表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中途半端で何が悪いっ!~ネタキャラ死神による魂の協奏曲~  作者: 八坂
第一章 ネタキャラはネタキャラでしかないのか!?
11/77

騒動 2

「満漢全席作っちゃうよ!」


 テンテンが嬉々として台所に向かった。

ここはモリーティアの豪邸、ゆったりとしたリビングにはジオを始めとして、モリーティア、ゼル、ミサがふかふかのソファに座ってくつろいでいる。


「ひでぇ、ほんとひでぇ」

「変態にはふさわしい末路です。」


 ゼルの呟きにミサがぷんすかしてそっぽを向く。

ミサが使ったのは棍棒技の一つ、ビッグピコピコハンマー。

ダメージはほとんどないが、確実に相手を気絶させてしまう技だ。

それは棍棒技の中でも上位に位置する技だから、なんのかんのといってもミサの棍棒スキルの高さが窺えるというものだ。


「まぁまぁ、変態紳士にはほんとふさわしい末路だと思うよ?」

「ジオ!?」

「そうですよねー、ジオさん。」


ニコリと微笑むミサだったが、それに対してゼルは眉間にしわを寄せて睨む。


「まさか、親友に裏切られるとわ!」

「俺に変態紳士の親友などいない!」


 ぐぬぬとするゼルと、済ましたジオがにらみ合う。

その様子にモリーティアは苦笑して、ミサに視線を移す。

ミサの顔はまだ赤い。

後ろからゼルに押し倒されて、あられもない格好をさらした事をまだ気にしているようだった。

見た目は幼女とはいえ、彼女の自己申告によれば中身は大人。

あの体勢がもたらす意味を理解していると考えてよいだろう。


 たしかに、あの体勢はちょっと…と思うモリーティアだったが、蒸し返すのはミサにもゼルにもよくないんじゃないかな、と思って、ただ苦笑するだけだ。


「ゼル、お前今度はミサちゃんにどんな変態行為を働いたんだよ?」

「おいおい、ジオ。俺の好みは幼女じゃない、幼女に興味はねぇよ!」

「あー!ひどいんだ!。聞いてくださいよ、ジオさん。ゼルさんったら無抵抗をいい事に私にあんな事やこんな事を!」

「ちょまっ!」

「なんて酷いやつなんだ、ゼルは!いいか、ゼル。ロリータにコンプレックスを抱くのは百歩譲っていいだろう。けれど、覚えておけ、いいか?イエスロリータノータッチ!の精神を忘れたらいかんよ!」

「ちがーーーーうっ!」


 頭を抱えながらゼルが叫ぶ。かと思うと突然しゃがみこんで、


「うぅ…俺はほどほどなのがすきなんだ…はっ…きづいたらこの面子はみんな…」


ぶつぶつと呟いて周りを見渡すゼル。


「うすい…ようじょ…ちいさい…」

「ほう…」

「ふぅん…」


どうやらゼルの呟きは二人に聞こえてしまっていたらしく、モリーティアとミサはゆらりと立ち上がった。


「ひぃっ!?」


 そのただならぬ気配にゼルは悲鳴を上げて後ずさる。

二つの影が目を爛々と輝かせながらせまってくる。モリーティアが鍛冶用のハンマーを、ミサはビッグピコピコハンマーを取り出してゼルの前に仁王立ちになり、不適な笑顔を向けていた。


「な、なんでもないですよ?何にもいってないですよ!?」

「問答!!」

「無用!!」


 ミサとモリーティアの何故か息の合ったコンビネーションに、ゼルは本日二度目の気絶を味わうこととなった。



「おまたせしました!」


 ゼルが二人の逆鱗に触れ、気絶してから間もなくのこと。

良い香りをさせている皿を持ったメイド服姿の娘がリビングへと入ってきた。


「テンテン様お手製のチャーハンです!」


リビングのテーブルにドンと置かれた巨大な皿には山盛りのチャーハンが乗っかっている。


「クララ、これ、多くない?」


そのあまりの量に、モリーティアが少し引き気味に山盛りチャーハンを見ていた。


「はい!曰く『全部食べつくされたら私の負けだ』と、テンテン様が。」

「負け、って…」


 どういうことなのか、とモリーティアはクララを見上げるが、そのクララはただニコニコとしているだけ。

ヘッドレストにエプロンドレス、黒のストッキングとメイドの模範のような格好をしたクララ。

亜麻色の髪はショートカットでさっぱりとしていて、いかにも清潔感のあふれる姿をしている。


「で、そちらの変態様は何故寝ておられるのですか?お疲れなのですか?」


 すっと目を細めたクララが、そこで突っ伏している男を一瞥して、変態様、とのたまう。

仮にも親のようなゼルに、だ。

目を細めながらもニコニコとしてはいるのだが、ゼルを見るクララの目は、何か汚物をみるような、蔑むような目をしている気がするのはジオの気のせいだろうか。


「まぁ、おとなしくしてていただけると大変助かるのですけどね、主に女性陣が。」


 多分気のせいではないだろう。

さげすむような目でクララはゼルを見ていた。


「クララ、いい加減にしなさい。仮にもあなたの親同然の方なのですよ?」


 クララの背後から、これまた巨大な皿を抱えた、今度はびしっとした執事服を着こなしている男が現れる。


「スティーブさん…でもぉ」


 その男が現れたとたん、クララの表情が一変して、駄々っ子のような顔に変わる。

クララよりも頭一つ高いスティーブと呼ばれた男は、チャーハンの隣にこれまた酢豚が山盛りにされた皿を置くとクララに向き直り、ピンと人差し指を立ててとうとうと語りだした。


「いいですか、われわれは、セバスさま、いえ、果てはティア様に仕える執事とメイドなのです。そのご友人であられる、しかもクララ、君の創造主であられるゼルギウス様に対して、そのような不遜な態度はどうかと思います。」


 まじめな顔で、クララに対して語るスティーブだったが、クララはクララで少し顔を紅くさせて上目遣いでスティーブの顔を覗き込むようにして話を聞いている。


「わかりましたね?」

「はい…」

「それでは、私はテンテン様の次のお料理をお持ちいたします。失礼いたします。」


 上目遣いで見つめ続けるクララだったが、スティーブは一切意に介さず、モリーティアたちに一礼すると、部屋を出て行った。

スティーブが完全に部屋を出て行くまでみおくり、姿が見えなくなるとクララは大きなため息をつく。

熱のこもった視線をおくるも、まったく相手にされずクララは少々不貞腐れているようだった。


「お…おお…クララ!!」


 そこに、目を覚ましたゼルがばっと立ち上がり、長年ぶりに出会った旧友との再会を喜ぶかのようにハグをしようとクララへと飛び掛ろうとして――


ビッグピコピコハンマーの影を見たゼルが両手を掲げたまま、その場でピタリと動きをとめる。

さすがに3度目の気絶を味わいたくはないらしい。


「うむ…息災か?クララよ。」

「誰だよ!」


 冷や汗をかきながら引っ込めた腕を組んで、すました顔のゼルに思わずジオがつっこんでいた。


 NPCの記憶は異変の前から引き継いでいる、というわけで、スティーブにもクララにもNPCとして身動き取れなかった頃の記憶はある。

とはいえ、彼らの中では、今と同じように家の中でジオたちプレイヤーに応対していた、という記憶のようではあるのだが。

 とにかく、その中でゼルが「俺の嫁」とか「俺の嫁ちゅっちゅっ」とか、ローアングルからのクララの姿を確認をしたり、とついついやってしまっていたことを、クララもまた覚えていて、さらにはモリーティアがミサの進入権のためにメニューをにらんで百面相をしていたときも、家の中でクララの姿をみるなり抱きしめようとして返り討ちにあったりしたこともあって、先ほどのようなクララの態度が出来上がるわけである。


「うむ、確認だよ、確認。クララは可愛いなぁもう」

「ゼル=変態紳士様に褒められても嬉しくもなんともありませんので。」


 ニコリとわらったゼルに対して、クララもまたニコリと笑うが、その表情とは裏腹に言葉は辛らつだった。


「イコール変態紳士ってなんだよぉ!」


 そんなゼルとクララのやり取りに、ミサは相変わらずゼルを半目でにらんでいたし、モリーティアとジオは苦笑するばかり。

けれどそこへ、ようやく最後の料理をもったテンテンが現れて、7人で夕食の運びとなった。


 夕食の間、部屋の割り振りについて話になる。

一階はほとんどがモリーティアの私物、及び、このメンバーのレアアイテムの収納、さらにはモリーティアの作業場とか、調理場とかになっているから、そこで休むのは難しい。

多少狭くなるのだが、2階の部屋を人数でわけで使うことになった。

一番奥の部屋にジオとゼル、物置をはさんでその隣はもともとモリーティアの私室、そのさらに隣をテンテンとミサのちびっこコンビがつかうことになった。

ちなみに、スティーブとクララは元々モリーティアの趣味もあって、それぞれに狭いながらも部屋が割り当てられていた。


 居住するのに、必要な道具はモリーティアが作るにしても、材料が足りないので夕食後に買出しに行くことにした5人。

夕食に出たチャーハン、酢豚、揚げ物のアラカルトは当然のように食べきることが出来ず、それをみたテンテンは満足気にうなずき、残ったものを取り分けて人数分をお弁当にしてくれていた。

綺麗につめられた中華弁当の様相に、ミサとクララは目を輝かせる。


 料理となるとテンテンは用意がいい。

ジオは、料理を作る手際もさることながら、取り分けた残り物を中華弁当の様にあつらえてしまったテンテンの手際に感心していた。


 さて、それぞれがテンテンに中華弁当を持たされ、当初の予定通り買出しに行くことになった。

スティーブとクララはお留守番。

五人は伴だって町の広場へと向かった。


 道すがら、さっきまではあまり見かけなかったNPCやユーザーの姿がちらほら見える事に気がついたテンテンとミサ。

ゼルとジオは雑談しながら歩いているし、モリーティアは多くのNPCから声を掛けられて、愛想苦笑いを振りまいていたから、そのことに気づいたのはテンテンとミサのちびっコンビだけであった。


 広場に近づくにつれてその人数は増えていって、ちょっとしたお祭り騒ぎのような気配になっていたから、流石に他の三人もおかしなことになっていることに気がついた。


 広場の中央には噴水が設置してあって――この噴水にもいろいろと曰くがあるのだが――その噴水の前により多くの人だかりができていた。

その人だかりの半分はユーザーの様であったが、残りの半分はNPCであるようだ。

どこかで見たことのある販売用NPCの姿なんかも見える。


その人々が噴水の前を取り囲んで、騒然としていた。


「なんだなんだ?」


 ゼルが手を額に当ててひょこひょこと人の隙間から何が起きてるのかを探し見る。

ジオは眉間にしわを寄せて人の動向を見守り、テンテンとミサもまたぴょんぴょん飛び跳ねて何が起きているのかを探ろうとする。

モリーティアだけは、その辺にいたNPCに「モリモリさんちっすちっす」てな感じで挨拶されていたりして、相変わらず愛想苦笑いを振りまくのに忙しいようだった。


「ちょっと見てくるね!」


 テンテンがジオたちにそう告げたかと思うと、一瞬でその姿は掻き消えた。


「おー、相変わらずはえーなぁ」


 その姿を追っていたゼルが空を見上げて感心したようにうめく。


「今のって、もしかして軽功!?」


ミサが消えたテンテンの姿をようやく空中に認めて思わず叫んでいた。


――軽功


 通常の何倍ものスピードで走ったり、ほんの僅かな足がかりで驚くほど高い跳躍をみせたり、空を飛んだり、水面を走ったりできる技で、素手スキル系に纏わる技だ。

WWFではこの技はわりとメジャーな方で、その為に素手スキルをサブ的に取る人間も少なくなかった。

が、やはりメインで取るのとそうでないのとでは、内功と呼ばれる、素手スキルにのみ存在するスタミナのようなものの絶対値が違うため、持続時間や跳躍量などが大幅に変わってくる。

内功を増やすスキルは素手スキルのほかにもいくつかあるが素手スキルで内功をとっていなければ増えない。テンテンはその内功関係のスキル全てをあげている、料理もその一つだったりする。

軽功という点で、テンテンはまさに達人級といえるだろう。


 テンテンは軽功を発動させ、人ごみの間を縫うように走り、壁を伝い、空へと大きく跳躍する。

そしてその空中で気の翼をはためかせ、滑空する。

そこでようやくミサの目に留まったのであった。


空中で滑空して見せたテンテンはそのまま広場の様子を空から眺める。

人だかりの中心には、数人のユーザーらしき人影があった。

しかも、そのどれもが目を引く装備をしている。


「あれは……サムライ"ゴロー"じゃないか?それに緋の賢者"ルリ子"と…セイクリッドナイトの"ハルおじさん"に、ウォーロックマスターの"んふっふ"…すごいな…」


上から見てテンテンがわかるだけでも4人の、いわゆる有名プレイヤーが喧騒の中心になっているようだ。

他にも装備からして強そうなプレイヤーが数人見て取れる。


少なくともただ事ではない雰囲気である。

なぜならその有名プレイヤーたちが、険しい顔で何かを説明し、強そうなプレイヤーに協力を仰いでいるようであったからだ。


冷やかしで着ているような人間にはすこし強い態度であたっているようでもある。


上空から見た限りでは、それくらいしかわからない。

そのまま滑空し段々と高度をおとしてジオたちのもとへと着陸した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ