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【実況】王子様が不具合(バグ)でした【猫化バグ】  作者: くまだ乙夜
第一章

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【弾幕】ミニゲームですがピンチです・ライブレポ4


 要はシューティングゲームだよね。任せて。

 前世でやったことある。


 私は右の操縦桿をこれでもかというほどの力で押して、敵機を追った。


 操縦桿かったいなあ! 全然動かないよ!?


 ちょっと力加減を間違えたのか、飛行ユニットが急カーブを描いて旋回した。


 無駄に二回転ほど決めたあと、目を回しながらなんとか角度を調整する。


 飛行ユニットは推進角度を変え、すごい速さで飛んだ。


 レニャード様に指示された機体と、流星のようにすれ違う。


「おい、そばに寄せろというのに!」

「そ、そんなこと言っても!」


 まだ乗り始めて三十秒ぐらいですよ。右も左も分からない素人に無茶を言わないでください。


 敵飛行ユニットはこなれた動きでUターンし、私の真後ろを取った。


 あ、これ、まずい位置取りだ。

 私は詳しいから分かる。紅の豚も見たことあるからね!


 案の定、後ろから銃弾が飛んできた。


「うぎゃあああああ! うぼあああああああ!」


 パニックを起こした私がガチャガチャと操縦桿を適当に動かしたら、それがたまたま銃の軌道を逸れ、全弾どこかあさってに飛んでいった。


 こ、こわー! リアル銃弾こわー!


 当たって死んだらどうしてくれるんですか!?


 次も避けなきゃという強迫観念に囚われ、ひたすら飛行ユニットをジグザグに飛ばしていたら、今度は敵機がまっすぐ飛んできた。ぐんぐん距離が縮まる。


「お、追いかけてくるうううう!」


 悲鳴を上げてスピードアップを図る私の胸に、レニャード様がぴょんと飛びついた。


「上だ、上を取れ! とにかく上昇しろ!」


 操縦桿をめいっぱい手前に引き倒し、急角度でぐんぐん空へと飛んでいく。


 私は座席に固定されてるからいいけど、私の胸にしがみついているレニャード様はだいぶ辛そう。


 レニャード様、落ちないでねー。


 見る間に周囲が見渡す限りの青い空になり、私はさすがに不安になってきた。


「どこまで登るんですか?」

「まだだ……もう少し……」


 レニャード様が私の肩から頭をひょっこり出して、下の方にいる敵をにらみつける。


 敵はすぐ後ろに迫っていて、機体が上げる爆音が耳にうるさいほどだった。


「……どちらの機械も出力は同じ、そうなると最後にものを言うのは……体重が軽い方だ」


 ミラーに映る敵はわずかずつ高度を下げ、おおよそ一メートル半くらいの距離ができた。


「よくやった。これなら、相手に反応されるより前に俺の爪が届く!」


 レニャード様はそう宣言し、私の肩に両足をかけた。


 そのまま、後方めがけて鋭く飛び降りる。


 敵機は急にハンドルを切りかけたが、その前にレニャード様の爪が敵の操縦桿を握る手を切り裂いた。


 悲鳴をあげて手を離す男。袖の端っこに爪をひっかけ、レニャード様ががっしりと腕にしがみつく。


 レニャード様はその腕に、がぶっと噛みついた。


 男がパニックに陥る。レニャード様を叩き落とそうと腕を振り回すが、それよりも早くレニャード様がするりと離れて、足元に着地した。


 足に噛みつかれた男の悲鳴が虚空に響き渡る。


 れ、レニャード様、落ちないかなー? 大丈夫かなー?


 私は機体の上昇から、急降下に移った。


 レニャード様に両手を負傷させられた男は、もうこの硬い操縦桿を握れないはず。なんたってこれ、本当に硬いからね。


 落ちていく機体をなんとか足のレバーだけで立て直そうと必死になっている男を尻目に、レニャード様が私の方を振り返る。


 あとは、私が、なんとかして機体のそばに寄せられれば!


 敵機が無理やり機体を旋回させたせいで慣性が働き、レニャード様が大きく振り回される。


 危ない! 落ちる!


 お願い! 届いて!


 火事場の馬鹿力で操縦桿がいやに深く傾き、ガクンと急降下する。


 宙に放り出されたレニャード様の、放物線を描く軌道を見て、なぜか予感が閃いた。たぶん、レニャード様が落ちてくるのは、このあたり!


 神がかり的な直感で行った絶妙な位置調整が功を奏し、レニャード様は下に回り込んだ私の背中にべちーんと激突した。


「れ、レニャード様!? 大丈夫ですか!?」

「……生きてる」


 爪を立ててしがみついているのが分かったので、私はホッとした。手足が動くならとりあえず落ちる心配はなさそうだね。


 敵機は私をあっという間に抜き去って落下し、不時着したところをフルツさんに取り押さえられた。


 残りの一機はつかず離れずの距離でドッグファイトを見守っていたが、形勢不利とみるや、一目散に逃げだした。


「追うぞ」

「え、でも……」


 深追い厳禁なのがセオリーじゃないのかなあ。


「フルツもじきに来るはずだ」


 下に目をやると、フルツさんも敵から鹵獲した飛行ユニットの操縦桿を握ったところだった。


 レニャード様は、逃げていく敵機を見上げて、お鼻をひくひくさせる。


「……においで分かる。あいつは俺の知ってる貴族だ」

「え!?」


 下っ端ならばともかく、貴族なら話が違う。

 計画の中枢にいる可能性が高い人物だ。


「でも、証拠が俺の嗅覚じゃいくらでも言い逃れをされてしまう。ここで捕まえるのが一番だ」

「分かりました。行きましょう」


 私は再度操縦桿を握りしめ、急いで敵機を追跡した。


 いくらも行かないうちに、裏通りで高い建物の陰に隠れていた敵機を見つけた。


 うわ、仲間がいる。


 飛行ユニットを降りて、丸くなって相談中だったと思しき覆面のお仲間が六人もいて、私はちょっとビビった。


 敵は慌ててまた飛行ユニットに乗ろうとしている。


「あ、あの、このままいくと囲まれるんじゃ……」

「だが、逃がすわけにはいかない!」


 レニャード様は計器のところに飛びつくと、青いボタンをポチッとした。


 かなり重い手ごたえがして、銃が発射された。飛行ユニットに乗りかけていた人たちの動きが止まる。


「……なんかこの銃弾、飛ぶ速度が遅くないですか?」


 弾幕シューティング的といえばいいのか、一弾一弾がやけに大きく、しかも飛ぶのが遅いので、目で軌道を確認してから十分に回避できる。


 しかも弾幕の飛び方に妙な既視感があり、ぶっちゃけて言うとミニゲームでの敵の砲撃パターンにそっくりだった。


 たぶん、火薬式の銃ではないんだろうなあ。

 なんだろうね、魔法の弾なのかな?


 異世界の技術はよく分からないね。


「あああ、全然あたんないー」

「うるさいな、集中できないだろ!」


 モタモタと飛ぶ銃弾にイラつきつつ、私の操る飛行ユニットはまっすぐ目的の敵機の直上に来た。


 レニャード様がさらに銃を発射し、飛行ユニットたちの動きを牽制する。


 そうこうするうちに、向こうからも撃ってきた。


 ミニゲームなら何回もやったし、回避余裕なんですよね。


 私が余裕をかましながら舵を切ると、そのすきをついて、敵が離陸を次々と開始した。


 いくら私がゲームで慣れているとはいえ、敵が六機同時はきつい。


「に、逃げますか?」

「しかし……」

「六人で撃たれたらいつか当たると思います!」

「……仕方がない、建物を盾にしながら時間を稼げ!」


 私は慌てて、手近な建物の裏に回った。


 両方から挟み撃ちにされるおそれがあったので、止まらずにどんどん進む。


 ジグザグに建物の隙間をぬい、上昇と下降を繰り返した。


 ある建物の横に回った瞬間、前から二機、後ろから二機飛び出てきて、もう少しで激突しそうになった。


 離脱しようにも、振りきれない。


 運転テクニックに差がありすぎる!


「ダメです、囲まれてます!」


 そうこうするうちに敵が撃ってきた。


 悲鳴をあげながら回避し、手近な敵機の真横につける。同士撃ち懸念で撃つのを控えてくれるんじゃないかと考えたが、すぐにおのれの馬鹿さ加減を呪うことになった。


 すぐ近くの敵機もまた撃ってきたからだ。


 あわわわわわ。死ぬ死ぬ!


 振り切ろうとしても球形の包囲陣がうまくできあがっており、お互いの射線を避けた位置につきつつ、こちらとはつかず離れずの距離をうまくキープされてしまっている。


 こりゃダメだわ。そのうち当たるわ。


 私は早々に諦めモードに入った。


 実は私、諦めが早いことにかけては定評がある。前世では人生すら早々に諦めた!

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