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黒騎士は自由に生きてみたい  作者: カルバリン
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第6話 黒騎士、ギルドで登録をする


「よかったよかった。剣だけはしっかりと定期的に綺麗にしないといざという時に折れたりするし、なにより切れ味が悪いと相手も長く苦しむから」


でも魔鉱石って人族の中では珍しいんだねぇ…長く生きてるけど知らない事の方が多いなぁ。


考えながら歩いてたら目的のギルドとやらに着いた。


意外と大きな建物だなぁ。ゴリさんが言うにはギルドとは冒険者が仕事を受ける為の建物って聞いたけど…。


建物の扉を開けると中には何人かの武装した人族が掲示板に張り出された紙を見て話をしたり、酒場のカウンターみたいな所で飲み物を飲みながらゲラゲラと笑ったりしてた。


「へぇ、これがギルドかぁ…ゴリさんから聞いた通りね!色んな人がいるみたい」


キョロキョロと周囲を見ていたら何故か皆が私に注目しているのに気が付いた。


え?私何かしたかな?


「……おい、あの美人はなんだ?すんげーエロいな…シャツがはち切れそうじゃねーか」


「赤髪に紅目なんてここらじゃ珍しいな…」


………ヒソヒソ話してるみたいだけど耳は良いから全部聞こえるんだよね。


ま、関係ないしさっさと用件を済ませよう!…と思って歩き出そうとしたら目の前にムキムキのいかにも歴戦の戦士を思わせる男が来て私の肩を抱いてきた。


「よぅねーちゃん!ここらじゃ見ねぇ顔だから余所者だろ?まずは俺に挨拶するのが流儀ってもんよ!俺はこのギルドでも上位の冒険者…Bランクのゲイリーだ」


ほあ!!酒臭い!しかも凄く馴れ馴れしいなぁ。いきなり肩を抱いてくるのはいけないと思います!


……でも、なんか有名な人っぽいし下手に揉めるのは避けたほうがいいのか…な?


「えっと…」


対応に困ってたら奥のほうから人が走ってくると肩を抱いてきたゲイリーって人を引き離してくれた。


「はいはい、酔っぱらいは向こうに行ってねー!これ以上セクハラすると……チョン切るゾ?」


「ちょ!悪かった!向こうに行くから!それだけは止めとこうな?エリー!」


猛ダッシュで逃げていくゲイリーさん…あ、コケた。

酔ってるのに走るからだよ。


「ごめんなさいねぇ、ウチのギルドって酒場みたいになってるからあなたみたいな美人が来たら絡まれるのよ…私はこのギルドで受付やってるエリーよ」


「私はフィリアって言います。……あ、所で…知り合いにギルドで宿を紹介してもらえ、と言われたんですが……」


「ならまだこの街に来たばかり?」


「つい先程商隊の方に送ってもらってこの街に来たんですよ」


「さっき?…確かこの街に寄るような商隊って暫くいなかったはずだけど…?…とりあえずプレートを出してね」


「…??」


プレート?


「え?もしかして冒険者登録してない?本当に?!」


「は、はい…してないです。最近まで魔族領で兵士として戦ってたので…」


ま、人族側じゃなくて魔族側で戦ってたけど。


「へ?フィリアさんは兵士だったの?」


「そうですよ、怪我で前線からは退いたのでもう兵士じゃないですけどね」


言いながらさっき発行してもらった身分証を渡す。


「あ、本当ですね!……フィリアさんみたいな人が兵士だったっていうのが想像出来ないからなぁ。…怪我で退役ですか…ならもしかしてお仕事を探したりは…?」


もしかして仕事を斡旋してくれるのかな?…でも、まずは泊まる場所を決めないと。


「仕事は探してますけど…まずは宿屋を紹介してもらえると助かりますね」


そう、流石に寝る場所が決まらないのはキツいからね…黒騎士時代は年中立ったままだったから。ベッドで寝たいと何年考え続けた事か……。


自由になったのに宿無し、夜営はもう避けたい。フカフカとか贅沢は言わないから普通のベッドで眠りたい。


「今なら登録するとギルド提携の宿屋に格安で泊まれますよ?安全、安心、ご飯も美味しいですよ?」


グイグイくるなぁ…別に冒険者なんて興味はないから登録したいとは思わないんだけど…


「…どうしても登録しないとダメ?別に冒険者やりたいとかは考えてないし」


「……喋り方はそっちが素のあなたね?今までの喋り方は何だか無理してるって感じでしたし!…という訳で打ち解けたから登録しましょう!大丈夫、登録してくれたら色んな特典があるから!ね!?」


…人の話聞いちゃいないし!……もう面倒だから登録しとこう。はやく宿も決めたいし。


「はぁ、あなたって話聞かないよね?ってよく言われるでしょ?」


「そうですね、昔は良く言われてましたよ…まぁ今じゃ私に意見してくるような度胸がある人が近くに居ないですからねぇ。こう見えて私って元Sクラスの凄腕冒険者だったんですよ?」


Sクラスの凄腕…イマイチ人族の基準が理解出来ないなぁ。

私が見た感じではエリーの強さは精々魔族の中でちょっと強い一般兵位の雰囲気しか感じられないのよね。


「とりあえずこれに必要事項を記入してくださいね!」


手渡された紙には名前、年齢、出身、得意な武器などを書き込む欄があったけど…年齢って正直に書いたらマズイよねぇ。


必要な事を書いたら次は金属のプレートに魔力を流す。

このプレートが冒険者の証らしく、最初に魔力を流した人の魔力波形を記憶するって話だったけどこれには驚いた。


だってこの技術は魔族にしか無かったはずの物だ。


……技術を流した魔族がいるのかも。


「…どうかしましたか?」


「いや、なんでもないよ。これで登録は終わり?」


早く宿を紹介してほしい。というか紹介してもらったらもうギルドには来ることも無いだろうし。


仕事は見つけないとだけどギルドに関わると面倒な事に巻き込まれそうな予感しかない。


「いいえ!最後にソフィアさんの実力を見る為に模擬戦を……」


「え?私って宿を紹介して貰うために登録したのに実力を測るの?」


「規則ですから」


この張り付けた笑顔…質問は受け付けないって雰囲気を出してるね…


仕方ない。さっさと終わらせよう。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


神はこのギルドを見捨てたりはしてなかった!


各ギルド支部対抗試合の連続敗北、魔族の大規模な侵略による国の有能な冒険者の引き抜きや怪我での引退、新たな登録者の減少……考えるだけでも嫌になる位このギルドはピンチだった。


減っていく給料に悩み、減っていく依頼に悩む。

毎日色々と対策はしてみたがイマイチ効果が無くて今日も受付でスカウトをしに行こうか悩んでいた時、その人は現れた。


入って来た瞬間に目を奪われた。


腰まで伸ばした赤髪を無造作に纏めてるのも、吸い込まれそうな深紅の瞳も、その辺の男性と並んでもひけを取らない身長にスラッとした体型……


「いや、それよりも…あの人の実力が…見れない」


私のスキル…観察眼はその人のステータスを視ることが出来るんだけど……彼女のステータスは全く見えなかった。


観察眼は自分より遥かに実力が上の場合見えないのは知ってたけど今までこんな事があったのはウチのギルドマスター位しかなかった…彼女がどこのギルドに所属してるかは知らないけどこれは駄目元で勧誘するしかない!



……まさかギルドに所属してないなんて思わなかった。

やっぱり神はこのギルドを見放してなかったのよ!


「ではちょっと準備してきますから」


フィリアさんには少し待ってもらってギルドマスターに報告しないといけないわ。


━━━━━━━━━━━━━━━━━


「…へぇ、エリーの観察眼で見えないのか」


「そうなんですよ、あんなのはマスター以来です。フィリアさんは元兵士だったらしいですよ?確か身分証には……所属先が載ってたんですが忘れちゃいましたね」


ギルドマスターの執務室に駆け込んだエリーに話を聞いていたのはメガネをかけた青年…このギルドのギルドマスターであるオルト=アルデバラン……オルトはエリーの話を聞きながらなぜエリーが執務室へ駆け込んできたのかを察して口を開く。


「…君がここに「それでですね、私が模擬戦をやろうかと思いまして…」


話を遮られたオルトだったが、いつもの事だと諦めている。


「本当に君は話を聞かないな。…どうせそうだろうと思ったがね……だけど、その模擬戦は私がやるよ。大体君は怪我で冒険者を退いたのを忘れてないか?」


「でも久しぶりに凄そうな人が来たんですよ!?戦いたいぃぃ…!」


「駄目だ。…とにかく、下で待たせてるんだろう?あまり長く待たせるものじゃないから行くとしよう」


さて、どんな人物だか気になるな。もし本当に強いのであれば助かるんだが………


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