エフェメラル
初投稿です。
自分の作品を投稿してみたいという思いから投稿してみました。
かなりの駄文が始まりから終わりまでずっと続くので、暇潰しにもならないかもしれませんが、チラッとでも読んでいただけたら幸いです。
空が紅蓮の炎で焼かれたあの日。
殆どの人類が死に絶えたあの日。
俺はあの日を決して忘れはしない。
再びあの厄災が襲い、この星が滅びようとも…。
厄災が襲ったその日、俺は一家団欒の夕食を楽しんでいた。その席で姉は、明日大学の合格発表がある。もしも受かったらこれで夢に一歩近づける、と嬉しそうに話していた。今日でその夢は終わる、ということも知らずに。ジョークを言い合い、笑い合い、そんな一般的な日常の風景だった。
それから約10分後、俺がごちそうさま、と言ったと同時に、凄まじい轟音と人々の悲鳴が街に響きわたった。
何事かと思い、リビングの窓から外を見て俺は愕然とした。天を突かんばかりの巨大な火柱(?)が街の北端から上がり、少しずつこちらへ規模を拡大してきている。
破壊神だ。破壊神が降臨した。本気でそう思った。
俺達の家族は必死で街の地下シェルターへと向かった。その道中でも人の死というものがどんなに無残で、どんなに儚いものかを思い知らされた。
街が焼かれ、至るところで爆発が起き、人が木っ端微塵に吹き飛んで、人体のパーツがバラバラになったマネキンのようにゴロゴロ転がっている。まさに阿鼻叫喚の地獄絵図だ。
無事にシェルターについた俺達は、家族ごとに割り当てられている部屋へと入り、安堵のため息をついた。姉がしきりに咳き込んでいたのが気になったが、ひとまず安心だ、と備え付けの寝袋を手に取り、一夜を過ごした。
朝起きると、姉の咳がかなり酷くなり、ヒュー、ヒューと苦しそうに息をしていた。
父も母も俺も、パニック状態で、何かできることを探したが、結局何もできなかった。ただ、ただ横たわる姉の頭を撫でてあげることしかできなかった。
時が経つにつれ、姉の症状も段々と酷くなっていき、夕方頃には虫の息で、目も虚ろだった。必死に何かを訴えており、俺が姉の口に耳を近づけると、「電車が犬を散歩するぅ...」と繰り返していた。せん妄というやつだろう。姉はもうじき死ぬ。そう思うと今にも胸が引き裂かれそうだった。
そしてその日の夜、何が原因かわからぬまま、姉は眠るように息を引き取った。
ひとしきり泣いた後、父は姉の死体をブルーシートに包み、居住スペースの隣にある小さい遺体安置部屋に運んでいった。
その後は皆、無気力状態で、食事も喉を通らなかった。
それでも生きるためになんとか口に食料をねじ込み、飲み込む。この作業を何度も繰り返した。
それから何日かすると、居住部屋の中に、例えるならチーズとくさやを混ぜたような強烈な臭いが立ち込めた。姉の死体は腐敗してしまったらしい。どうやら安置部屋の冷房機能が故障してしまっていたみたいだ。
恐る恐る安置部屋に入ると、死体のどす黒い体液がブルーシートの隙間から流れ落ち、水溜まりを作っていた。俺はその光景と臭いに耐えかねて、嘔吐した。
何度も、何度も。
俺の目の前にあるのは大好きだった姉なのだ。そう自分に言い聞かせるが、無意味だった。
今、目の前にあるのは大好きだった姉ではなく、元々姉であったが、もう腐った肉塊。それでしかない。
俺に姉なんていたのだろうか?
そうとさえ思えてくる。
もう気が狂いそうだった。
涙が溢れ、止まらない。
心臓が早鐘を打ち、浅い呼吸を何度も繰り返す。
そんな俺の姿を見た母が、俺を抱きしめてくれた。強く、ぎゅっと。
母も娘が死んだという事実が重くのしかかっているはずだ。その証拠に、俺を抱き締めている両腕が小刻みに震えている。
腕の中の俺に向かって、「大丈夫、大丈夫だから」と自分にも言い聞かせるように何度も何度も唱えていた。
俺は、姉を姉ではないと思ってしまったことへの罪悪感と、抱きしめられている安心感から、声を上げて泣いた。
次の朝、シェルターから出ることになった。
2週間ぶりに外に出られる。
シェルターから出てみると、街は跡形もなく消え去り、全てが焦土と化していた。
石ころ一つ見当たらない。
かつて一番栄えていた街の面影はどこにもなく、全てが死に絶えていた。
すっかりやつれてしまった父の、かすれた「行こう。」という声で、俺達は歩き出した。行く宛もなく、ただ歩いた。
これからどこに向かうんだろう、どこに向かえばいいんだろう。
植物も建物の影もないため、直に照りつける太陽が、なんとも憎らしく思えた。
最後までお読みいただき本当にありがとうございます。
それでは、お目汚し大変失礼致しました。