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青春やり直し切符  作者: 春野夕立
第1章
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第2話 本物の古川 遥(ふるかわ はるか)



「これが夢なら…そうだ、さっさと

こんな夢を終わらせよう」


"カーンカーンカーンカーン"


電車が来ると告げる甲高い音が鳴る。


遮断機が降り、電車が迫る。


俺は踏切に入ろうと一歩を踏み出す。


その瞬間、音が消え何も聞こえなくなった。


俺はまだ飛び込んでいない。


「あ、あれ…」


目の前を見ると猛スピードで迫っていた

電車がピタリと止まり遮断機の赤い信号の

点滅も止まり、明らかに時間が止まっていた。



「なんなんだ…!時間が進んでたり止まったりっ!」



俺は拳を握り込み怒るように叫んだ。



『悲しい運命を終えたのに、今度は自ら

命を絶つのか?』



後ろから冷たい声色が聞こえ、振り返ると

そこには光るような白い人影が立っていた。



「な、なんだよ…は、はは。次は幻覚が見えてきた…俺は」


『頭がイかれた…とでも言うつもりか?』


冷たい声色は白い人影から発せられた

ものだった。


「は…?お前…なんで…」


『お前さんの言いたいことぐらい分かる。なんだお前は、なぜ俺の言うことが分かるのか、なぜ俺が生きているのか、』


「……!!なんか知ってるのか…!」


『私は…全てを創ったからな』


「創った…?神様とでも言うつもりか!」


『お前さんがそう呼びたいならそう呼ぶがいい』


何が神様だよ…お前が神様なら何故俺は

生まれて、憎まれて殺されなければならなかった!

好きで生まれたんじゃない。たった1人の男の欲で、俺は生まれて…憎まれて…最低の…人生を…


「なら神様よぉ…これはなんなんだ。夢か?それとも死ぬ間際に見てる幻想か何かか?」



『…そのどちらでも無い。これはお前さんの願いを

叶えただけだ』


「願い…?」


『お前さんは"誰も自分を知らない土地に行きたい"と夢を見ていただろう』


「…!!」


『だがお前さんはその夢を叶えられず、自分の責任ではない恨みを持たれ、実の母親に殺された。

つまり可哀想だったから夢を叶え、チャンスを与えたと言うことだ』



「…ぐっ…」



なにがチャンスだ…なんで今なんだ…!俺は今まで

何年も居場所が無くて、痛くて、寂しくて辛い思いをしてきた。誰にも頼る事が出来なくて…それに体に染み付いてる。あの地獄の日々の傷跡も…!


『ふむ、傷跡か…』


「お前…また俺の心を!」

『腕をまくって見なさい』


「…は…?」


俺は恐る恐る腕をまくると

そこには傷跡どころか何もない

綺麗な肌があった。捲るように言われた

腕には小学6年の時に母親に

タバコを押し付けられた火傷の跡が

あった筈なのだ。


「な…なんで…」


俺はもう反対の腕を足を見たりと

思い出せる分の傷を確認するも何処にも傷跡がない。


勿論、あの夜に包丁で複数回刺された腹の傷も。


『だから言っただろう。ここには前の

お前さんを知る人物はいない。

あるのは新しい人生と新しい家族だ』


「新しい人生…?家族?」


『あの地獄の日々はもう無い。この世界では前に殺されたのは

お前さんではなく他人、お前さんは本物の古川 遥だ』


『生きなさい』


神様とやらはそう言い残して消えた。


消えて数秒ぼうっとなり、ハッと気づくと

電車が走り去り、遮断機が鳴り止み

またいつもの雰囲気に戻っていた。



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