閑話―本の虫、モリーティア―
ミサ、スティーブと共に自宅へと戻ったモリーティアは、部屋に入るなり本をあさり始める。
クララが誘拐された可能性が高いというのに、またしても自分は何も出来ない。
ジオやゼル、テンテン達が必死に探しているのに、こうやってまた自分は待つだけなのか。
――そんなのはもういやだ
歯噛みするように本を漁っているモリーティアを、ミサもスティーブも心配そうな面持ちで見つめている。
何でもいい、このどうしようもない自分の状況を打破するものは何かないか、と本を探し続けるモリーティア。勿論、そんな都合の良いものが都合よく自分の部屋にあるわけなどないのに。
本のタイトルを見ては、「違う、これも違う」と投げ捨てて、積まれていた本をあらかた崩し、次は本棚の本を調べ始める。
本来ならどれもこれも自分の暇つぶし用に買った本だったり、大聖堂図書館から借りてきた本だったりするのだから、そこにあるのは自分の興味のある本しかない。それなのに、何かにとりつかれたように本を漁っていく。
そのうち本棚の上に積まれていた本がドサドサと落ちてきた。
「ぎゃっ」
そのうちの一冊がモリーティアの額にクリーンヒットして、思わずうめき声を上げたモリーティアがもんどりうって倒れる。
ミサやスティーブにしてみれば、それはダメージのうちに入らないのだが、モリーティアにかかれば大ダメージだ。
「~~っ!」
しばらく床で痛みに悶えていたモリーティアだったが、ようやく痛みが引くと、忌々しげに落ちてきた本を見た。
“世界武器大全~イモルトレからテスイシュまで~”
モリーティアの記憶にない本だった。テスイシュがタイトルにあるあたり、ジオが持ち込んだものか。
タイトルにあるイモルトレとは、テスイシュと対を成す誕生や生命を司る神の事だ。大聖堂がその元締めとなっている“聖堂”や“騎士団”の象徴ともなっている。
設定上、闇鬼と聖堂や騎士団の仲はよくないことになっているが、プレイヤーにとってはスキル成長やアイテムをもらうためのコミュニティであるから、プレイヤー同士がその枠にしばられることは滅多にない。
時折、PvPなどの大会においてそれを示唆し、あたかも宿命のライバルであるかのようなロールプレイをするプレイヤーもいたりした。
コミュニティは他にもゼルの所属する“聖堂”、モリーティアの所属する“ものづくり大学”、テンテンが所属する”宣夜”、ミサの所属する”ファーム”など、いつもの面子の所属だけをとっても多岐に渡る。
それぞれのコミュニティには象徴となる神や英雄と呼ばれる人物、または考え方や理論などが存在する。
それはさておき、モリーティアは自分の頭を直撃したその本を取って中を読んでみる。
本には、イモルトレとテスイシュが生まれ、世界に闇と光が出現し、それが交じり合ってこの世界を創り、その時に生まれたイモルトレとテスイシュの加護を受けた武具についての神話的説明が書かれている。
説明や材料の記述こそあるが、作り方までは書いていない。
一旦本を閉じて、これまでと同じように放り投げようとして、一瞬モリーティアは考え直す。
そして再び本を開いた。
――これらの武具があるならば、ジオ達の役に立つのではないか?
果たして本当にそんな武具が存在するかはわからない。けれど、その記述のある本が存在するという事は、その可能性はなくはない。
しかしそんな武器や防具があるなどという話を聞いた事もない。
――龍人の都市だって、これまで名前が出てきたのは本だけだった。
ページをめくるモリーティア。そして見つける。見つけてしまった。
そのページには龍人の都市の滅亡の記述と共に、あの紋様の指輪――ゼルが拾った指輪の記述があった。
それからモリーティアはイモルトレとテスイシュ、そして世界に関する記述のある本を探して読み始める。
部屋の隅では、ミサが足をぶらぶらさせて本にかじりつくモリーティアの様子を退屈そうに眺めていた。時々、そこら中に落ちている本を手にとって読んでみるものの、よくわからなくて欠伸が出てしまう。
そんな時に限って、偶然スティーブが部屋にやってきて、欠伸をしているミサをにこやかにみていた。さすがにそんな気の抜けた場面をみられると、ミサも恥ずかしくて少し顔を紅くして俯く。
そしてまたスティーブは幸福そうな笑顔を浮かべるのであった。
昼夜を徹してモリーティアは本を読み続ける。それがまるで自分に与えられた使命でもあるかのように。
だが、これといった有益な情報を得られぬまま、モリーティア達は最悪の報を聞くことになる――
いつもお読みいただきまして有難うございます。現在第三章を試行錯誤中です。ただでさえ進みが遅めなのに第三章はボリュームありそうな予感がしています。
今週中には三章一話まで漕ぎ着けたいと思っています。宜しくお願いします。




