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【実況】王子様が不具合(バグ)でした【猫化バグ】  作者: くまだ乙夜
第一章

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【番外編2】レニャード様との遊び方、教えちゃいます!


 レニャード様が、み゛ー! と、情けない鳴き声をあげる。


「ああ、大変。ぱたぱたしましょうね」


 私はレニャード様の毛皮から小麦粉を払い落としてあげた。


 ふと、マグヌス様の視線を感じて顔をあげる。


 マグヌス様は私と目が合うと、話しかけてきた。


「……そういえば、君は前世の記憶があると言ったな。君がその年では不自然なぐらい大人びているのは、そのせいか」

「うっ……」


 そうなんですけど、そこにはあんまり触れないでもらいたいですね。


「私はレニャードの肉球にも興味があるが、君の前世にも興味があるんだ」


 ええ……嫌だなあ。この人ちょっと変わってるからなあ。


 私が内心ちょっと引いていることにはまったく気にかけずに、マグヌス様がずいっと近づいてくる。


「本当の君は何歳くらいなんだ? 百歳は超えたのか?」

「超えません」

「では七十歳くらいか?」

「……私、そんなに老けて見えます?」

「私の国では二百歳越えは普通だったが、君のところは違うのか?」


 自分ち基準でしたか。マグヌス様のお国はちょっと寿命が長いですね。


 レニャード様はびっくりしたように目を見開いた。瞳孔が針のように細くなっている。


「そうなのか、ルナ? お前、実はすごく年上……」

「違いますから!」


 純真なレニャード様に変なこと吹き込まないでほしい。すぐに信じちゃうんだから。


「研究に必要そうなことなら答えますけど、個人的なことはやめてください。マグヌス様は昔の人なので最近のことは知らないと思うんですけど、そういうの、セクハラっていうんですよ」

「セク……ハラ……?」

「そうです。女性に年を尋ねるのはとても失礼なことなんですよ?」


 マグヌス様は軽く眉間にしわを寄せた。


「いや、私にもそのくらいの常識はあるが。しかし、私は君が女性かどうかに関係なく、純粋な学術的興味で聞いている」


 だから何も悪いことなどしていない、と言わんばかりにふんぞり返るので、私はちょっと呆れてしまった。


 マグヌス様は魔術師で人間嫌い。で、性格も理屈っぽいから、ほっとくとすごいことまで無遠慮に聞いてくるんだよね。


 こないだなんて、レニャード様に雄としての機能がどうたらこうたらと、セクハラ裁判100%有罪負けしそうな質問をしていたからね。


 そういうのは私がいるところでやらないでくださいって釘刺したけど、マグヌス様ちゃんとわかってるんだかいないんだか。理屈の上で分かるのと、従うかどうかはまた別だとか、意味の分からないことを言っていたなあ。


 心配だから、もっかい釘をさしておこうかな?


「……じゃあ、私もレニャード様の身の安全が心配なので、純粋に保護者として聞きますけど、マグヌス様が人間嫌いなのはどうしてなんですか? 何百人も人を殺したってどういうことなんです?」


 マグヌス様の顔色が変わった。


 足もとのレニャード様にも緊迫感が伝わったのか、難しい顔つきになった。きゅっと耳が前に寄って、真顔のおめめが縦のアーモンド型になる。


 ……ちょっと核心をつきすぎた?


 私、マグヌス様ルート未攻略だから、彼の過去は本当に知らないんだよね。分かるのは、過去に大きなトラウマがあるってことだけ。


 レニャード様も、天然たらし行動でマグヌス様を攻略してしまっただけだから、詳細は知らないはずだし。


 一度詳しく聞いてみたいところではあるけど、この反応を見るに、無理そうかなあ。


「聞かれたくないことってありますよね? 私の前世のことはそっとしておいてください」

「しかし、年齢くらいでそんなに怒る必要があるのか?」

「怒るかどうかを決めるのは私です。マグヌス様に押しつけられることじゃありません。嫌なものは嫌なんです」


 マグヌス様が黙ってしまった。


 気まずい空気の流れる中、足元のレニャード様が私のすねをちょいちょいと肉球でつつく。


「ルナ、保護者としてってどういうことだ?」


 あ、そこ引っかかりましたか。


「お前は俺の婚約者だから、保護者はむしろ俺だと思うんだが?」

「えっ……?」

「は……?」


 ほぼ同時に同じような驚き方をしてしまったので、私とマグヌス様で、思わず顔を見合わせた。


「先生まで驚くのか? なんでだ、いつも俺がルナの世話を焼いてやってるだろ?」

「えっ……?」

「はぁ……?」

「いつもルナと遊んでやってるのは俺じゃないか!」

「えっ……?」

「本気か……?」

「胸に手を当ててよーく考えてみろ! お前が暇そうにしているとき、寂しそうにしているとき、いつも俺がそばにいただろ!?」


 私は言われたとおり、胸に手を当ててみた。


 レニャード様との遊び、その一。猫じゃらし。私が振り回す猫じゃらしをレニャード様が追いかけるよ。


 レニャード様との遊び、その二。虫取り。レニャード様がつかまえた虫を私が見て、褒めてあげるよ。取った虫は私にくれることもあったけど、いらないって説明してからはお付きの人に標本にしてもらってるみたい。標本をもとに、図鑑で何の虫か調べるのも私だよ。おかげですっかり虫に詳しくなったよ。


 レニャード様との遊び、その三。本の朗読会。レニャード様が読みたがっている本を、私が朗読するよ。冒険活劇ものが多いかな? そのせいで、日常ではあんまり使わないワードに詳しくなったよ。この世界は、日本よりも『悪魔』とか『精霊』に関するワードが多いみたい。あれだね、羊を飼って暮らす民族には羊の肉の部位を示すワードがたくさんある、みたいなもんだね。あとは日本語の『私』を表現するワードが『俺』『僕』『あたし』とやたらに多いみたいなもの?


 それはともかく。


 私、こんなにレニャード様の好きな遊びに協力してあげてるのに、レニャード様からは『遊んでやってる』と思われてたの?


 さすが猫ちゃん。何においても自分が中心。


 一方マグヌス様は、顎に手を当てた。


「……ふむ。私は常々、王太后陛下マムはなぜ人間の君をレニャードの婚約者にしたのだろうと思っていたが……」


 えっ。いきなり何を言い出すの、この人。


 私が戸惑っていると、彼は手を広げて、弁解するように説明を付け加えた。


「だって、考えてもみたまえ。レニャードは非常に貴重な、世界に一匹しかいない、喋る猫だぞ?」

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