【名シーン】イリアス王子ルートに出てくるレナード王子詰め合わせ
式の当日に、さっそうと現れるイリアス王子。
謎パワーにより、彼自身にも『金の目』が現れる。
実は彼が王の庶子だったことを告白し、主人公と結ばれるべきは自分だと主張。
そこでイリアス王子はまた力を使い、王太后を操る。王太后の鶴の一声で、結婚式は取りやめとなり、イリアス王子の身元を調査することになった。
やがて、シスル王子の暗殺はレナード王子の密命によるものだという証拠の手紙が出てくる。もちろんこれは偽造で、レナード王子に罪を着せるためのもの。
この濡れ衣によって、レナードとルナは処刑。
イリアス王子が国王となり、主人公と結ばれるのだった。
「……救いがないなあ……」
私が悲しい気持ちで言うと、ミツネさんもフォローできないと思ったのか、なんとも言えない気まずそうな顏になった。
「……あ、でも、処刑される寸前のレナード王子とイリアス王子のやり取りはよかったですよ」
なんでもミツネさんの説明によると、牢に入れられているレナード王子に、イリアス王子が面会に来るのだそうだ。
――これがお前の末路だ。愚かな自分を悔いて死んでいけ。
そう追い打ちをかけるイリアスに、レナード王子はいきなり、何の脈絡もなく「いい名前だな」と言う。
――イリアス。俺が昔好きだった、英雄叙事詩と同じ名前だ。イリアス・デラス……ああ、覚えているぞ。俺にイリアスを読み聞かせてくれたのは、デラスという名前の、きれいな乳母だった……
イリアスの母は、レナード王子の乳母として勤めていた女官だった。
兄は、乳母と、その連れ子の乳兄弟のことを覚えていたのだ。
イリアスは深く動揺させられる。
――お前はあのときのチビか。名前が違うから、分からなかったぞ……なあ、ひとつだけ教えてくれ。動機は、復讐か? お前が悲劇の偽名を使って俺に近づいてきたのは、俺が憎かったからか?
イリアス王子は、違う、と答える。
――始めはただ、お前が憎かった。でも、これは、リアのためだ。彼女は聖クレアのようになりたいと心から願っていた。彼女が望むのなら、この国を丸ごと手に入れてやりたいと思った。
その答えに満足して、レナード王子は笑って受け入れるのだ。
――いいだろう、俺は、お前の罪を許そう。お前が犯したあらゆる悪事は、兄であるこの俺がすべて持っていく。
そして彼は、イリアス王子のルートであるにも関わらず、大きな決め顔ツーショットスチルを与えられて、言うのだ。
――ただし、約束しろ。絶対にあいつを幸せにすると。
ミツネさんの話で、私はほろりとしてしまった。
「……めちゃくちゃいい話じゃないですか……ヤバ。そこまでがんばってやればよかった。スチル見たかったなー」
「えぇ……でも、レナード王子って急に知能が上がり下がりしすぎっていうか……小五男子みたいだったかと思えばいきなり名君みたいなこと言い出すから整合性が取れてないっていうか……物語のご都合なのは分かりますけど、デラスさんのことも、覚えていたんなら『名前が同じ』とかなんとか、ひと言ぐらい声をかけてあげていれば処刑されなくて済んだのに……」
私はハッとした。そして、ミツネさんも自分の発言にハッとしていた。
「……なんだ、簡単じゃないですか」
「そうでしたね」
私はふかぶかと頭を下げた。この世界では久しぶりにやる、日本人式のお辞儀。
「ありがとうございました、ミツネさん。これで全処刑ルート回避できそうです」
「あ、いえ、こちらこそ。私は聖女宮から動けないですし、余裕があったらシスル王子が殺されたりしないように手を打ってもらえると……」
「もちろんですよ。レニャード様だって、シスル様のことは大好きですしね」
ミツネさんは、私を見て、私の椅子の背もたれで猫じゃらしと格闘中のレニャード様を見た。
レニャード様はカフェテリアの女生徒たちから『きゃあ、レニャード王子よ!』『すばしっこいー!』『かわいー!』と熱い声援を受けていて、いつもより動きが俊敏になっていた。たぶん、観客の視線を意識していると思う。
「……それが不思議なんですよね。レナード王子って、もっと傲慢でナルシストで……シスル王子に対しても冷淡で好戦的じゃありませんでした?」
あ、いまさらそこ突っ込んじゃいますか。
そうですね、ゲームの原作レナード王子しか知らない人にはそう見えるかもしれませんね。
「ご成長なさったのですよ。レニャード様には、お馬鹿で傲慢だったレナード王子の面影なんてありません」
わしが育てた。どや!
と密かに思いつつ、私は原作レナード王子のことを思い浮かべた。
「でも、原作レナード王子も、決して人が憎くて横暴してたわけじゃないんですよね。ただ、考えが浅かっただけで……」
主人公がちゃんと教育すれば、レナード王子は誰よりもいい王子に化ける、というのが彼のセールスポイントだった。
猫王子のレニャード様は、ちょっとかわいい方向に行ってしまったけれど、そこそこいい感じのイーブイ進化をしたんじゃないかなと、私は思うよ。
「というわけで、レニャード様が王様になったら、きっとみんなが幸せになれる国になると思います。レニャード様、レニャード様を、どうぞよろしくお願いいたします」
「……ルナさんって、前世でうぐいす嬢とかやってました?」
「ううん。前世はミケだった」
「え……猫……?」
「そうそう」
「前世、人間じゃなかったんですか……?」
「そうなんですよね」
「ええええ!?」
ミツネさんと適当にくだらない話をして、その日はお別れしました。
***
というわけでやってきました、イリアス王子の出没ポイント。
彼は暇そうにそこらへんの猫をじゃらしていたけれど、レニャード様と私に気づくと、ぱっと笑顔になった。
「こんにちは、会いに来てくれたの?」
「レニャード様がどうしても会いたいって言うものですから」
レニャード様はイリアス王子のズボンにくねくねと巻き付いた。
ごろにゃーん。うにゃーん。ごろごろにゃーん。
わあ、すごい熱烈歓迎。レニャード様、私のときよりも懐いてません?
「あははは、君がほしいのは、これかな?」
じゃじゃーん、と、とりいだしましたるは、小魚の入った小袋。
レニャード様は熱狂。ぴょんぴょん飛んで、ほしいことを全身でアピール。
イリアスさんが小魚を一本取り出して、レニャード様に噛ませてあげる。するとレニャード様は目にもとまらぬ速さで全部食べつくした。
「もう一本! もう一本!」
「レニャード様、一日二本までですからね」
「分かってる! くれ! くれ!」
すごい食いつき。まるで薬物の中毒患者ですね。目先の小魚ほしさに王位くらい軽くプレゼントしてしまいそうな勢い。
レニャード様は無我夢中でむさぼり食べた。
イリアスさんはにこにこ顔で見守っている。
「そういえば、イリアスさんって、変わったお名前ですよね。ご出身はどちらなんですか?」
「シンクレアですよ。アイオニア連合国のシンクレア領と言った方が正確ですが」
「なるほどー、じゃあ英雄叙事詩イリアス発祥の地ですね! 名前もそちらに由来してるんですか?」
「そうだと思います」
イリアスさんからそのセリフを引き出して、私はとりあえず第一関門クリアかなと思っていた。
だって、今日来たのは、フラグを折るためですからね。




