思ったより異世界転移は悪いものじゃないらしい
暇つぶしにどうぞ
異世界転生もしくは異世界転移というのを知っているだろうか?
その言葉通り、今いる世界から別世界へ死んで行ったり、生きたまま行ったりすることである。
と、わかってる風に言ってみたが俺自身そこまで異世界転生に詳しい訳ではない。上記の知識もクラスのオタクの一人に興奮されながら教えられたものだ。
まぁ、突然なんでそんなことを言ったかというと。
異世界転移をした。
ただそれだけである。
なにを言いたいのかわからねぇだろうが、俺もわからねぇ。
だけど、一つ言えるのは転移したのが俺一人という訳じゃなく、クラスで授業を受けていた奴等全員だということだ。ぶっちゃけ俺だけ転移したわけじゃないとわかったときは安心感がハンパなかった。
その時のことを描写すると、HR中に突然足元から魔法陣?らしきものが現れ一瞬でクラスを覆ったと思ったら次の瞬間には神殿のような場所にいた。
そして、いかにも王女様っぽい格好をした少女に「この世界をお救いください、勇者様!」と言われた、それだけである。
そして、なんやかんやで話が進んでいき次の日には俺達を召喚した国の王様に会い、自分達がチート能力を持っていることを教えられ、魔王を倒さなければ帰れないことを教えられ、そしてなんやかんやの流れでこの世界を救うことになった訳である。なんやかんや多いな。
ちなみにこれはちょうど一年前の話だ。
そして、今現在俺達は大きく分けて三つのグループに分かれて行動している。
一つ目は、世界の敵である魔王という存在を倒す勇者チーム。
このチームは早く元の世界に帰りたい奴等やこの世界を救いたいというクラスのトップカースト連中で構成され、レベルも戦闘技術も平均的に三つのチームでもっとも高いチームである。
二つ目は、王国と行動せず、個人で冒険者などをして行動している自由チーム。
このチームは前の世界でオタクと呼ばれていた奴等が多かった。オタクの友達曰く、こういう召喚をする国はだいたい腐ってるかららしい。
三つ目は、チートが生産職だったり戦闘向きじゃなかった奴等が集まった王都守護チームである。
このチームは比較的に女子が多く、元の世界の知識を世界を壊さない程度で使い、国民の生活を良くしたり、時々襲ってくる弱いモンスターの団体を倒すことを主体としている。
んで、俺ーー上矢時雨は何処に属しているかというと三つの王都守護チームだったりする。
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「もっと働きなさい。怠け勇者」
「断るわ、腹黒王女」
王城のとある一室。転移してきた奴等のために王国が用意した部屋のなかで俺は目の前の王女と相対していた。
王女はそんな俺の言葉にやれやれと呆れたように肩を竦める。
この王女、初めて会った時は純粋そうな態度をだったのだがだんだん仮面を外していき、もはや俺に関してはこんな態度を取るようになった。
「あのですねぇ、他の勇者様はなんであれ積極的に動いているのに貴方だけこんなダラダラしてていいと思ってるんですか?アホなんですか、死ぬんですか?」
「誰がアホだ、そして死なねぇわバカ。いいだろ別に、他の勇者が頑張ってるんだから俺一人ぐらいダラダラしても」
「いい訳ないでしょう、現在の王国は魔族や活発化した魔物の対応に追われあまりお金がないんです。そう、それこそなにもしてない人を養うのを断りたいぐらいに。そして、誰がバカですか」
「お前だ、お前。とは言っても俺だって王都にやってきた竜を退治したりしたじゃん。ここの大臣や王様だって「ははは、これはこれは竜殺し殿、貴方さえいればこの王都は安心ですな。些細なことなどは使用人に任せ、貴方はゆっくりお過ごしください」って言ってたぞ」
「大臣やお父様が言ったことは無視してください。確かに竜を退治したことは感謝してますがそれはもう三ヶ月も前のことでしょう!いい加減王都の警備だったり、なんなりしてください!そして、一国の王女に対しバカとはなんですか!」
フシャーとこちらを威嚇してくる王女。ホントこいつ最初の清楚なイメージを何処かに捨ててきたようだ。
「まぁまぁ、シャーロット様落ち着いてください。確かに最近の彼は何もしてませんが、彼がいるおかげで今の王都は安定してるといっても過言じゃありません。なのでもう少しだけゆっくりさせてあげませんか?」
使用人の美しい少女がそう言いながら紅茶を用意する。
ちなみに彼女ーー相沢遥香も異世界転移したクラスメイトであり、幼馴染でもある。なぜ使用人の格好をしているかというと、彼女の能力が誰かに従い奉仕する能力だからだ。
具体的に言うと誰かに奉仕している時に限り自身の性能を大幅に上昇。通常の10倍以上の力や速度を持ち、様々な書類の処理能力や戦闘能力でさえもかなりのものになる。
まさに使える存在としては彼女以上の存在はいないだろう。まぁ、仕えたら発動するっていうことなので別に使用人の服装ーーメイド服を着る必要はないのだが、彼女自身こういうのが好きらしい。
「遥香、それはそうなんですが」
「まあ、シャーロット様の言うこともわかります。時雨、貴方も今すぐとは言わないけど少しは働いた方がいいわよ。」
「むぅ、と言っても勇者チームは順調に魔王城に近づいているし、自由チームの全員の場所も把握できているし、王都守護チームも大した問題はないじゃん。ぶっちゃけそこのアホ王女の言うとおり警備ぐらいしかやることがないだろ、そして働きたくない」
「アホじゃありません!」
「はいはい、シャーロット様どうどう。時雨もシャーロット様を弄らない。それにそう言うだろうと思って王様と相談していい物をもってきました。はい、これをどうぞ」
遥香は何処からか取り出した二枚の紙を俺と王女に渡す。
なになに、勇者シグレに伯爵の地位を与えアドリミアの領主に任命する。王女と共にこの地を治め、より良くすること。............って
「はぁ!?あ、アドリミアってあのアドリミア!?いたる所にA級以上のモンスターや魔族がいて、魔王城より恐ろしいともっぱら評判なあのアドリミア!?そこを治めろって!?」
「ど、どういうことですか!?私も知りませんよ!?」
慌てふためく俺等を見て遥香はクスリと笑い
「サプライズです、シャーロット様も最近忙しそうでしたし休みも兼ねて行ってこいとのことです」
「休めませんよ!むしろ永遠に休んでしまいますよ!?」
「安心してください、私も一緒に参りますので。それに時雨もいるから大丈夫でしょう。」
「いやいや、まてまて。俺が居なくなったら王都の守護はどうするんだよ!?自分で言うのもなんだが今の王都で一番強いのは俺だろ!?」
「それも安心していいわよ、実は奏が帰ってきてしばらくは王都でのんびりするからついでに守護も請け負ってくれるって。彼女も世界に数人しかいないSランク冒険者だから問題ないでしょう」
用意周到な遥香に口をポカンと開ける。隣の王女も同じような顔をしているだろう。
「お前実は結構前からこれ準備してたろ」
「たった三ヶ月前からよ」
「竜退治したときじゃん!悪魔かお前!!!」
「悪魔で結構、シャーロット様も出発は3日後ですので用意しといてくださいね。」
「えぇ!?早すぎませんか!?」
「王命ですので拒否権はありませんよー。さぁ、楽しい楽しい領主生活の始まりです!」
「「楽しくないわ(です)!!!」」
この後、なんやかんや言っても領主生活を始めることになり古代竜を討伐したり、エルフと交渉したり、アホ王女と恋人同士になったりとまぁ、いろいろなことが起こるのだが、一つだけ言えることがある。
思ったよりも異世界転移は悪いものじゃないらしい。
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