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【実況】王子様が不具合(バグ)でした【猫化バグ】  作者: くまだ乙夜
第一章

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【番外編3】無理やり抱っこされる猫のキモチって? 猫の本音大特集!

「失礼だな! 俺は人間だ!」

「種の保全を考えるのなら、猫と番わせて個体数を増やすのがベターだろう」

「猫じゃない、呪いで猫になってしまった人間だ!」

「しかし、こうしてみると、君が婚約者でよかったのかもしれんな。レニャードをひとりで野放しにしておくのは、いかにも危険だ。よく気のつくお世話係がいたほうがいい」

「俺の話聞けよ! 人間だって言ってるだろ!」


 レニャード様がマグヌス様のズボンの脛をバリバリと爪とぎする。


 マグヌス様は、たった今気づいたというように、足元のオレンジ色の猫ちゃんを見た。


 それからさっと抱き上げる。


 レニャード様がうにゃーんと鳴いて拒否の姿勢を見せたけれど、お構いなしに抱きしめて、後ろの頭のあたりにちゅっとした。


「まあ、そう怒るな。君は人間をやるより、猫の方が向いている。だってほら、こんなにもかわいらしい」

「か、勝手に決めるな! 離せ! 気持ち悪い!」

「さて、どうしようかな。聞き分けのない子にはお仕置きが必要かもしれないな?」


 マグヌス様はうれしそうに意地悪なことを言い、レニャード様のちっちゃなおててをにぎにぎした。


「やーめーろ! やーめーろー!!」


 レニャード様は後ろ足でげしげしとマグヌス様を蹴り飛ばしていたけれど、結局マグヌス様にちゅーされるがままになっていた。


 わあすごい。


 レニャード様も人の話聞いてないことあるけど、話を聞いた上でどうでもいいところはスルーするタイプのマグヌス様相手だと、レニャード様が負けちゃうんだね。


 やっぱりマグヌス様は要注意かも。あんまりレニャード様とふたりきりにしないでおこうっと。変な風に言いくるめられて、おかしな実験されかねない。


「うわああん! ルナ! ルナぁーっ!」


 レニャード様の叫び声に泣きが入った。


 見てる場合じゃなかった。助けてあげないと。


「マグヌス様、私の婚約者にベタベタ触るのはやめてくれませんか?」


 私がレニャード様を取り返そうと、両手を差し出すと、マグヌス様はちょっと驚いたように目を丸くした。


「君が妬くほどのことではないだろう。私は猫を愛でただけで、君の婚約者を取り上げようというのではないよ」

「御託はいいですから!」


 私が有無を言わさずに詰め寄ると、レニャード様もマグヌス様のところから私のほうにぴょんと飛びついた。


「ルナぁー……」


 お耳を寝かせたレニャード様が泣き声でしがみついてくる。


 激エモ。


「よしよし。怖かったですね、レニャード様」

「くそ。なんで人間のおっさんほど勝手に俺を撫でまわすんだ! 触っていいなんて一言も言ってないのに!」

「おっさん……!?」


 マグヌス様が衝撃を受けている。いえ、あなた実年齢からいったらおじいさんを通り越して、仙人とかですよね。


「おっさんとはなんだおっさんとは!?」

「マグヌス様、子猫ちゃんの言うことですから……生後十年ちょっとの子猫ちゃんからしたら、大人の男の人はみんなおじさんです」

「お……おじさん……」


 まだ納得が行っていない顔つきのマグヌス様には構わず、レニャード様は汚い鳴き声を上げる。ニ゛ャ゛ア゛ア゛ア゛!


「いつもそうだ! おっさんはいつも俺を見かけるとためらないなく抱っことちゅーをせがんでくるのに、かわいい女の子ほど全然触ってくれない! なぜだ!?」


 レニャード様が錯乱している。

 ていうかそれ、私も聞き捨てなりませんよ。


「……レニャード様がかわいいと思う女の子って?」

「そりゃもちろん――」


 レニャード様は途中まで言いかけて、やめてしまった。


「い、いや、誰でもいいだろ、そんなことは!」

「よくありませんけど? ねえ、誰なんです、その女って?」


 レニャード様が気まずそうにしている。言いたくなさそうな様子に、私がもやもやした。


 うわー、面白くないなー。毎日こんなにかわいがってあげてる私を差し置いて、いったいどこの女にうつつを抜かしていたのですかね? 全然面白くないです。


「だ、だから、それは……! ひとりしかいないだろ、そんなの!」

「へー、具体的なんですねえ。誰なんだろー? 私の方からも挨拶しておきましょうかあ? レニャード様に失礼なことしないようにって」


 もちろん、レニャード様をよろしくお願いすると見せかけて、圧力をかけますけどね。だってレニャード様は私の婚約者だし、当然ですよね?


 レニャード様は切羽詰まった声で、大きく鳴いた。


 うなーん!


「あ、ああもう! あのなあ! お前以外に誰がいるっていうんだよ!」


 あれ?


 そ、そうなの?


「俺がかわいいと思うのも、抱っこしてほしいと思うのも、いつもお前だ!」


 あら……恥ずかしいですね……


 私がうっかり照れていると、レニャード様は水気を飛ばすときのように、ぷるるっと頭を振った。お耳が高速ではためいてぱたぱたとかわいい音を立てる。


「ああもう、この話はもうやめだ! やめやめ!」

「おっさん……私が、おっさん……」


 ――その日の研究は何の成果も出せずに終わりました。


 変わったことといえば、マグヌス様がこれ以降、レニャード様への無理やりな抱っことちゅーをぴたっとやめたことくらい。


 おじさんって言われたのが本当にショックだったんだね。


 仕方がないので、私はちゃんとレニャード様に注意しておきましたよ。


『マグヌス様は実年齢を考えたら、おじさんを通り越して妖精さんなんですから、これからは先生じゃなくて、妖精さんって呼んであげてください』って。


 素直なレニャード様は、律儀にその言いつけを守ってくれました。


「せんせ……じゃなかった、妖精さん! こんにちは! こんなところで何してるんですか?」

「ごきげんよう、妖精さんのマグヌス様」

「妖精さん、俺、書庫からヒントになりそうな本を見つけました!」


 マグヌス様は――


 言われるたびに赤面して「それだけは本当にやめてくれ……」となり、「おじさんの方がましだ」という結論になりましたとさ。


 いつも何かを企んでいるか、えらそうにふんぞり返っている大魔術師だから、こういう方向からの辱めには弱かったみたい。


 めでたし、めでたし。



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