【検証】気になる新キャラの正体 意外な結果にスタジオ騒然!
「別人だな」
マグヌス様は萌え袖をひらひらさせながら、そう言った。
手に持っている紙ばさみの用紙には、先日計測してもらったリアと名乗る少女の鑑定結果が出ている。
「公爵令嬢クレア・マリア・ジルドールが生まれたときに受けた洗礼の記録と、平民のクレア・マリアの魂の情報が一致しない。まったくの別人だよ」
「そんな……」
めちゃくちゃそっくりなのに?
彼女、ゲーム画面で見たころよりかなり幼いけど、顔のパーツから受ける印象がゲームのイラストそっくり。特徴を上手にデフォルメしてキャラにしたらこんな感じかなって、すぐ分かる。
「そんなはずはない。絶対に同一人物だ!」
レニャード様が犬歯をむきだしにして言うので、私は深くうなずいてしまった。
「しかし、現状、魂の情報が変化することはない。現に、レニャード、君の魂も生まれたての記録と一致するからこそ、正統な王位継承者と認められているわけだしな。これは、どんなに姿や形が変わっても、変化することはない。たとえ、獣になったとしても」
レニャード様はショックを受けている。私もちょっとショックだけど、レニャード様の魂に変化がないのは、なんとなく分かる気はするな。
私もよく、「あ、ゲームで見た」って思うもん。
どんな姿に変えられたとしても、レニャード様はレニャード様で、見た目がかっこいいからとかじゃなくて、もう魂そのものがイケメンなんだよね。
でもそれは、レニャード様の話。
「……あの、その魂の情報っていうの、もしも私が鑑定を受けたらどうなるんですか?」
私はルナさんと全然別人だよ。
「新生児の頃とは別人だと判定が出るだろうな」
マグヌス様は即答した。
「……なら、クレア・マリアさんも、何らかの手段で魂の情報を変化させた可能性も……」
「なるほど、ちょうどレニャードを暗殺したころに変化した可能性はあるな」
「でも、そのころの鑑定情報って残ってないんですよね……お屋敷も全部燃えてしまったそうですし」
レニャード様は猫特有の、ぷるるる、という、小さくて甲高いうなり声を出した。本人はとてもストレスを感じて、怒っているつもりなんだけど、ちょっとかわいい鳴き声だよね。
「……あいつはクレア・マリアだ。俺には分かる。あいつは、匂いが同じなんだ!」
「匂い……?」
「俺は、一度匂いをかいだ相手のことは絶対に忘れない! あいつの匂いを、俺が忘れるはずはない!」
「なるほど。しかし……」
微妙な顔のマグヌス様。
「匂いは証拠にならない、ですもんね……」
私がそっと口添えをすると、マグヌス様はうなずいた。
「そうだ。君の嗅覚には信頼がおけると思っているが……魂の鑑定情報をひっくり返すほどだとは見なされないだろう」
マグヌス様はしばらくレニャード様を思いやるように頭のうしろをカリカリとかいてあげていた。気持ちよさそうに目を細めるレニャード様。かわいいね。
マグヌス様のいうことももっともだけど、私にはもうひとつ、気になることがあるんだよね。
「……『ヒロインになりたかった』」
かつてクレア・マリアが遺言として残したその言葉を私がつぶやくと、ふたりが私を見た。
「彼女、もしかしたら、私と同じかもしれません。私と同じように、レテ川の水を飲んで、リアという少女のおとぎ話を知ったのかも……」
クレア・マリアに前世の乙女ゲー知識があるのなら、それが原作を逸脱した奇抜な行動の理由と考えてよさそう。
クレア・マリアは、主人公のリアになりたかったんだよ、きっと。
「だから、公爵令嬢クレア・マリアを消去して、肉体も女性に変えて、リアになりすましている……」
「性転換か、不可能ではないが……かなりの大魔術だぞ。にわかには信じがたい」
私の推理、大魔術師にはやっぱり無理があるように聞こえるのかな。
「ひとまず、王太后には話をしておこう。どこまで信用されるかは分からんがね」
「母上は……あいまいな噂で動かれることはないだろう」
レニャード様はしょんぼりした。
王太后様はレニャード様に甘いけど、政治や裁判になると別なんだよね。ゲームの方で、最終的に、ルナさんやレナード王子を処刑する決定を下したのはこのお方だもの。
リアを名乗る少女についても、王太后様は証拠がなければ動かないはずだから、レニャード様にはもう、クレア・マリアに対して打てる手立てがないんだ。
「……フルツさんにも話しましょう。できるだけ警備に協力してもらえるように。マグヌス様も、クレア・マリアさんがまたレニャード様の命を狙ったりしないように、協力してほしいです」
「実験動物の保護は俺の義務だからな。仕方がない。ひとまず任されよう」
よかったね、レニャード様。
本当は捕まえたいところだけど、身の回りの安全が確保できるのなら、ちょっとは安心かな。
マグヌス様は、そこでぱっと明るい顔になった。
「そうだ。新しい実験を思いついたんだが、付き合ってくれるかな」
レニャード様は、へにょっと耳を下げた。
やっぱりこの耳、オレンジ色のイカちゃんみたい。
「なに。痛くはしないさ。きれいで安全な実験だよ」
「そ、そういって先生はいつも変なことをさせるだろ! 騙されないぞ!」
「はて、変なこと、とは……どれも必要な犠牲だったと思うが」
「ふざけるな! 先生はいつも面白半分で俺に毒を盛るだろ!」
「そんなことはしない。今回は本当に大丈夫だよ。薬を飲む必要はないし、痛みや苦痛もまったくない。実験にはそこのご令嬢にも立ち会ってもらうから、危険があると思ったらいつでも止めてもらっていい」
彼がにっこりとうさんくさい笑みを浮かべる。
レニャード様は、簡単に笑顔に騙された。
「……本当だろうな?」
「請け負うさ」
「なら、我慢する。俺も、早く人間に戻りたいしな」
「もちろん協力するよ。今日の実験もその役に立つだろう」
そして、レニャード様は魔法で眠らされ、変な台に固定されることになった。
「今回は内臓の具合を見たい。探索魔術で外から探るだけだから負担はないんだが、そのときに毛が生えていると邪魔でな。事前に腹部の毛を一部剃ろうと思う」
「はあ……」
エコー検査みたいなものかな?




