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君の為に、俺の為に・・・  作者: 澤田慶次
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遂に明かされる池本の過去!

池本の過去が明らかになります。

どんな幼少期を過ごしたのか!

池本はどういう風に作られたのか!

池本の優しさ、強さの秘密が少しだけ分かります。

翌日、池本は病院で診断を受け、ジムに寄りファイトマネーを受け取る。その足で伊藤さん渡辺さんとの待ち合わせ場所まで行く。

池本の顔は痣と腫れが残り、昨日の激闘を物語っている。2人と会った時、2人は池本の顔を見てびっくりしていた。池本は苦笑いをし、孤児院へと向かった。


「純也君、昨日は凄かったわね。おめでとう!」

孤児院に入り、年配の女性に声を掛けられる。孤児院の院長である。

池本は挨拶をし、2人を紹介して子供達の所へ行く。

20名弱の子供が居る。池本の周りに子供達は集まってくる。

池本は子供達と話をし、一緒に遊んだ。自然と伊藤さん渡辺さんも子供達と遊んでいる。

池本は院長に用事があるとの事で、大広間から出ていく。男の子が、

「どっちが池本のお兄ちゃんの彼女さん?」

と言う。2人が赤くなっていると違う子から、

「彼女は他にいるんじゃないの?」

続けて女の子が、

「池本のお兄ちゃんは私が結婚するの!」

との事。2人は対応に困ったが、何とか相手をしている。

「院長先生、これ……」

池本はファイトマネーから500万を渡す。池本は今回のファイトで約2000万のファイトマネーを手にしている。

「純也君、いつも悪いわね……」

院長は答える。

「俺も世話になりましたから、お礼です……ここが無ければ今の俺はいません!」

池本は答える。院長室のドアがノックされ、2人が入って来る。

「純也君が、いつもお世話になっております」

院長は改めて頭を下げる。

「私達が池本さんにお世話になっているんです!」

伊藤さんは答える。池本は子供達の所に行ってしまった。渡辺さんが院長に質問した。

「池本さんが何でボクシングをやっているか、何で毎朝走っているのかって聞いたら…時間を戻す為と言っていたんですけど、何かわかりますか?」

伊藤さんが、

「それ何?」

と聞いたので、飲み過ぎた日の事を伝えた。多分、池本は聞こえてないと思っている事も付け加えて。

「純也君とここに来たって事は、純也君の事情はある程度知っているわね!」

2人は頷く。

「どこまで知っているの?」

「小さい頃にご両親が亡くなって……」

「ここに引き取られた事くらいは……」

「純也君の両親の死因は知ってる?」

「「いいえ……」」

「うーん……覚悟が必要よ……辛い話になるわ!」

「「覚悟は出来てます!」」

「……なら約束して!話を聞いても、純也君を軽蔑しない、今までと変わらず接するって!」

「「約束します!」」

「……純也君はね…………」

院長は静かに語り出した。


……池本の過去……

家族4人でお出掛けをし、ウルトラマンコインを買って来てから1カ月後の朝…………


池本は4歳年下の妹と一緒の部屋で寝ていた。

目が覚め、時計を見ると6時半を少し過ぎた所であった。池本は部屋を出る。いつもは母親の包丁を使う音がするが、その朝は音がしない。玄関に行くと、いつもは朝早くに出かけてしまう父親の靴がある。

(????)

池本は両親の寝室に向かう。そっと寝室のドアを開ける。

(!?)

そこには、排泄物を撒き散らした両親が首に縄をかけ、ぶら下がっていた。池本純也、小学3年生の秋の出来事である。

池本は理解出来なかった。声も出なかった。腰を抜かしたように、その場にしゃがみ込んだ……


少し経つと妹が目を擦りながら起きてきた。腰を抜かした兄を見て、

「どうしたの?お兄ちゃん!」

妹が近寄ってくる。

(見せちゃいけない!)

池本は訳が分からなかったが、それだけは思った。

「来るな!」

大声を出すとすぐに立ち上がり、妹に近付き抱きしめた。

「どうしたの、お兄ちゃん?」

「何でもない、何でもないよ……」

「何でもないなら離してよ!」

「いや、何でもないけどダメだ……このまま外に行こう……」

池本は震えていた。頬を涙が何度も伝う。無理やりに妹と外に出た。2人共裸足である。

「離してよお兄ちゃん、わーーーん!」

妹は泣き出してしまった。それでも妹を離さない池本、その様子を隣のおばさんが窓越しに見かける。おばさんは外に出て来て、池本に声を掛ける。

「どうしたの?」

「う、う、あ……」

池本は何かを言おうとして、自分の家を指差す。隣のおばさんは不振に思い、池本の家に入る。

そして、夫婦の寝室に入る。

「わああああぁぁぁぁああああ」

物凄い悲鳴が聞こえ、近所の人達が出て来る。そこには、四つん這いで必死に池本の家から出てくる隣のおばさんの姿があった……


池本兄妹は、隣の家に一旦保護される。警察が来て、現場検証等をした。

結果、自殺と断定された。遺書も残っていた。知り合いの連帯保証人になり、その知り合いが行方不明になり、その借金が返せなくなっての自殺との事だった。

そして、遺書には池本に[強くなって、妹を守って]と書かれていた。


池本兄妹は、親戚中をたらい回しにされた。

遺産を充てにした親戚達だったが、借金があり、遺産がほとんど無いとわかると、2人を邪険にした。本人達がいる目の前で、親戚達は池本の両親の事を悪く言っている。

池本は下唇を噛み、ぐっと堪えていた。不安そうに妹が池本を覗き込む。そんな妹を池本は、強く抱きしめた。

結局2人は、孤児院に来る事になる。

孤児院に来たばかりの池本は、何も話をしなかった。大人を誰も信用しようとしていなかった。池本が話をするのは妹だけであった。だから、妹を馬鹿にされると誰彼構わず喧嘩をした。孤児院でも学校でも。

そして、学校では孤児院の子供達が馬鹿にされると喧嘩をした。理不尽に馬鹿にされる事が許せなかったのである。

何度も先生や院長に怒られ、注意を受けた。それでも池本は変わらなかった。何か秘めているのは分かるが、決してそれを話さなかった。


ある日の事である。 

池本は4年生になっていた。同級生と1学年上の合わせて3人の男子をボコボコにしてしまう。理由は勿論、妹を馬鹿にしていたからである。

男子が寄ってたかって妹を囲んで馬鹿にしていたのである。池本は徹底的にボコボコにした。

先生に呼ばれ、怒られた。孤児院に帰って来た時、院長に喧嘩の理由を聞かれる。

「どうせ俺が悪いって言われるんだ!誰もわかってなんてくれないんだ!」

そう言って池本は自分の部屋に閉じこもってしまった。

それから3日後の事である。

やられた3人が自分達の兄を連れてきた。3人共中学生である。1人の小学生相手に中学生が3人、結果は日を見るより明らかであった。

池本はボロボロになった。それでも自分が悪いと認めなかった。それでも向かっていった。

近所の人が見つけて仲裁したが、池本は辞めなかった。中学生も参っているようだった。どんなに止めても、池本は辞めなかった。仲裁に入った人が池本を羽交い締めにし、その間に中学生達は去っていった。


孤児院に帰って来ると、池本は物置に閉じこもってしまった。何をしても、何を話しても出てこない。院長は少し時間を置いた。

夜9時を過ぎただろうか、院長は物置の前に来た。池本はまだ出てこない。院長は話し掛けようとしてしゃがみ込んだ時、池本の声が聞こえた。

「ごめんなさい、ごめんなさい……父さん、母さん、ごめんなさい。俺が強くなって守るって言ったのに、俺が弱いばっかりにごめんなさい。2人を守れなくてごめんなさい。俺が気付いてれば、2人は……ごめんなさい。百合子もごめんなさい。俺のせいで父さんと母さんを失くして、寂し思いをさせてごめんなさい。百合子は俺が守ります。強くなって俺が守ります。だから、父さん母さん、俺の事はいいから、百合子を見守って下さい…………」

院長は涙が止まらなかった。

小学3年生の男の子は、両親の死を自分のせいだと背負い込んで、親戚中をたらい回しにされ、理不尽な事を受け、大人を信じず、孤児院に引き取られても、妹を守る事だけを考え、4年生になった今もなお、両親の死を背負い込んで生きているのだ。弱音を吐かず、弱味も見せずである。

院長は、池本が出て来るまで物置の前で待つ事にした。


朝になり池本が物置から出て来ると、院長が物置に寄りかかるように座っていた。院長は優しい笑顔を池本に向け、

「辛かったわね、純也君……でも大丈夫、私は味方よ!」

院長のその言葉に池本は涙を流した。両親が亡くなって初めて泣いた。池本は院長の胸の中で、ただただ泣いた。院長はそれを黙って受け止めていた……


池本は少しずつ落ち着いていった。妹と孤児院のみんなが馬鹿にされると、相変わらず喧嘩はしたが、笑顔も見られるようになった。


池本が6年生の時である。妹の里親が決まった。池本が学校に行っている間に引き取られて、行ってしまった。院長が用事があり、2週間空けている間の出来事であった。

池本は荒れた。たった1人の家族を連れて行かれたのだから当然である。

院長は池本に心から謝り、何度も話をした。池本は話を受け入れた。そして、自分が弱いから、守れないからと納得をした。


池本は中学を卒業すると働きながら定時制の高校に通った。

17歳の時、池本は妹の引取先に行った。ただただ心配だったからである。寂しい思いをしていないか、悲しい事はないか、誰かにいじめられていないか、それだけが心配で確認したかったのである。

訪ねた池本をみて、妹は嫌がった。もう来ないで欲しいと言われた。妹の綺麗な格好と自分の汚れた服を見て、池本は妹に謝った。

しかし池本は、元気な妹の姿を見られて安心していた。ただ少し寂しかったのは、「お兄ちゃん」とは呼んでくれない事だった……


それから少しして、池本はボクシングと出会いのめり込んでいく。いつか世界チャンピオンになり、妹に認めて貰い、もう一度「お兄ちゃん」と呼んで貰う。誰よりも強くなり、認めて貰う。池本は心に秘め、辛い練習にも耐えていくのであった。


……現在……

「ボクシングについては分からないけど、純也君は一言では言い表せられないくらいに大変だったのよ。それも1人で背負い込んで……今でも両親が亡くなった事を自分のせいだと思っているの。だから、妹の百合子ちゃんが今でも心配なの。本当に仲が良かったんだから……昔のように[お兄ちゃん]って言われたいの……何とかなるといいんだけど……」

2人は言葉を失った。池本の過去は、それ程衝撃的であった。

しかし、いやだからこそ、池本の近くに居たい。池本の力になりたい。そう思う2人であった。


不意に電話が鳴り、孤児院の職員が出る。職員は慌てて院長に繋ぐ。院長は2・3言、話をし池本を呼ぶ。池本が電話を変わる。

「はい、池本です……」

「……私、百合子!」

「……百合子か?元気だったか?」

「うん、大丈夫!お兄ちゃんは?」

「……お兄ちゃんって言ってくれるのか?ありがとうな!俺は元気たぞ!」

「チャンピオンおめでとう!」

「ありがとう……本当にありがとう!」

「ねぇ、今日会えないかな?色々話したい事があるの!」

「大丈夫だ!すぐに行くよ!どこに行けばいい?」

池本は妹の住所を聞いた。

「良かったわね、純也君!」

「はい、ありがとうございます!」

院長は笑顔であった。池本は本当に嬉しそうな笑顔であった。

しかし、一人では心細いので池本は2人に一緒に行く事をお願いした。

2人は快諾した。こんなにも子供のようにはしゃいで、それでいて慌てている池本を見た事が無かった。2人はとても新鮮で嬉しかった。だから、池本の幸せを見たくて了承したのである。

池本の壮絶な過去・・・

それを乗り越えて来たからこその強さ、優しさなのかも知れませんね・・・

優しく強い、時々人を小馬鹿にしたような落ちを付けた話をしたり、でも、締める時はしっかり締める・・・

ボクシングをやっていなかったとしても、魅力的な人間かも知れませんね・・・

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― 新着の感想 ―
[良い点] 壮絶な過去ですね。。 だからあの強さと優しさがあると思うと納得できました。 ますます池本さん応援したいですね、必ず最強になってほしいです!
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