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Illusion
“――ようこそホテル・イリュージョンへ。”
“スタッフ一同、お客様のご利用を心より歓迎いたします。”
どこからか声が聞こえる。
それは、俺を落ち着ける為か。
それとも、心を壊しに来ているのか。
俺は、もう何度も同じところを巡っている。
出口に向かって歩いているはずなのに。
気が付けば、振出しに戻っているのだ。
何が起きているのか、全く理解できない。
いや、理解したくないのだ。
俺は。
俺は、この館に。
閉じ込められたとでもいうのか?
ふと、目の前に警備の人が現れた。
俺はすぐに出口への道を尋ねた。
その警備員は、俺の質問を受けて軽く笑った。
そして、ゆっくりと口を開く。
“お客様は、いつでもチェックアウトすることができますよ。もちろん、月が昇っている今でも。”
“しかし、この館から離れていただくことはできません。”
“……貴方様は、大事なお客様ですから。”