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【新キャラ】三人目の王子様! 三王子の能力値をまとめたものがこちらです↓


 レニャード様は入学するための準備を着々と抜かりなく進めていった。


 ワルイー男爵に命じて入学するための屁理屈をあれこれ練り上げ、レニャード様の猫ボディは神様の怒りに触れた可能性があるとして、修道院での生活が必要だという話をでっちあげた。本当にひどいでっちあげだった。だってレニャード様、病気ひとつしてないもん。


 それで、婚約者の私の介助を受けて、王城にも近い聖女宮で祈りの生活をするということになった。


 王太后様、聖女宮長の認可もばっちり。私の両親にも根回し完了。そして誰もレニャード様を止める者はいなくなった。


 晴れて入学の資格を手に入れ、迎えた入学式当日。


 同級生たちが新入生代表で挨拶をするレニャード様の洗礼を受け、『なぜ猫が学校に……?』と混乱している最中、私たちは早々に教室を抜け出した。


「リアさん、いませんでしたね。やっぱりファーストコンタクトは壁をよじ登っているときなのかもしれません」

「ああ。探してみよう」


 私はレニャード様が入ったバスケット・『ロイヤル・テール』号を抱えて、必死に王城との境界にある塀を目指す。


 その途中で、レニャード様が突然、ぬっと身を乗り出した。


「わわっ、レニャード様、どうしました?」

「……この匂いは……!」


 つぶやくなり、レニャード様は籠をぴょんと飛び降りた。繁みの奥に向かってすばやく走っていく猫ちゃん、全然追いつけない私。ま、待ってー!


 レニャード様が消えた繁みの奥に進んだら、制服の裾があちこちの枝に引っかかった。


 うわーん、見失っちゃうー!


 髪の毛も葉っぱだらけにしながらのろのろと進み、なんとか繁みを抜け出したら、あたり一面が猫だらけだった。


 白い猫、黒い猫、三毛猫、いろんな猫が一か所に集まって、放射状にしっぽを並べている。


 中央には、銀髪の少年が、花壇のレンガに腰かけていた。


 あ、レニャード様発見!


 式典用の真っ赤なマントをつけた猫ちゃんを、私は猫の群れからすくい上げた。


「もう、レニャード様、何やってるんですか?」


 レニャード様は必死に棒のようなものをはぐはぐと咀嚼していた。


「その子、君の猫?」


 銀髪の男の子が私に笑いかける。


 年は十三、四歳くらい。ふわっとしたエアリーなショートカットの銀髪に、外国人風の小麦色の肌、少年侍従といった印象の黒いズボンと灰色のベスト。首には白いスカーフのネクタイと、ネクタイを留めるための、大きな一条の線が入った金のキャッツアイのブローチがついている。


 キャッツアイ。


 それは、シンクレア国の象徴で、レガリアと呼ばれる王冠や杖には必ず使われている宝石。


 つまり、ただのモブ侍従が身に着けるようなものじゃない。


 銀髪と、特徴的な宝石で、私は完全に彼が誰であるかを悟った。


 この人って……



 私が少年に気を取られているすきをついて、レニャード様がうにゃうにゃと暴れ出した。


 レニャード様は私の腕から離れ、華麗に地面へと着地し、一目散に少年の足元へと走った。


 少年が手元の袋から、何かを取り出して、レニャード様のところに投げる。


 目の色を変えて飛びつくレニャード様。がつがつとすごい勢いで貪り食う。


「レニャード様、知らない人から食べ物もらったらいけませんよ!」


 私が慌てて捕まえようにも、レニャード様は今しがたもらったおやつをくわえて、さーっと遠くに行ってしまう。


「君、自分の猫のこと、様づけで呼んでるの?」


 少年がおかしそうにくすりと笑った。


 私はハッとして彼を見る。レニャード様のことも気になるけど、私はこの子も放っておけない。


 だって彼は、乙女ゲー『ガチ恋王子』の攻略対象だから。


 ガチ恋王子のサービス開始当時、シンクレアには三人の王子がいた。


 ほがらかお馬鹿なレナード王子(センター)。

 温和で儚げな『金の王子』、シスル王子(右席)。

 そして、思い詰めた表情で使用人の服をまとったイリアス王子(左席)。


 にこやかな二人に比して暗い表情のイラストが象徴するように、イリアス王子のルートは重くて暗い。


 私も、彼のルートは途中までやった。何しろ初期組だったからね。評判もよかったし。


 始め、彼は黒づくめの服装で主人公リアの前に現れる。リアが門限に遅れてしまい、外で立ち往生していたら、女生徒がこんなところで何をしているのかと聞いてくるのだ。


 事情を聞いた彼は、使用人用の通用口を使って、聖女宮に戻る手助けをしてくれる。


 名前も告げずに去った彼だが、翌日、馬車から降りてくるモブ令嬢の付き人として仕事している姿を、リアが目撃する。


 従者とリアの交流が始まり、やがて彼がどうやらレナード王子を探しているらしいと判明。


 主人公には語られないが、従者は王の隠し子だということが、彼自身のモノローグで説明される。

 彼の母親は身分の低い女官で、イリアスが三歳のときの魔術の適性検査で、王との密通が判明し、強制的に王城から放逐されてしまった。


 貧乏暮らしがたたって、母親は伝染病にかかり、死亡。彼はそれ以来、孤児として辛酸を舐めつくす。母親を追い出した王家を恨み、うわさに聞こえてくる兄・レナードのお馬鹿王子ぶりに憎悪を募らせて生きてきたのだ。


 彼は手を尽くして、奉公先のご令嬢の付き人として、王城付近で働く仕事を得る。彼はひと目でもいいから、兄に会ってみたかったのだ。はたしてレナード王子は、弟のことを覚えているだろうか、それとも忘れてしまったのだろうか。イリアスの母のことを知ったら、兄も涙を流してくれるだろうか。


 ほどなくして、リアはレナード王子に興味を持たれ、何かと付きまとわれるようになる。彼はそれを通して、レナード王子のお間抜け能天気ぶりを嫌というほど目撃するのだ。


 やがてリアがレナード王子を遠ざけ、シスルやイリアスの過去を探る選択肢ばかりを選んでいると、ルートはいよいよリアに聖女の徴が出るイベントに突入する。


 リアが徴持ちの聖女となったからには、『金の目』持ちのシスルと結婚させなければならない。それがシンクレア王国の掟だからね。


 一方、レナード王子は王太子の位を降りるか、現状を維持するためにシスルの一派と戦争するかの選択を迫られる。レナード王子の一派は当然戦うつもりで、単純お馬鹿なレナードをそそのかして、強引にでもリアと結婚するように仕向けた。


 改めて言うまでもないけど、レナード王子は天然ナルシスト。『シスルと無理やり結婚させられるなんて可哀想だ。リアは俺に惚れているのに』と考えた彼は、リアとの結婚式を強制的に決定。ルナさんはレナード王子のために、涙をのんでそれに協力。


 そこでリアが、イリアス王子とのハッピーエンドの条件をすべて満たしていれば、そのままイリアスルートのエンディングへ。


 イリアス王子は当初、復讐に燃える心を胸に秘めて王城にやってきたが、レナード王子の人となりを知るまで、まだ迷っていた。『為すところを知らざればなり』……つまり、レナード王子はイリアス王子のことも、彼の母親のこともまったく知らなかったのだから、母親の死に対しても責任はないはずだと思おうとしていたんだね。でも、レナード王子のお馬鹿ぶりをさんざん見て、我慢の限界に達した彼は、こう結論づける。


『為政者が愚かであるのは、それだけで罪だ』と。


 そして始まる彼の復讐劇は、すさまじかった。バタバタ死んでいく登場人物、政権乗っ取り。


 ――私はこのへんで辛くなってプレイをやめた。


 なんでって?


 いえ、私、私的な制裁ざまぁ、全部地雷なんですよね。


 私も前世でよく言われたんだよ。


『兄があんなに凄惨な事件を起こす輩なんだから、この子も何をしでかすか分からない』、って。


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