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ギルド・クラッシャー  作者: 森田季節


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8 オーク略奪部隊事件

 その州では半年ほど前からオークの略奪行為が続いていた。

 連中は神出鬼没で、街道を進んでいる商人達を狙っては金目のものを巻き上げていた。


 商人側もできるだけ安全な道を行こうとしはするが、どの街道にも薄暗いところも狭いところもある。

 しかも、夜だろうと昼だろうとオーク達は突然襲いかかってくる。そのうえ、数も多いのでなかなか被害は減ってはいなかった。


 商人組合などもギルドに何度もかけあっているが、敵が組織的ということでなかなか対応ができていないというのが実情であるようだった。

 三体や四体のオークならどうにかなっても、三十体などになると、そうそうこれを打ち負かすことはできない。


 商人が単独で依頼を出すことはあったが、大集団を防ぐための冒険者となると、かなりの額になるため、割に合わない。

 結果、冒険者を雇わない商人のほうが圧倒的に多くなり、これも被害を減らせない要因になっていた。


 しかし、ついに州都ギルドも本格的に動く気になったのだろうか。

 州都にあるギルドの大会議室にて、管轄下のギルド職員の多くを集めてのオーク対策会議が開かれることになった。日本で言えば、県の代表者が集まって、県の対策会議をするようなものだ。


 とくに自分の所属するギルドの範囲内で被害を受けているギルド職員は、早急なオーク討伐部隊の編制を願い出ていた。


「累積している被害額は多額にのぼりますし、これ以上、街道で事件が起これば交易に違うルートを利用されることになります! そうなれば、カルティアの町は大幅に衰退してしまいます……」


 カルティアという町のギルド代表は熱く討伐隊をギルドで出すように要請した。


 次のノーシアという町のギルド代表も同様に討伐部隊を訴えた。


「これまでも護衛などは我がギルド単独で依頼を出してきましたが、まったく追いついていません。それに相手は数十人で略奪に及ぶこともあります。州都規模での大きな対策が必須かと! オークの根城を掃討しないときりがありません!」


 さすがにすべての商人が護衛を雇うというのは現実的ではないし、数人の冒険者の護衛では集団の犯人を止めるのも限界がある。状況は個別具体的な対策の範囲をとっくに超えている、ギルドの人間もそう認識していた。

 そのほかにも――


「これなら腰の重い王国軍に討伐を願い出たほうが早くすみそうなほどです。数十人単位の冒険者を集めてください!」

 とか、

「町の住民のギルドに対する信頼も低下しています。毅然とした対応を!」

 といった声がたて続けに出た。


 その場に居合わせた商人組合の代表者も言うまでもなく、オーク打倒の兵を作ってほしいと言った。


「我々商人が護衛の範囲を超えて個別に兵士を募ることは王国の法で禁止されていることは知っております。それは反乱を起こす隠れ蓑になるからというのもよくわかります。しかし、こうもギルドも軍隊も動かないのであれば、商人達で軍隊を雇わないと仕事を続けることができないです!」


 商人の言葉に多くの会議参加者達もうなずいていた。


 最後に、州都ギルドの問題担当者の職員が立ち上がった。


 州都ギルドでもナンバー3の大物、ライタールという男だ。年齢は五十歳ほどで、将来的にはこの州都ギルドのトップぐらいにまでは上り詰めると言われている。


「皆様のご意見は強く胸に受け止めました。こんなにも対策が遅れてしまったことは、州都ギルドとしても遺憾です。しかし、本日の会議を一つの起点としてオーク対策に動いていくことができればと思っております」


 ライタールの態度にはさすがに威厳がある。会議参加者達も興味深そうに聞いていた。


「しかし、ここで参考になるグラフがあります。これは過去の違う州の記録なのですが」


 ライタールが参考資料を配る。

 それはオークの略奪部隊が起こした事件の件数のグラフだった。ちなみに場所は隣の州だ。


「これが今回のオーク達と同じかは判断がつきませんが、連中は半年弱ほどその地域で事件を起こした後、ぱたりと何もしなくなる。急に心を入れ替えたとは思えませんから、これは活動の場を移したのでしょうな」


 会議の場から「こんな記録があったのか」と声が上がる。


 たしかに、ほかの州のデータまで集めようとしていた者は会議の場にほかにいなかった。


「つまり、もう少し耐えしのげば連中も場所を移す可能性は十分にあります。その理由も説明ができます」


 ライタールは話を続けた。


「そもそも根城が固定化してしまえば、そこから動くことができないので、集団は簡単に壊滅させられてしまいますからね。奴らだって永遠に討伐部隊がやってこないとは考えてないはずです。となると、潮時を見て、動くはずです。もう半年です。そろそろ、その時期が来ているかと」


「それはあまりに楽観論では!」


 反対意見が上がる。


「もちろん、前例があてはまると決まっているわけではありません。ですが、兆候はあります。この州の事件もこの一か月は事件の範囲は以前より狭いんです。つまり、そろそろ動く準備をしている可能性があるのではないかと」


 また新しい参考資料が配られる。

 たしかに活動範囲は徐々に狭くなっているのだ。


「そこで提案なのですが、事件がある地域に護衛の冒険者を雇う求人を多めに出して、ひと月ほど様子を見るというのはどうでしょう? 討伐部隊を一から編制する時間を考えると、結局連中に逃げられるリスクも高いかと思います。それに大規模戦闘だと死者も多数出る」


 こう言われると反対意見も下火になってくる。


「ここは守りを固めるべきかと思うのです。たしかにオークが憎いのはわかります。しかし、オークを殺すために、冒険者の人命を多く損なうべきではない」


 人命を持ち出すと、多くの人間がうなずいた。


「守りに徹することが、一番、人的被害も少なくてすみ、コストもあまりかけずに収束に向かわせることができる。いかがでしょうか? あと、被害が現状も出ている地域に関しては私が直接視察に訪れる予定です」


 ことさら否定するような意見も出ず、州都ギルドの方針におおむね従うということで議論は落ち着いた。


 これがあまり信頼されてない職員なら、話は違ったかもしれない。だが、ライタールの言葉なら信じてもいいのではという空気が起こっていた。


「このような詳細なデータを集めていたとは驚きでした」

 会議終了前にそんな感想が出た。


「州都ギルドは自分の州だけでなく、ほかの州、王国全体を見る目を持っていないといけませんからね。これぐらいは当然のことです」


 ライタールは毅然とした態度で答えた。


 会議終了後、参加者達は参考資料の精密さに驚いたという話をしていた。


「まさか、こうもオークの活動をわかりやすく示したグラフなど過去にあったでしょうか」

「やはり、州都ギルドともなると、視野も広いですわね」

「これまで漠然とオークがいろんなところで悪さをしていると感じていたが、それにもちゃんと傾向があるとは」

「こういうデータがあれば、ギルドの依頼の質も向上していくと思いますわ」


「これをライタール殿が作成したとすると、やはり大物と言わざるをえませんな」

「噂では王都のギルド本部からお呼びがかかるかもしれないとか」

「しかも、わざわざ視察に出向いて対策を考えもすると言っているわけですから、州都ギルドから一歩も出ずに威張っているのとも違う」

「そうですわね、現場主義でやってもらえるのはこちらとしてもありがたいですわ」


 オークの問題は依然として残っているとはいえ、結果的にライタールは株をあげたことになった。


 少しも感情的にもならず、また対応が遅いことを責められてあたふたすることもない。自分の立場と職務をわきまえて、合理的な対応をした。まさにギルドの上に立つ者として正しい姿と言えた。



 ライタールは三日後、予定通り、辺境の町に出向いて視察を行った。


 まず地元ギルドと協議をした。地元ギルドもライタールが来てくれて、安心したようだった。

 そのあと、ライタールは夕方には事件があった街道にまでわざわざ、自分の数名の部下だけを連れて足を運んだのだった。


 そこは街道ではあったものの、オークがよく出るということでかなりさびれていて、歩く者の姿もなかった。


 その街道そばの木から出てくるものがあった。


 オークだった。

 オークといっても、身なりはかなりいい。腕には宝石のたぐいをいくつもつけていた。


 どう考えても、略奪部隊の、それもかなり地位の高い者だった。


※今回から時系列的にギルド・クラッシャーが活動している時間に戻ります。

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