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中途半端で何が悪いっ!~ネタキャラ死神による魂の協奏曲~  作者: 八坂
第一章 ネタキャラはネタキャラでしかないのか!?
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ログアウト~自己紹介

「それじゃあ、自己紹介をば。」


五人が円を描くように座り、まずジオが立ち上がる。


「ジオです。死神です。」


そういってジオは巨大鎌を取り出してポーズをとった。


「中二病をこじらせるとこうなりますね。」


ゼルの余計な解説が入ってくる。


「うるせー。えーとメインは鎌と死魔法。その他死神イメージな技のあるスキルをちょこちょこと。戦闘時は鎧を着ますけど、普段はこの服です。」


パチパチパチパチ


ミサがうさみみをぴょこっとさせながら手を叩く。


「じゃあ、次は俺だな。」

「誘拐犯!」


ゼルが立ち上がるなり、ミサが指をさして叫ぶ。


「ちげーし。俺はゼル、ゼルギウスってのが名前だけど皆ゼルって呼んでる。みての通り聖騎士っぽいスキル振りをしてる。メインは剣と神聖魔法。ジオみたいなこだわりはないけど、手伝いが必要なときはいつでも呼んでくれ、人の助けになるのが聖騎士の役目だからな。」

「やや中二病はいってますね。それに呼んだらまたセクハラされそうです。」


うさみみの片方がしなだれる。一応手を叩くミサ。


「しねーし。大体ありゃ不可抗りょ」

「はいはい、次私ー」


ゼルの言葉を遮ってテンテンがたった。


「テンテンだよ。メインはこの拳。自慢の拳。この拳で料理もします。」

「え、料理?拳で?」


うさみみをピコピコさせてミサが目を丸くした。気になったのは拳で料理というとこだったらしいが。


「うん。一応料理スキルはレベル150だよ。」

「おお…闘うシェフ…」

「それ以上はだめだよ。」

「はい。」


最後はモリーティアが立ち上がる。


「モリーティアです。生産特化です。このメンバーの中だと唯一の特化になるのかな?」


薄い胸を張って上体を後ろにそらすモリーティア。


「通称モリモリさんです。何か道具や武器防具に困ったら相談するといいよ」


と、横からジオ。


「ちがっ、ティアって呼んで!」

「わかりました!何か困ったら相談させてもらいますね!モリモリさん!」


うさみみをピンと張ってにこっとモリーティアに笑いかけるミサ。


 わかってらっしゃる、とジオがニヤリとしてうさみみ幼女を見つめると、ミサもまたニヤリと笑って、お互いにくっくっくと肩で笑い始めた。


「ああああ!もう!なんでだよー、なんでだよー!くっそう、くっそーう!」

「くそ、なんて女の子がはしたないですよ?モリモリさん」


地団太を踏み始めたモリーティアにテンテンが優しく、止めを刺す。


「うわぁぁぁぁぁん」


そのままモリーティアは両手をあげて走り去っていってしまった。


「あの、大丈夫なんですか?」


 それを心配そうに見送るミサ。

けれど、ジオ達三人は生暖かい目線でモリーティアの後姿を見送っている。


「大丈夫、一周してもどってくるから。つまずいて頭でも打たない限り死なないし。」


テンテンはチャーハンを作り始め、ゼルは触媒の数量チェックを始めていた。

ミサの疑問に答えたのはジオで、こちらも何食わぬ顔でめがねのレンズをふきふきしている。


「えぇっ、大丈夫なんですか!?つまずいたら死んじゃうって事ですよね!?」

「あはは…まぁ、大丈夫だよ。」

「えぇ…」


モリーティアが走り去った方とジオ達を何度も見比べながら、やはり迎えにいったほうがよいのではないかと思案するミサ。うさみみも少ししおれている。


 ジオ達が大丈夫だといった理由は、モリーティアの事をよくしっているからだ。

モリーティアの作っていたものの事も。


「さて、僕らはちょっと前にログアウトした人を待っているんだ。時間の流れについてはミサさんもしっているよね?」

「はい!」

「というわけで、ログアウトした人は2時間後にもどるっていったんだけど…」

「なるほど、2時間か、もしくは…6日くらいかな?」

「話が早くて助かるよ。2時間ぴったりで戻る保障もないからもう少し猶予もちたいとこだけど、とりああえず一週間まとうって思ってて。」


ミサはうんうんとうなずきながらジオの話にうさみみを傾けている。文字通り、耳をジオ側に傾けている。


「もし時間がゲームの通りなら一週間ここで過ごしてもリアルじゃ3時間のはずだから、とりあえず俺はログアウトしないことにしようと思ってるんだけど…」


ちら、とジオがゼルとテンテンに目線を送る。その言葉に二人はうなずいた。


「で、よかったらミサさんも一緒に行動しない?畑にいくならゼル…いや、テンテンさんもついていってくれると思うから。」

「ほんとですか!?」


ぱっと目を輝かせたミサが中華なべを振っているテンテンに視線を送った。


「いいよー」


片手で鍋を振りながらOKのジェスチャーをしてくれるテンテン。


「やった!」


両足でジャンプして喜びを表現しているミサ。

 中身はどうあれ、見た目は完全に子供であるから、その様子は子供がはしゃいでいるようで微笑ましい。

本当にうさぎのようにぴょこぴょこ跳ね回るミサ。

そこへ、どんよりとした空気を纏ったモリーティアが帰ってきた。


「ジオ…つか…れた…」


モリーティアはそのまま地面へと突っ伏した。


「モリモリさん、スタミナないもんね。」

「スタミナどころか、HPもナイデスヨ」


苦笑してモリーティアを覗き込むジオに、モリーティアは地面に頭をつけたまま応える。


「転ぶと死ぬなんて、昔のゲームみたいだね。」

「それは言わないお約束。」


上体だけを起こしてモリーティアがジオの唇の前に人差し指を置いて、「しー」とする。


「ちょっ」


 突然の事にジオは後ずさってしまう。目の前にあるのはアバターとはいえ、厳選された整った顔であるし、それはその人の理想とはいえ、リアルでは普通にお目にかかれないほどの美形なのだ。それがウィンクでもするかのように、可愛いポーズを取れば誰であっても、どきっとしてしまうのも仕方の無いことだ。


「お、夫婦漫才だー」


そこへテンテンがニヤニヤしながらチャーハンの皿をもってきた。


「ほれ、おとっつぁん、おっかさん、出来立てはうまいぜー」

「誰がおとっつぁんだ。こんな子を育てた覚えはない!」

「すまないねぇ、テンテンいつもいつも、あたいがこんなじゃなければねぇごほごほ」

「いいってことよ、おっかさん!」


モリーティアの行動に顔を紅潮させていたジオを尻目に、モリーティアとテンテンの寸劇が始まっていた。


「はぁ…とりあえずいただきます。」


それから、五人でテンテンのチャーハンを食べながらこれからのことを話す。


「とりあえず、食料を確保してと…寝床はどうする?」


 ジオは当面、ログアウトしない方針で、ほかの四人の意思を確認し、それからまずは衣食住をどうするかを切り出した。


「んー、当面うち使う?ちょっとどうなってるか見に行かないと、って思ってたし。」

「え、モリモリさん!家あるんですか!?」


モリーティアの話にミサがすぐさま食いつく。


「凄い!ボク、家欲しいなぁって思ってたけど、栽培マンじゃ中々利益でなくて!」

「あはは…まぁ、これ食べ終わったら皆で行ってみようよ。」


モリーティアの提案にほかの4人もうなずく。


「おー、そういえばクララちゃんどうなってる?」


 ゼルが思い出したように言う。

クララとはモリーティアの家に設置してあるNPCの名前で、ゼルが設置料金からキャラメイクまで手がけた、曰く「俺の嫁」ということらしい。

自分の嫁を他人の家においておくのはどうなんだ、と思うジオだったが、そこは突っ込まない。

家自体が法外な値段であるし、家主であるモリーティアもまたNPC設置に好意的だったからだ。

何しろNPCは仮の倉庫にしたり、放置露店なんかもできる代物だが、そこそこ値の張る代物だったから、これ幸いとゼルに好きなようにやらせていたのである。


「幼女?」


クララの説明を受けたミサの第一声。


「ちがーーう!俺より顔半分くらい背が低くて、スタイルは普通よりいいくらいのやや控えめ設定。そして俺の事はご主人様とか旦那様とか呼んでくれる、超可愛いNPCなのだ!」


 後ろ半分はゼルの妄想である。

ゲーム時の家設置NPCは喋らないので、ご主人様、とか旦那様、とかいうのはゼルの妄想である。


「まぁ、クララはもう私の嫁だけどね。」

「なにぃっ!?…ね、ねとられたあああ!」


 モリーティアがにやりと笑う。

それもまぁ、妄想ではあるが、むしろ家主であるモリーティアに傅くのは、至極当たり前の事だろうとジオは思う。


 因みにそのクララの名前の由来は、ゼルが言うには昔の某アニメにでてきた幼女兼お姉さんからクランとつけたかったというのだが、一応家に設置するものであるから、家主であるモリーティアも口を出してきた

モリーティアいわく、ゼルの意見をそのまま通すのはなんかいやなので、倉庫の倉にかけて、クラクラとしたかったかが、折衷案でクララとなった、らしい。


「よし、じゃあいこっかー!」


全員がチャーハンを食べ終わったのを確認して、モリーティアが先頭をきって歩き出した。

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