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【実況】王子様が不具合(バグ)でした【猫化バグ】  作者: くまだ乙夜
第一章

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【衝撃】真相が今明かされる……


 ザイストファルド公子・ジョンといえば、ゲームの攻略対象だ。シンクレア王国の、たくさんいる王子様たちのうちのひとりだったはず。この世界では、公子も王子のひとりとしてカウントされてたんだよね。


 襲ってきた男の人は中年男性っぽかったので、ザイストファルド公子の父親だったのかもね。


 そういえば、ゲーム本編のザイストファルド公子の父親は、反乱を起こして王太后様に処刑されて、まだ幼いザイストファルド公子も領地と称号を王家に剥奪されていたんだっけ。


 公子ジョンは、現王家に密かな反感を持ったまま成長する。


 ジョンのルートでは他の不遇をかこつ公子たちと共謀し、シンクレアからの独立をはかる。


 レニャード様は彼らの独立運動を認め、剥奪していたザイストファルド公の称号を正式に返還。ジョンに、ザイストファルド公を名乗ることを許可。


 彼はザイストファルド公国の主になり、主人公を公妃として迎える――というようなシナリオだったと思う。


 まったく同じ筋書で、結ばれる王子との恋愛エピソードだけ取り替えたルートが、あと二つ存在する。手抜きっぽいけど、メインはあくまで恋愛だから仕方ない。


 おそらくは、今回がその三公子たちの過去回想に出てきた事件だったのじゃないかな。


「……もしかして、リージュ公とハンスブール公も反乱に加担していたりします?」


 ザイストファルド・リージュ・ハンスブール。

 三人合わせて『座椅子離反』だったかな。ネットで変なあだ名がついてたから覚えてたんだよね。


 レニャード様は意外そうな顔をした。


「いや、聞いてないが……」

「あ、そうなんですね」


 この場合どうすればいいのかなぁ。処刑しない方がいいのかも? 公子たちが反乱するきっかけになっちゃうかもしれない。


 でも、こうして反乱してきたってことは、放置してたらまた同じように命を狙ってくるかもしれないってことだし。判断に困る。


 とりあえず、私の覚えてる範囲だと、この三公子のルートでレニャード様が死ぬことはなかったはずなんだよね。最悪の場合でも領地が減るだけだし、命を狙われるリスクを減らした方がいいかも。


 ちなみにこの三公子のルートでも、ルナさんはしっかり処刑される。主人公に嫌がらせをした罪はそれだけ重いってわけですよ。かわいそうなルナさん。


 私は考えた末に、レニャード様に進言することにした。


「……おそらく、リージュ公とハンスブール公も加担しているはずなので、調査お願いします」

「分かった。母上に言っておく」


 それからレニャード様は、思い出したようにこう言った。


「お前のおかげで犯人を大々的に捕まえられたといって、母上もお喜びになっていた。褒美を取らせたいと言っていたが、何か欲しいものがあるなら今のうちに言っておくといいぞ」

「褒美ですか……」

「何でもいいんだぞ? 王宮に部屋が欲しいとか、珍しい宝石がほしいとか……」

「私んちも王宮まで徒歩五分くらいですし……」


 服や宝石は今でも足りてる。


 困っていることと言えば、ルナさんのことくらい?


 結局、全然戻ってきてないもんね。


「……なくした記憶を取り戻すアイテムってありますか?」


 私が聞くと、レニャード様は首をひねった。


「聞いたことないな」

「そうですか……」


 そうすると、とくに私にはほしいものとかもない。

 ファッションコーデもそんなに好きじゃないし。


 ふりふりのドレスはかわいいけど、私の趣味とはちょっと違うんだよね。前世では肩の出たニットとか、背中の開いたキャミソールとか、あとはショーパンなんかが好きだったけど、女子は肌を見せちゃいけませんってきつく指導されている今振り返ると、露出度高すぎたんじゃないかなって気がして、ちょっと恥ずかしいかな。


 普通の服を着るのが一番だよねと、今なら思うよ。


「……あんまり欲しいものとかはないので、そちらで適当に見繕ってもらえれば……」


 私がそう告げると、レニャード様は不満げに耳を下げた。


「……あ、でも、レニャード様を抱っこさせていただける権利とかはめちゃ欲しいです……」


 冗談半分というか、場を和ませるためのジョークのつもりだったんだけど、レニャード様はのしっと私の膝の上に乗った。


「いいだろう。許す。今日はかわいい俺を存分に撫で撫でするがいい」

「あ、ありがとうございます……」


 なでなでって。言い方かわいいね。


 全身あちこち痛いし、肩も持ち上がらない感じなんだけど、なんか元気出てきたよ。


「ほら。今日はももの毛並みがおすすめだ」


 おすすめの毛並みの部位を教えてくれるの、焼肉みたいでホント好き。言ったら「牛や豚と一緒にするのか!?」って怒るだろうから、内緒だけどね。


「少しなら、足を握ってもいい」

「い……いいんですか?」

「今日は特別だぞ」


 私はお言葉に甘えて、そっとレニャード様のあんよの先を握り、きゅっと丸めた。

 あああ、猫ちゃんの後ろ足の爪先は丸いねえ。毛がつやつやだねえ。かわいいねえ。


「どうだ? 最高だろう?」

「とても触り心地がいいです。最高です」

「ふん。ま、当然だな! 俺ぐらいにもなると日に三度のブラッシングを欠かさないのだ!」

「私が髪の毛とかす回数より多いですよね」

「お前も俺の婚約者なら、まめにブラッシングするがいいぞ! お前の毛質はなかなか悪くない! 金は俺の毛を美しく引き立たせる!」

「おほめにあずかりました。恐縮です」

「国中の女を探したが、お前が一番いい色をしていたからな! 自信を持て!」

「あ、そうだったんですか」


 私はふと疑問を覚えた。


「……もしかして、ルナさ……いえ、私がレニャード様の婚約者に決まったのって……」

「俺の隣に立たせたときにもっとも俺がかわいく見えることを条件にした! その金の髪も、緑の瞳も、かわいい俺を抱っこするのにふさわしい!」


 あ、そういう経緯だったんですか。

 なるほどね。


 ゲーム本編の原作レナード王子も似たり寄ったりな理由でルナさんを選んだんだろうな。


 確かにルナさん、まだまだ外見はロリだけど、ド派手な金ぴかの髪の毛を外巻きロング(プラスドリルロール)にしてて、着実にゴージャスセクシー路線だし、オレンジ系統と相性よさそうなカラーリングだし……


 美人だけど猫っぽくてきつい目つきなのもあって、同じゴージャスセクシー系統のイケメン王子様とか、トラ柄やヒョウ柄の猫ちゃんと並べてみたくなる感じだよね。


 見た目しか見てなかったから、処刑するときもあんなに情がなかったんだね。


 まあ、私はしょせん他人事なので、いいですけど。ルナさんは複雑だろうなあ。


 でもそうすると、ルナさんは原作レナード王子のどこに惹かれたのかなあ?


 言動は個性的で面白いし、見てて飽きないし、クセが強い芸能人を好きになる感覚で、なんとなくハマっちゃう気持ちは分からないでもないけどね。


「おい、ルナ、俺の横顔も見ておけよ! この愛らしい俺の姿を!」


 レニャード様が真横を向いてビシッと決め顔をした。


 いつ見てもEライン完璧。おめめきれい。水晶みたい。


「レニャード様は毎日お見かけするたびに、おかわいらしさの記録が更新されるので全然飽きないです」

「今日は好きなだけ見せてやるぞ! 喜べ!」

「わーいやったあー」


 私がなまあたたかい気持ちで喜びを表現すると、レニャード様はふと動きを止めた。


 じっと私を見つめるオレンジの猫ちゃん。


「お前が飽きるまで、ずっと俺がついていてやるから……だから、はやくよくなれ」


 真顔で、まじめくさった口調でそんなことを言うので、私はちょっとドキリとした。


「俺は、お前の猫じゃらしじゃないと、いまいち面白くないんだ」


 あ、そっちですか。

 猫じゃらし係としての需要だったんですね。

 いいんですけど。


 すごく真剣に言うから、告白されたのかと思ってしまいました。


 心臓に悪いからやめてほしいな。見た目はかわいい猫ちゃんだけど、レニャード様の声はイケメンなんだよ。


***


 レニャード様が帰ったあと、私は夢を見た。



 それはルナさんがまだ小さかったころの記憶。


 小さな女の子が、怪我をして泣いている。


 そこに、赤い髪の男の子がやってきて、おまじないをかけてくれた。


 不思議な古代の言葉で、女の子のけがはあっという間に治ってしまった。髪についていた泥汚れもすっきり。


 綺麗な髪だな! と男の子が笑う。


 それでその女の子は、いっぺんに赤い髪の男の子が好きになった。


 ルナさんは夢中になって、古い民謡を集めて、古代の言葉を勉強した。


 ――ラララ、エウェク、ザダイモン、美しい荒れ地の守護神。

 ――ラララ、アンジュ、ザダイモン、穏やかに眠れ。


***


 その後、私は魔法医の治療もあって半月もしないうちに全快した。


 首謀者の三公子の父親たちは全員拘束され、審議中とのこと。おそらくは重い処罰は免れないだろうということだった。


 レニャード様はというと、式典でのドッグファイト(猫だからキャットファイト?)の様子を見ていた民たちからの人気が急上昇。


 勇敢ないい王子様だということで、ちょっとした評判になった。


 こうして、猫王子の存在は、国内外に広く認知されたのでありました。


 一件落着、めでたしめでたし。


「ルナ。お前に頼みがある」


 レニャード王子が改まった態度でそう切り出したのは、式典からだいぶ日がたったある日のことだった。


「俺は、元の姿に戻りたいんだ」



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