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【実況】王子様が不具合(バグ)でした【猫化バグ】  作者: くまだ乙夜
第三章

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【ネタバレ】注意!イリアス王子ルート最後までのネタバレ含みます


「レニャード様がお喋りするのには、ふかーいわけがありまして……簡単に言うと、王家に代々伝わる呪いみたいなものなんです」


 私はレニャード様に聞こえないように、そっとリアさんのそばに寄って、耳元にささやいた。


「初めはちょっとびっくりするかもしれないですけど、慣れるとかわいい猫ちゃんなので、仲良くしてあげてください」

「はあ……」

「レニャード様、すごくかわいいので」

「そ、そうなんですか」

「ほんとにほんとにかわいいので。猫なので」

「……猫お好きなんですか?」

「もちろんです。猫なので!」


 あ、だめかも。レニャード様が好きすぎるあまり語彙がなくなってきた。なんていえばいいんだろう? だって、猫だよ? 猫がかわいいことにこれ以上の説明っている? 猫といえばかわいい、かわいいといえば猫。これ宇宙の自然法則。


「ここで会ったのも何かの縁だ。お前には、この俺の直筆サイン色紙をくれてやろう!」


 レニャード様が原作通りのことを宣言。


 私はいそいそと、色紙を取り出した。レニャード様のトレードカラーであるオレンジのインクと、主人公のカラーであるピンクのインクをいい感じにマーブル模様にした、きれいな肉球スタンプが押してあって、おまけにレニャード様の字で名前が入っている。


「どうぞ、リアさん」

「えっ……」

「もらってあげてください。レニャード様、気に入った人にはサインを配ってしまう習性があるんです」

「はあ……じゃあ、いただきます」


 リアさんはお義理で色紙を眺めているけれど、『なにこれ……』という感想は、隠せていなかった。


「かわいいでしょ? レニャード様、しっぽで文字が書けるんですよ」

「わあ……すごいですね」


 リアさんのリアクションうっすーい。


 おかしいなあ。今までにもらった人たちはみんな喜んでいたのに。だってレニャード様のサイン色紙だよ? 誰だって嬉しいよね?


 まあいっか。出会いイベントはこれで終了だよ。


「リアさんって、魔法の特待生組ですよね?」

「どうして知ってるんですか?」

「私、この近所に住んでて、顔見知りの貴族も多いんですよ。だいたいのことはうわさで知ってます」


 私はせいぜい愛想よく見えるように、にっこりした。私は敵じゃないですからねー、処刑しないでくださいねー。


「寮暮らしなんて大変ですよね。もしも何か困ったことがあったら、遠慮なく相談してくださいね」

「ありがとうございます」


 当たり障りのない挨拶をして、リアさんとはお別れしました。


***


 それからの一週間はあっという間でした。


 クラスメイトとの顔合わせ、授業の準備、他に攻略対象がいないかのチェック。


 私の知識だけでは心もとないので、クレア・マリアさん――に転生した、ミツネさんにも聞いてみることにした。


「レニャード王子が危ないのは三王子ですけど、ルナさんは全員のルートで危ないですよ」


 聖女宮のカフェテリアで、ミツネさんが言った。


 レニャード様も一緒にお茶をしているけれど、彼は『あいつの話はよく分からん』と言って、一人遊びをしている。『攻略ルート』とか言われても、ゲームをしたことがないレニャード様にはピンと来ないもんね。


 椅子の背もたれに引っかけた猫じゃらしをつついて遊んでいるレニャード様を横目に、私はひそひそと声をひそめて、ミツネさんに話しかける。


「ルナさん……っていうか、私って、どういう場面で殺されるんですか? きっかけが分かれば後は避けられるんですが……」

「そうですね……」


 ミツネさんはしばらく考えていたけれど、やがて言った。


「だいたいは、主人公をいじめたのがきっかけですね」


 私はほっとした。いじめなきゃ大丈夫なら、ハードルはそんなに高くない。


「レナード王子がどのルートでも出張って、主人公にちょっかいをかけるんですよ」

「へえ、レナード王子ってそんなに出番多いんですか」


 初期組の三王子ルートで出番多いのは知ってたけど、その後も多かったなんてね。


「『運営のえこひいき』とも言われてましたね。嫌いな人は本当に嫌いみたいですよ。見たくないのにいつも出てくるから、ごり押しされてるように感じるみたいで」

「えぇ……レナード王子が一番かわいいのに」


 私が思わずつぶやくと、ミツネさんは信じられないという目つきで私を見た。


「いいじゃないですか、俺様。見た目も声もかっこいいし」

「その『みんな好きでしょ?』って押しつけがましいところが……」

「私は好きなので、気にしたことなかったですね……みんな好きなんだと思ってました。私と同じで」

「シスル殿下のほうがカッコいいと思いますけど……」

「あ、シスル様ルートはね、一応全部やりましたよ」

「カッコよかったですよね?」

「うんまあ、一応、全部やりました……素敵な王子様でしたよね。私の推しはレナード王子なので、死んでしまって悲しかったですが」


 前から思ってたけど、私とミツネさんって、全然趣味が合わないよね。これはこれでいいのかな? ミツネさんが過激な同担拒否だったら喧嘩になっちゃって困るもんね。


「話戻しますね。私のルートは大丈夫そうなんで、イリアス王子のルートについて教えてもらってもいいですか? 私、イリアス王子のルートは途中までしかしてないんですよ」


 私はミツネさんから、イリアス王子ルートの結末までを教えてもらった。


 ――やはり、為政者が愚かなのは悪だ。


 そう結論づけたイリアス王子は、愛する主人公のため、この腐った国を壊して、誰もが幸せになれる国を作ろうと決意する。


 彼はその時点で何の力もない、しいていえば少しだけ王宮や聖女宮に友達を多く作っただけの従者に過ぎなかった。


 でも、彼にはとっておきの力があったのだ。


「イリアス王子は、人を『金の目』にする力を持っているんです。あくまでも一時的に、ですが……」


 私はびっくりしてしまった。


「……『金の目』って王家の遺伝ではなかったんですか? シスル王子のルートでは、そんな風に……」

「分かりません。でも、彼はその力を使って、いろいろな人の目を金色にしては、おそろしい悪事を行わせていました」

「『金の目』になったら、悪いことをするんですか……?」

「それも分かりません……とくに説明はなかったんです。とにかく、目が金色に光ったら、イリアス王子の言いなりになってしまうんです」

「精神操作系の能力ってことかな……うーん、マグヌス様に聞いてみよう」

「それがいいと思います」


 ミツネさんは引き続き、彼のルートについて語った。


 まず、イリアス王子が『金の目』の力を操ってシスル様に闇の力を集めたことが原因で、病弱なシスル王子が急死。レナード王子派が黒幕なのではないかという噂が立つ。


 これまでのレナード王子のお馬鹿王子ぶりと横暴ぶりが取りざたされて、国内は急速に無政府状態に陥る。


 レナード王子を日ごろから諫めていた国務卿ワルイー男爵なども相次いで不審死を遂げ、いよいよ国内はレナード王子が即位しなければどうにもならない状態になる。そして加速するレナード王子の悪いうわさとバッシング。彼が言いなりにならない側近を次々と殺しているのだといううわささえ立つ。


 レナード王子は主人公との結婚式の予定を早めて、国内を納得させようとする。


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