですよ」

「ありがとうございます。でも……やっぱり謝罪ですかね……」

「そうですか……ゆっくり話でもして下さい。あ、その缶、空き缶ならば捨てておきますよ!」

「ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます」

池本は空き缶を住職に渡した。


池本はお墓の前に来ていた。先程買った花を墓前に置く。

「…………世界チャンピオンになったよ……」

そう言って池本は空を見上げる。晴天である。池本は再びお墓に視線を戻す。

「父さん、母さん、ごめんな……約束守れなかった……百合子と縁を切っちゃったよ……どうしようもねぇな、俺は……俺さ、強くなる為に頑張ったと思ってたんだけど……本当に強くなってるのかな?強いって何かな?父さん母さん、俺には分からないよ……別に父さん母さんを恨んだ事はないよ……色々理由があったのも分かる……本当は俺達を一緒に連れて行くか悩んだんでしょ?……だからあの夜、俺達の部屋を覗いたんだよね?……でもしなかった。辛い決断をしたんだよね……百合子は多分、大丈夫……きっと大丈夫だよ……ねぇ……一言でいいから[頑張った]って言ってくれないかな……」

池本は静かに涙を流した。

どんなに強く、誰からも慕われ、どんな事にも屈しないとは言え、24歳の若者である。そして、池本も人間である。両親からの言葉が欲しい時もあって当たり前である。

少しの間、池本は静かに泣いた。泣いた後、池本は立ち上がり空を見上げる。

「空は広いな……俺の悩みなんてちっぽけだ!この空みたいになれたらな……まだまだ俺は弱い……弱いなぁ……こんなんじゃダメだ!…しっかりしないと!」

そう言って池本は自分の頬を両手で叩いた。お墓に視線を戻す。

「俺、強くなるよ!強くなる!……また、来るよ……」

池本はお墓を後にした。


お寺を出る前、住職に声を掛けられる。

「お帰りですか?」

「はい、帰ります……」

「そうですか、何か吹っ切れた顔をしてらっしゃる」

「はい、自分がまだまだ弱い事が分かりました。まだまだ精進が足りないみたいです……」

「そうですか、私にはよく分かりませんが……1つの答えが見付かって良かったですね」

「はい、来た甲斐はありました。もっと頑張らないと……」

「池本さん、あなたはどんな人になりたいんですか?」

「そうですね…………」

池本は空を見上げる。

「今日のこの青空の様な人になりたいです。どんな事も包んでくれるような、どんな悩みも小さいと吹き飛ばしてしまうような……そんな、青空の様な人になりたいです!」

「そうですか……池本さんならいつかきっと、なれますよ。仏様も見守ってくれています」

「なれたらいいんですけど……」

「大丈夫ですよ!…池本さんがこちらにいらっしゃった最初の頃……何か大切な事を話す時、いつも目線を逸らし頭を掻いてらっしゃった。どこか自分自身を蔑むように……今は真っ直ぐ、自分の理想の人物像をおっしゃった。知らないうちに理想の人に近付いている証拠です」

「ありがとうございます。また来ますので、両親をよろしくお願いします」

そう言って池本は、お寺を後にし帰路についた。


………………

渡辺さん伊藤さんが池本のアパートに着くと、丁度池本が鍵を開けていた。

「「池本さん!」」

2人が叫ぶ。

「どうした?」

池本はいつもの調子で返答する。2人がメールを送ったのに返ってこない事、電話も出ない為、心配した事を話す。

「ごめんごめん、携帯を忘れちゃって。本当に申し訳ない!」

と池本に謝られた。

池本は2人をアパートに上げ、飲み物を出す。池本は相変わらず2Lのお茶をそのまま飲んでいる。2人は昨日の事があり、心配である事を告げた。

「心配かけて、本当に申し訳ない。妹が元気である事と縁を切った事を両親に伝えたんだ。約束守れなかった事もね……本当にごめんってね……許してくれるかな……」

池本は笑顔を2人に向けた。

「池本さん、いつも無理してる。いつか壊れちゃうよ!」

伊藤さんは言う。

「池本さん、なんでいつも1人で抱え込むんですか?」

渡辺さんが言う。

「無理もしてねぇし抱え込んでもいねぇよ。今更違う生き方も出来ねぇしな……詰まる所、俺は俺なのさ……いつか過去を振り返った時、あれが無理だったと気付く事があれば、それでいいんじゃないか?……今はやる事がある。それが全てさ……俺には目指す事がある……止まってなんていられないんだよ、少しくらいの出来事があったとしても……少しくらいへこんでもね……」

池本が少し寂く、そして覚悟を持った顔付きになった。2人は池本のそんな顔を見て、何も言い返せなくなってしまった。

「おっと、2人は俺を心配してくれてたんだよね!…大丈夫だよ、安心して!俺は強いんだぜ!なんたって世界チャンピオンだからよ!……心配無用さ!」

「池本さん、本当に大丈夫?」

「本当に無理してないですか?」

「はっはっは!してないしてない、いつも通りだよ!……でも、心配かけたね……本当にごめん、そしてありがとう……」

池本は2人に深々と頭を下げた。

そして、2人を送っていった。

ご両親に報告が終わりました。

また、新たな目標に向かって、池本は動き出します。池本も言っていた様に、そうそう変わりませんし、変われません・・・

でも、自分に厳しく他人に優しい、必要な時は叱咤激励をしてくれる。

人間として、素晴らしいんですよね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 池本さんは人間的にもかっこいですね。 世界チャンピオンになってもまだまだ防衛や統一マッチ?など、勝ち続けないといけないですね。 池本さんも、支える仲間がたくさんいるので少し安心です。
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