虚空の言葉
「コピーが勝つか、コピーの欠片が勝つか……」
何もないその場所で、胡坐をかいたその人物はクツクツと笑っていた。
「ああ、でもなぁ、あれは何だかおかしな方向にいっちゃってるなぁ……」
虚空をピンと立てた指でなぞる。
「こっちは大体思い通り。けど、どうだろう? なんかあいつらナチュラルに越えてってるし。欠片の癖に……」
反対側の指を、こちらは折って一瞬躊躇って、また虚空をなぞった。
「大仰な芝居を打ったけど、人選間違えたかなぁ。もしかすると、欠片側につくかもしれない。まぁ、でもそれならそれで面白いけれど――」
今度は立ち上がって、別の虚空をなぞる。
「最初のはたまたまからの思い付きだったんだけど、でも面白いようにはなってるかな? でもそうするとフェアじゃない気もするけど、元々差があるからそんなもんかな? 量産品だけでも与えておくといいだろうか?」
腕組みをして顎をさするように手を動かす。
「ここまでは予想通りだけど、あれはよくない。もし、あれが――」
ふとそこで動きが止まる。
突如としてその空間にけたたましく音が鳴り響いた。
「あれ、これまずいんじゃね?」
慌てたように虚空をなぞっていくと、音が鳴り止んだ。
「あー……」
虚空で指を止めて、後ろ手に頭を掻き毟った。
「厄介な事になるかもなぁ、どこだ?」
両手を虚空に添えて、せわしなく指を動かし始める。
それは規則正しく、一定のリズムに乗って動いていくから、旋律を奏でているようにすら見える。
「ち、見つからない……」
舌打ちしてぼやくと共に、その指の動きはぴたりと止まってしまっていた。
「仕方ないか……」
忌々しそうに呟くが、その口角はニタリと意味ありげな笑みを零していた。
次の瞬間には、そこには何もなく、誰もいない、ただの空間となる。
どれくらい広いのか、あるいは狭いのか、それすらもわからないそこは、主を失うと、音も無く崩れ去って消えていった――




