表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の為に、俺の為に・・・  作者: 澤田慶次
12/97

池本の過去…………彼女編

池本の過去が少しだけ分かります。

以前の作品は、ここはカットしていましたのが、割と大切な話なんですよね。

池本の過去を少しだけ見て下さい。

試合後、外でみんなが待っている。

会長は藤沢達に池本の送りを頼んでトレーナーと消えていった。上機嫌である。

みんなで池本のホテルまで歩き出した。みんな興奮している。よく聞いてみると池本のホテルに藤沢と伊藤さん、渡辺さんが泊まる事が分かった。

結局同じホテルの4人で帰る事になり、6人は飲みに行く事になった。4人で他愛もない話をして歩いていると公園に差し掛かった。

「ジュン君、待ってたんだよ!……日本チャンピオンおめでとう!」

女性が声を掛けた。池本は声の方を向く。

「…………………………」

「お前…………………」

藤沢が言いかけたが池本に静止される。

「少し待ってて……」

池本は女性と公園に入って言った。藤沢に女性の事を聞いた。

藤沢の説明から、「福森ふくもり あすか」という名前、池本が以前、暴力を振るったと言われて別れた元カノである事が分かった。


……3年前……

バイト先の花屋での事……

「いらっしゃいませ!」

試合が終わった翌日、池本は閉店までバイトをしていた。19:00に店を閉め、19:30までに片付け等を終わらせ店の戸締りをする。もうそろそろ19:00になろうかという時、女性が現れた。

少し寂しそうな女性は、軽く頭を下げ、

「大丈夫ですか?」

「どうぞ、大丈夫ですよ!」

「ありがとうございます……」

どことなく元気がなく寂しそうな女性、池本は閉店間近である事を伝えられずにいた。

「池本君……」

店長に言われ、池本はすぐに店長の方に行き、

「俺が戸締りをしておきます。今日は先に上がって下さい……」

「……わかった。後はよろしくね……」

店長は察したように帰って行った。


女性は色々な花を見ているが、表情が冴えない。

「ねぇ、店員さん……こんな時間に迷惑?」

「お客様は迷惑じゃないですよ!」

「でも、私……あんまり花の事知らないの!」

「ははは、俺だって知らないですよ……花屋で働いてるのに、まずいですけどね!」

「そうなんだ…………でも、寂しい時や辛い時は花を見たくなるんだよね……」

女性の目から涙が溢れた。

「ごめんなさい…………今日、彼氏に振られたの……ううん、私は彼氏だと思ってたんだけど…向こうは遊びだったの……私、馬鹿みたい……」

「……俺はよくわからないですけど……こちらをどうぞ!」

池本はスズランを3本、包んで渡した。スズランをあしらったしおりと一緒に。

「ありがとうございます、おいくらですか?」

「ははは、俺からのプレゼントです……元気出して下さい。いい事もありますよ……お客様……」

「福森、福森あすかです。店員さんは?」

「池本純也です……」

「純也さん、ありがとうございます……」

「はい、元気出して下さいね……福森さん……」

その日を境に福森さんは頻繁に花屋に顔を出すようになった。時間を見ては池本に話し掛ける。そんな日が続いた。


1週間後、福森さんは花屋のアルバイトの面接に来た。そして池本と働くようになる。

「ジュン君、スズランありがとう!花言葉知ってたの?」

「花言葉?知ってる訳ないでしょ?」

本当は池本は知っている。しかし、わざわざ恩着せがましい事をしたくないのである。

「そうなんだ……花言葉は、[再び幸せが訪れる]なんだって!……なんか嬉しいよね!」

「そう……花言葉通りになればいいね!」

2人の仲は急速に縮んでいった。


ジムワークが始まると池本は15時に上がる。

福森さんは店長から聞き、池本がプロボクサーである事を知る。そして池本の試合を見たり、走っている姿を見て、想いを寄せていく。

2人が付き合うのに、それ程時間は掛からなかった。

2人で買い物をしている時、福森さんの携帯がなる。福森さんの父親である。福森さんが彼氏と買い物をしていると話すと代わるように言われたらしい。池本は挨拶をし、話をした。

「はじめまして、池本っていいます!」

「挨拶はいいから、君は何をしてるんだ?」

「はい、ボクシングをやっています」

「ボクシング?就職もしてない奴は、認めん!」

「いや、でも……」

「大体、どこの出身だ!親は?」

「あの……孤児院出身です……親は両方亡くなりました……」

「なんだ、孤児院か!余計に認めん!」

電話は切れた。福森さんからは仕切りに父親に謝るように話があった。池本は時間を作って電話をする事を約束する。


状況が変わってくる。

福森さんの父親との電話があって2週間程の事、池本が福森さんをデートに誘うが、用事があるとの事で断られる。これを境に事ある事に池本の誘いは断られた。更には、福森さんが友達との飲み会の時になると、迎えとしていつも呼ばれた。

「私の彼、プロボクサーなの!そして私にぞっこん!ねー、ジュン君!」

そう言って友達の前で抱きつき、アピールをする。

みんなの好機の目に池本は晒される。池本は福森さんの悲しみを見ている為、多少の事は我慢していた。


ある日、池本はスパーリングの為に他所よそのジムに来ていた。試合が近くなり、本格的に試合に備えて練習が厳しくなった為である。

もう少しすると減量も待っている。藤沢が池本と同行している。

移動のバスの中、窓から外を見ると、福森さんが見た事ない男と腕を組んで歩いている。藤沢は池本を見た。池本は無言で2人を見ていた。


スパーリングを終え、2人で帰路に着く。池本は黙って歩いていく。藤沢は後を付いて行く。

不意に池本は曲がり、ラブホテルが立ち並ぶ通りを通る。あるホテルの前で池本は立ち止まる。中から男女が腕を組んで出てきた。

「やっぱりか……」

池本が呟いた。

「ジュ、ジュン君……」

「これ、間違いだと思ったんだけどな…………」

池本は携帯の画面を印籠のように見せた。そこには、2人がホテルに入って行く姿が写っていた。日付けは今日である。

「で、そっちの男は俺の事知ってるの?」

「知ってるとも!孤児院出身の貧乏人でしょ?」

男が答えた。

「あすかちゃん、こんな奴やめなよ!こんな姑息な奴!」

「……ほんと姑息!…孤児院出身のあんたに付き合ってあげたのに、何勘違いしてストーカーしてんの?」

「お前等、調子こんでんじゃ……」

藤沢は飛び掛かりそうな勢いだったが池本が静止する。

「よく分かったよ……よ~く分かった…………」

「なんだ、胸倉も掴めねぇのか?だらしねぇな?」

「ほんと、腰抜け!」

2人は言いたい放題である。

「池本さん、あいつ等……」

「いいんだ藤沢…行くぞ!」

そう言って、藤沢とその場を去る池本の右拳は固く握られていた。


翌日、池本の携帯が何度も鳴る。福森さんと共通の知人からである。

「池本君、あすかに暴力を振るってたんだって?…それで相談してたのを勘違いして、相談相手にまで暴力を振るおうとしたんだって?…最低!」

「ボクサーが暴力って、訴えられなかっただけでもありがたいと思ってよね!」

「暴力とか最悪!……いい気になってんじゃないわよ!」

「ボクサーが暴力はダメでしょう!それはまずいよ!」

「頭おかしいんじゃないの?」

男女問わず否定された。藤沢はトレーナー、花屋の店長に真実を話しに行く。

「池本はやらない……言い訳はいらない……」

「池本君?見てればやらない事は一目瞭然!…分からない人は、人として悲しいね……」

分かって欲しい人には分かってもらえていた。

その日を境に福森さんは花屋を辞め、姿が見えなくなった。

しかし池本の周りは勝手に騒いでおり、池本にはかなりの迷惑であった。

嘘というのは、意外に早くばれる物である。

池本を挑発した男が、彼女を寝取った相手の胸倉も掴めない腰抜けと池本の事を言い降らしたのである。

調子に乗って武勇伝のように話す男と時間が経って冷静になった事が重なり、池本がそんな事をしないとみんなが考えを改めた。

考えを改めたが、時既に遅し。

池本を非難した者は池本に謝罪したが、池本は許す代わりに二度と連絡をしてこない事を要求し、池本は携帯も変更した。また、そんな事が明るみに出た為、福森あすかは実家である神戸に帰ったという噂を耳にした。


……そして今……

「俺、あいつ大嫌いなんですよ……池本さんの事都合よく使って……」

藤沢は言っていた。

「気になるから行ってみようか……」

「そうですね……」

「いやいや、それはまずいって!」

藤沢が止めるのも聞かずに、伊藤さんの言葉で2人で公園に入って行った。

公園では、池本と福森さんが向き合う形で立っている。

「ジュン君、私ね……あれから反省したの。ジュン君はいつも私の事を考えて、あの時幸せだった……もう一度やり直そう!」

「……俺は幸せではなかったな……」

「そんな事ない、楽しかったでしょ!」

「君はね……俺は大変だったよ……でもね、一つよかった事がある……自分を再認識出来たからね……」

「ジュン君、スズランくれたよね!…私、しおりまだ大切にしてるの!少しすれ違いがあっただけだよね!」

「??……あれが少しなら、世の中の大概の物は大した事ないね……」

「私、ジュン君の大切さが分かったの!」

「俺は……もうごめんだな……ボクサーで本当に良かったと思ってる……あの時、殴らなかったのは……自分がボクサーだという自覚があったからね……」

「やり直そうよ、私が悪かったわ!」

「……お断り致します……やり直した所で、同じ結果になるだけだ……あの時言えなかったけど、今なら言える……俺は君のアクセサリーじゃない。誰かに見せて、優越感を味わう道具じゃないんだ……永遠にさよならだ……」

「そんな……私の事、好きって言ったじゃない?」

「何か勘違いしてませんか?……俺が好きだった人は……傷付きやすくて、悲しい時や寂しい時に花を見ながら泣く人で……スズランみたいな何でもない花の花言葉で喜ぶような、そんな小さな幸せを大切にする人です……決してあなたのような、人をおとしめて傷を付けるような人ではない……」

池本は公園の出口に歩き出した。

2・3歩で立ち止まり、振り返る。

「一つだけ謝るよ……スズランの花言葉は知ってた!…もう君には、縁のない花言葉だね……」

再び出口に向かって歩く。

「待って、待ってよ……ジュンく~ん!」

福森さんの大きな声が響くが、池本は止まらず、振り返らず、まるで聴こえていない様だった。


公園から出て来た池本、藤沢に声を掛ける。

「あれ、2人は?」

「飲み物を買いに行ってます……」

藤沢は答える。2人が戻ってくる。

「ジュースは?」

池本は聞いた。

「忘れちゃった!」

伊藤さんは舌を出した。

「ジュースを買いに行ってジュースを忘れるって……」

「何やってんですかね、私達!」

渡辺さんも舌を出した。

「…………それで……2人の納得いく答えを俺は出したのかな?」

「「え!」」

2人はびっくりしていた。

「そんな所でしょう……多分だけどね……」

「はい、納得です……」

「ごめんなさい……」

2人は言った。

「池本さんには敵わないですね!」

藤沢が言ったが

「はぁ、お前は止めろよ……」

と池本は頭を掻きながら溜息混じりに言った。

池本らしいですかね。

しかし、2人は行動派ですね。

池本が振り回されそうですね。

池本は基本、ボクシングが第一なので、振り回すのは難しいですけどね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ