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【実況】王子様が不具合(バグ)でした【猫化バグ】  作者: くまだ乙夜
第二章

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【トララガオ】新ポケモン登場! 鳴き声が特徴的と話題に!

「い、いいじゃないですか、かっこいいですよ、虎さんスタイルも。私も、虎さんが旦那様だったらちょっと自慢ですね。ちびっこにキャーキャー言われると思いますし」


 レニャード様はちらっと私を見た。あ、若干嬉しそう。もっと褒めてって、目が言ってる。


「レニャード様、虎になってますます毛づやがよくなりましたよね。猫のころよりしっとり感が増えて高級みが出ました」

「分かるか? ブラッシング担当の使用人をひとり増やしたのだ! おかげでいつでも好きなときにブラッシングしてもらえるようになった!」

「レニャード様すてき! 綺麗好き! おしゃれさん!」


 レニャード様がどっしりとした猛獣みのあるお鼻を高々と上げた。あざらしみたいなもきゅっとしたお口と顎が見える。


 喜んでいただけてなによりです。


「もとに戻れなくても日常生活は今のところ支障ないですし、焦らずにがんばりましょうよ」


 レニャード様が納得してくれたので、私たちはおとなしく待つことにしました。


***


 庭の稽古場。


「やっぱりダメだ。まるで話にならない」


 マグヌス様が無情に切り捨てた。


 疲れてひっくり返っていたレニャード様が、がばりと跳ね起きる。


「何がだめなんだ、先生!?」

「でたらめなんだよ。君の魔術制御は破綻している。生卵はつかんだ端から握りつぶし、バケツに入った水は転んでこぼす。致命的に不器用だ」

「じゃあ俺はどうすればいいんですか!?」

「そうだな……」


 マグヌス様は考え込んでから、人差し指を一本立てた。


「念じろ」


 マグヌス様はすっかり教えるのを諦めたみたいで、片付けに入っている。


「そ、それだけですか、先生?」

「そうだ。むしろ余計なことはするな。君は細かな制御をしようとすればするほどしくじる。モラクスとの戦いを覚えているだろう? 精霊たちは、君がピンチのときはきちんと助けてくれる。単純な強い願いなら精霊の方が読み取って、勝手にいい感じに処理してくれるということだ。だから――とにかく強く念じろ」


 えぇ、それ、ホントなんですか? 適当に言ってません?


「がんばれ。君ならできる」


 適当! 適当だ!


 マグヌス様がさっさと自分の部屋に戻ってしまうまで、レニャード様はぽかーんとしていた。


「……ずっと思ってたんですけど、マグヌス様って人にものを教えるのに向いてないですよね」


 私が慌ててフォローする。


 レニャード様はまだぽかーんとしていた。


「大魔術師だからといって、弟子にものを教えるのが上手とは限りませんからね。天才って、人の気持ちが分からないことが多いですから。どうしてこんなこともできないんだ? ってなりやすいんですよ」


 レニャード様がハッとした。


 瞳にちょっと活力が戻っている。レニャード様のおめめは真っ黒で、純真な内面が反映されているので、とてもきれい。


「先生が悪かったんだよな……? そうだよな? 俺がどうしようもないわけじゃないよな……?」

「そうですそうです。レニャード様はやればできる子です。先生が悪かったです」

「うん……ありがとう、ルナ。お前には励まされっぱなしだ」


 なんのなんの。


 レニャード様は一応カラ元気を出して、しっぽを軽く振ったりしたけれど、やっぱり下を向いてしまった。


 ここのところ、ずーっと地道な訓練とダメ出しばっかりだったもんね。いくら前向きなのが取り柄のレニャード様でも、落ち込んじゃうよね。


 何か気晴らしが必要かも。


「レニャード様、よかったら明日はお出かけしませんか?」


 レニャード様は元気のない様子で、猫背のまま、ちらりと私を目だけで見上げた。


 背中に影をしょっていますね。これは深刻そうです。


「ここのところ、ずっと訓練ばっかりでしたからね。たまには私と遊んでくださいよ」


 レニャード様は上の空でうなずいた。


「……そうだな。たまには出かけるのも悪くないか……」


 近所の狩猟用の森で遊ぶ約束をして、その日は解散することに。


 レニャード様は大きくなりすぎてしまったので、馬車に乗るところでお別れしました。


 レニャード様、大丈夫かな。

 ばいばいするまでずっと元気なかったな。


 明日で元気を取り戻してもらえるといいんだけど。


***


 次の日、私の家の前にお迎えの馬車が停まった。


 それが馬六頭立て、十人乗りの超巨大馬車だったので、いつもはお昼まで寝ているお父さまやお母様も起きてくる騒ぎに。


 そこから大きな虎が出てきたものだから、二人とも真っ青になってしまった。


 うちの玄関割と広い方だと思うけど、さすがに虎がいると威圧感あるね。


 ぶっといお鼻に鋭い眼光、レスラーみたいな首や肩にくっついた、ぬるぬると滑らかに動くしなやかな四肢。陽に当たると金色に輝くオレンジの毛にちょっとだけレニャード様の面影があるけど、ニッとむき出しにした牙(たぶん笑ったんだと思う)の凶悪な絵面からは、とてもあの可憐な子猫ちゃんの連想はできない。


「ご無沙汰しております。レニャードです。おふたりともご息災でお過ごしのようで何よりです」


 大きな虎がすごいきちんとした口をきいたので、ヴァルナツキー公爵はようやく何事か分かったみたい。


「君は……レニャード殿下なのですか?」

「はい。諸事情あって、今はこのような姿に。驚かせてしまい申し訳ありません」

「見ない間に、ずいぶん大きくおなりになって……」


 レニャード様はよそゆきの首輪をして、ぴーんと前足の先から頭まで伸ばして、座っている。ちょっと緊張しているみたいに見えた。


 あぁ……きちんとお座りして待てをしてるトラさんかわいいね。花丸あげちゃう。


 しっぽにちっちゃいリボンまで結んじゃって。おしゃれさん!


「見習い聖女とのガーデンパーティに向けて、楽器の練習もしています。来月の開催であるとうかがっていますが、そのときはぜひお声がけください」

「その姿でも、楽器は演奏できるの?」

「はい、タンバリンはなんとか持てるようになりました」


 やだ、なにそれ。絶対見たい。


面白い出し物になりそうだと、ヴァルナツキー公爵もちょっと興奮気味だった。


 会話のおかげで父母もレニャード様が虎化している事実にも慣れてきたのか、最後の方にはふたりとも笑顔になった。


 レニャード様にはあらためて招待状を送る約束をして、両親とは別れた。


 レニャード様が乗ってきた立派な馬車の前に立つ。いやーすごいなー。


「俺が乗れるサイズの馬車が、これしかなかったんだ」

「確かに。普通の馬車だったら、潰れちゃいますよね」

「式典にしか使わないやつで、昨日、大急ぎで整備させたから、ちょっとガタピシするぞ。クッションの準備は十分か?」

「大丈夫でーす」


 私のひとつ手前の座席を占領して、ながながと横たわるレニャード様もまた、山ほどのクッションに埋もれていた。

 身体を横向きにして、腕をつっぱって上半身を起こす姿は、アラブの王様みたいに堂々として立派だった。


「レニャード様……立派になって……なんて威厳のある姿なんでしょうか。かっこいいです。素敵です」

「そうか? ふふーん! ま、いずれこの姿も民たちに見せてやるか!」


 レニャード様が尻尾を機嫌よくパタパタと動かしたせいで、車体がちょっとグラついた。


 こんなに大きな馬車でも、レニャード様が乗っていると車高が大きく沈むのが分かる。


 まだタイヤにゴムがある時代でもないから、これで走ったらかなり揺れそう。


 勢い余って、車輪が外れたりしないといいんだけど。


 馬車のトラブルって結構あるからね。何も起きないといいなあ。


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