夢幻の消失
6人の勇者は龍に与えられた武器いわゆる『龍器』で戦う。これは、龍の魂とも言う物であるため壊れることはなく、手に持つ者は龍の住む『龍界』に溜まる魔力を使用できる。また、龍の力の恩恵を受ける時の媒体となる。
そして、龍器を持つ者が何かを成し遂げたり、魔王を倒したりすれば、龍界を元に戻すことができる。
龍と勇者は違いに利益を得て己の願いを叶えようとしている。
この協力関係から龍たちは自分の選択者を龍と共に生きるもの龍命士と呼ぶことに決めた。
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昏く朱く染まった朝方のことだった。
俺は勇者になったことを教えられた。魔王を倒さなければいけないと聞いたが、どうでもいい。俺は、その前からやると誓ったものがある。
ー家族を奪った鬼を殺すー
それが、俺の生きる理由であり、自ら死ぬことを選択できぬ理由・・・
鬼の住む村に着いたと思えば、足元にすら何もないただ紫と黒の闇としか言いようがないものが立ち込めた場所だった。
『鬼切の主だったか?貴様は、勇者に選ばれた。鬼退治なんぞする前に、さっさと魔王を倒せ。この俺がせっかくお前を選んでやったんだ、もっといいやつはいたが、お前のその復讐心は気に入った。』
無音で闇をまとう紫色の巨大な立方体の水晶が目の前に現れた。その水晶は中心が青く光っていた。だが、その光は周りの雰囲気に交わり不気味に感じた。
『ああ、一つ聞きたいのだが、なんで親を殺した鬼だけでなく、他の鬼も狙うんだ?一様同属殺しで鬼人にとっては不名誉だろう?』
青い光は、徐々に竜のような姿をとる。光で揺らぎ見にくいがその体が竜をもしていることはわかる。
「・・・」
『黙るのかい。ああ、君は人として生きるために角を折ったんだったか~。しょうがない、もう一回生やしてあげようか?』
「断る」
龍という生物は皆こんな奴らなのかだろうか。だとしたら一切関わりたくないな。
『そうかい、残念だ。ところでさあ、俺も一様は鬼の血流れてるんだよね~。』
青い光の中で龍が頭を動かす。
はっきりと見えてしまった、あの鬼特有の角が・・・
「死ね・・・」
俺は、腰に刺した刀を抜きながら距離を詰め、水晶に向かって全力で斬撃を放つ。だが、刀は鈍い音をたて弾かれる。
そして刀は命を失ったように崩れ周りの闇に溶けた。
『あー、無駄だよ。この龍界にある物は全て俺が管理してるから。俺にしか壊したり消したりは出来ないからね。』
だが、俺は刀を失ってなお素手で水晶を殴る、中にいる鬼を殺すそれしか考えられなかった。
『君が鬼を殺す簡単に殺す方法がある。君にしか出来ない最も手っ取り早い方法だ。魔王を倒して王になれ。王の力で鬼を蹂躙しろ。』
俺は、殴るのをやめて龍を睨む。
「いいだろう。俺が魔王を倒す。絶対に!
そしたら、お前も殺してやるよ!」
『魔王が死ぬならそれでいいけど、君だけでやれるかな~』
「フフフ、ハハハハ。残念だったな、俺のギルドにもう一人勇者がいるそいつと協力すれば、魔王ぐらい簡単に殺せる。龍、お前は俺がゆっくり殺してやるよ。鬼の血は全て消す。」
龍は楽しそうに俺を見る。
『はは、やって見ろよ。そのうち俺に殺せないくらい感謝すると思うぜ、選んでくれてありがとうってな。頼んだぞ、未来の王。』
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気がついたら、もとの場所にいた。
「おい、お前ら戻るぞ。もっと簡単に鬼を殺す方法がある。」
叫んだが、返事は返って来ない・・・
「おい、お前らどうした!」
所々で悲鳴が聞こえる。何が起きて・・・
「グハッ!!」
後から、仲間であった者に剣を突き刺された。
「俺らを騙しやがって、この鬼混じりが!!」
俺は、首を切られた。
なんで鬼の血を引くとばれたんだ・・・
『すまない、俺の失態だ・・・ただの悪ふざけだったんだよ。本当だ許してくれ・・・』
龍の声が聞こえたが、俺は言葉を返せなかった。
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僕たちは、今ズムフトから王都ヨフェルへと向かっている。
ズムフトから王都ヨフェルまで3日ほどかかると言われている。
移動方法の馬車は、騎士団の方々が乗せてくれている。
前は、途中で飛び降りるという非常識的な行動をとってしまったので、ものすごい怒られた。リリィを助けられたので別にいいけどね。
ついでに、騎士に稽古をつけてもらったので、大分剣技を使えるようになり、魔法使いの人に魔法の基礎を教えてもらった。
「何度いえばわかるんだよ!龍器を出すのにコツなんてねえよ!」
幻の勇者のロンは、月の勇者の僕と行動を共にすると決めたらしい。そして、華の勇者のリリィは、ロンに反対されたが、結局着いてきた。僕は、華の勇者の能力を聞いてもピンと来ないのだが、どうやら危険出あるらしい。能力を利用するためにさらわれたり、逆に利用されないために殺されたり・・・
まあ、よくわかんないし本人の意思に任せようかな。元の世界の先生見たいに口先だけの人にはなりたくないし。
「ねえねえユウカ~龍器出すときになんか意識してることってある?」
『龍器』龍から与えられる武器であり、僕たちが龍の恩恵を受けるための物。僕の聖剣、正式名称は月明剣。そして、ロンの幻光剣。だが、リリィは華龍の武器を手に入れてない・・・
「僕は、『来い聖剣』って言ってるよ。」
僕は、大剣サイズの聖剣を片手でもち、見せる。普通の剣では、こんなこと出来ないが、聖剣の身体強化が戦闘は出来ないがすこし片手で持つくらいはでき、魔法を打つ際に片手を開けることができる。
「来い聖剣!・・・なんで、私だけ使えないの!!」
リリィは『龍眼』を使えるが、もともと龍眼は魔力消費が多いので、龍器によるサポートがなければ実際には使えない。
外部からの魔力で無理矢理使わされたりすると魔力が枯渇し最悪、死にいたる。ロンは、今考えるとすごいことしてくれたな。
「ユウカ様。着きましたよ、王都ヨフェルです。」
騎士が言った。
僕はその景色を見て言った。
「城デケーーー!!」
やばい、城でかい!王様ってすごい人だったんだね!!ネズミーランドにある城よりでかく見えるよ!!
「ユウカ、お前ここはじめてだっけか?」
ロンが言った。
「ああ、僕は異世界から来たからあの村しか知らないんだよ。」
僕は、目を輝かせて城を見つめる。
この都を囲う防壁と同じで白を基準に作られている。屋根は赤で絶妙な色合いを醸しだしている。また、城門は茶色のレンガを使用していて、THE・ファンタジーって感じの城だ。住みたい・・・男のロマンだよね。
僕たちの馬車は、その城門を抜けていった。
「おおー」
庭には、花がたくさん植えられ、豪華な噴水が一際目立っていた。住みたい・・・本気で王様殺して住んでやろうかと考えた。
感嘆を上げていた僕をよそに、ロンが馬車から下りようとしていた。
「ロン、どこ行くんだ?」
ロンは、すこし申し訳なさそうにしていった。
「いや、何て言うか、悪いこと結構やってるから、城には入りにくいんだよ。」
「そうか、じゃあ先に宿でもとってくれ。」
ロンは、馬車から飛び降りた。
「了解だ。」
騎士は、ため息をつき言った。
「勇者って人は常識がなくてこまる。一般人が真似したら怪我じゃ済まないってのに・・・」
僕は、申し訳なく思い城への興奮を押し止め、静かに座っていることにした。
「私も下りちゃだめかな~なんて。」
「ダメだ」
リリィが言うが却下する。狙われやすいと聞いているのでやすやすと自由行動はこまる。
「王様に会うの緊張するなぁ。」
確かに、どんな人か気になる。
馬車が止まり、降りていいと言われる。
僕たちは、これから、世界最高の戦力保持者に会う・・・
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「この辺の宿か~、いい所あったかな~」
記憶を探っていると、情報屋のことを思い出した。そーいや、あいつがいたな。聞いてくるかね。
路地裏にそいつはいた。名前は、フェルト。本名ではなく、ここでの偽名だ。この返でよくある名前を使っている。
「久しぶりだね、ロン。もしかして、また詐欺でもはじめるのかい?」
「なわけないだろ。もう、命懸けで貴族を騙すことなんて出来ねえよ。」
フェルトは笑った。そして、最も重要な情報をただで言った。
「夢の勇者が死んだ。」
「は?」
ロンはついマヌケな声をだした。
「討伐ギルド鬼切のリーダー、タツノヒコ・ミレイ。それが、何物かに殺されたと、同じギルドの霊の勇者が言ったらしい。」
「それは、鬼が復讐でやったとかか?」
「ちがう、多分。封の勇者を名乗る偽物だ。最近、その偽物の情報を結構もらうからな。」
フェルトは、笑った。
「お前、勇者何だろ?なら、かせげるじゃねーかよ。そのあと、情報量は頼むよ。」
ロンは、笑い返して「わかったよ」と言った。
フェルトが「用がある」と言って去っていく、影にはいっていき見えなくなっていった。
あいつは、暗殺者時代の相棒であり、詐欺師時代の協力者で自分自信最も信頼できると思っている。
あっ!宿のこと忘れてた!
まあ、いいや。先に、ユウカに伝えるか。
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「この人が王様?」
僕はつい言ってしまった。
「きさま!王に向かって無礼な!!」
騎士が槍を僕の喉に突き付けてくる。
「すみませんでした。」
僕は素直に謝る。こうゆうのはテンプレだったな。王様が、町人見たいな格好してるのは。てか、さっき遊びに行ってたって言ってたけど、大丈夫かなこの国・・・
「まあまあ、勇者様にも悪気がある訳じゃないだろうし。いいじゃないか、そのくらい。」
王は、余裕の表情で僕とリリィを見下ろす。
ちなみに、王は20代くらいに見えるが、40後半のオッサンらしい。
服装普通はだが、もにすごい雰囲気を纏っている。
そういえば、王様は民と共に過ごすことで不満とかを解消していると聞いた。ゲームの主人公みたいな王様だ。
「さて、本題に入ろうか。今夜、勇者を集め祝杯を上げようと思う。ああ、何を祝うかと言うのは、勇者がこの都に集ったことのだ。」
王様は、どうだと感想を求めてきた。
「ありがとうございます。我等が勇者、王の剣となり必ずや魔王を倒すことを誓いましょう。」
我ながら完璧な返しだと思ったのだが、騎士達がものすごい顔で睨んできた。
なんでだろ?と思っていたら、リリィが小声で教えてくれた。
「王の剣は騎士を意味するから、今の発言は騎士団に喧嘩売ったみたいなものだよ。」
また、やっちゃったよ。元の世界では、しゃべらないほうがいい、てか喋るな。とよく言われていたし、僕はもう黙っといたほうがいいみたいだな。
「そうか、だが我には騎士団があるのでな。戦友として、戦ってくれ。」
僕は、了承をお辞儀で伝える。
「リリィ!」
王はいきなり大きな声でリリィを呼んだ。
「何でしょうか。」
リリィが震えた声で返事をした。
「お前が勇者に選ばれるとは思っていなかった。我が娘として誇りに思う。」
娘って誰だろう?と、いつもどうり混乱しそうになった。
リリィって王族だったんだね~。商人としか聞いてないのにな。
「勇者としての勤めを果たせ。」
リリィは、嬉しそうにしていった。
「はい、お父様。」
王が僕の方を見て言った。
「ユウカ殿。娘を頼むぞ。」
僕は頷く。
そして、王の間を立ち去る。
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「ふう、騎士の威圧がすごかったな。騎士団だけで魔王倒せるんじゃないかって思ったぐらいだよ。」
僕たちは王宮の庭のベンチに座って満開の花を見ていた。
「それは、ユウカが喧嘩売るからでしょ。」
適当に話しをしていたら、リリィがさらわれた時、ロンの居場所を教えてくれた少年が歩いてきた。
「やあ、ユウカ。君とはまた会えると思ったよ。」
僕は、あの時は気にしなかった。邪気のような物を少年から感じた。
「お前、何物だ?」
少年は、怪訝そうにして言う。
「今は、封の勇者とだけ言っておこうかな。君に助けを求める。君は、夢の勇者が殺されたことを知っているかな。その、犯人がどうやら霊の勇者みたいで、王の力を過剰に求める勇者みたいでね。」
僕は、リリィをかばうようにした。
「で、お前が犯人ってことか?」
少年は慌てて否定した。
「ちがう!違うよ!僕は、死にたくないだけだ。だから、君達の仲間に入れて欲しいんだ。君達に僕が加われば、4人勇者が揃うことになる。そうすれば、迂闊に霊の勇者も手を出せないだろう。」
僕は、その言葉に嘘が無いと信じることにした。どちらにしろな敵としてか味方としてか霊の勇者とは話しをするんだ。
「わかった。一緒に来ても構わない。けど、一つだけ聞かせ
てくれ、名前は?」
少年は即答した。
「シキ」
僕は、前の借りもあるし、できるかぎり守ってやろうと思った。
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僕たちは、ロンに手紙鳩を送り城の客間で待っていた。
豪華な料理が並べられる。
シキが何だか緊張していたので、軽くこずいてやる。
「なあ、大丈夫か?」
「あ・・・ああ。大丈夫だよ。」
すると、扉が開き線が細い長身の男と背が低めの少年が入ってきた。
「おい、お前が月の勇者か?」
長身の男に呼び掛けられる。
「ああ、俺が月の勇者だ。」
長身は僕を見定めるように眺めた。そして、興味を失ったのか、シキとリリィを見た。
「俺は霊の勇者、ロラーゾ・ドラゴニア。一様、竜人族だ。」
今気づいたが、ロラーゾにはドラゴンのような尾があった。
それに、続いて少年が自己紹介をする。
「封の勇者、フェルト・コロネラです。」
少年が、封の勇者と言った瞬間、僕は聖剣を構え、リリィをかばうようにした。
「待てよ。封の勇者は僕だぞ。」
シキが、目を細くし言った。
「何を言っているのですか?もしや、貴方が例の偽物でしょうか?」
フェルトは、微笑を浮かべて、虚空に手を掲げた。すると、少年の手の付近が青い光でぼやけた。少年はそこから、豪華な装飾がされた杖を取り出した。
「とりあえず、殺そうかな。」
シキも同じように青い光を手に纏わせた。
「バイバイ偽物、『アリグレ・アリーゾナス』!」
フェルト、は聞いたことの無い魔法を放つ。しかも、無詠唱だ。
フェルトの後に鎌をもった死神のようなものが現れ、その死神が鎌を振りかざしシキを襲う。
「『解放』・・・」
シキもまた無詠唱で魔法を撃つ。
シキが手に纏っていた青い光が収束し蒼い光を放つ大剣が現れ、その剣を中心に魔力が文字どおり解放される。
その魔力は、死神の鎌を消し去る。
「僕が、封の勇者だ。この剣から送られる封龍の力がその証拠だ。」
フェルトは笑い出した。
「ハハ、その程度で封龍の力を再現出来たと思ってるのかよ?本当の封龍の力はこれだぜ。」
フェルトは杖を掲げた。その瞬間、背筋に悪寒が走るほどの魔力が放出された。
「決まったな・・・偽物よぉ。タツノヒコを殺したのも、お前なんだろ。」
ロラーゾが恨みが篭った声で言った。
たしか、タツノヒコは夢の勇者の名前だったな。夢の勇者のギルドにいた勇者はレラーゾのことだったか。
「一ついいか?」
僕は、問い掛ける。
「シキ・・・こっちの封の勇者は、タツノヒコさんを殺したのはレラーゾさんだって言ってましたけど、どうなんでしょう。」
レラーゾは僕を睨んで言った。
「俺がやるわけないだろ!タツノヒコは俺の親友だぞ!そいつが嘘ついてやがるんだよ。」
フェルトは笑った。
「さっさとやっちゃおうよ。偽物に逃げられても困るしさぁ。」
シキは、歯を食いしばって言う。
「くそやろうが・・・やっぱり、僕が疑われるのかよ。」
僕は、シキの前に立ちフェルトの方に向かって聖剣を構える。
「シキ、逃げろ!」
シキは窓に向かって駆け出す。
レラーゾが紫色の陽炎を放つ槍を僕に向かって叩きつける。
「目を覚ませ、月の勇者ぁ!!」
「とっくに覚めてるよ!!」
僕は月龍の力を腕に集め放出する。それは、一種の爆発のようなものになる。レラーゾはたまらず、後にとびすさる。
その瞬間、赤い火球が飛んでくる。
僕はそれを、軽く切り払う。
「おい、危ないだろ!爆発系使うなよ!」
僕は火球に爆発の魔法が組み込まれていたのに気がつき言う。今、もうすこし払うのが遅れたらと思うとぞっとする。
パリーンッ
シキが窓から外に飛び出した。
よし!シキを逃がした。後は鎮圧するだけだ。と、思った時だ。
後で、シキの悲鳴が聞こえ割れた窓から投げ込まれた。
「シキ!?」
僕は、シキに何してるという意味を含め呼びかける。
すると、シキの返事ではなく別の人物の声が返ってくる。
「ユウカ、何やってんだよ?こいつは、夢の勇者を殺した偽物だ。逃がすなんて出来ないぞ。」
僕は「まだ、そう決まった訳じゃ・・・」と言うがそれに割って入るようにフェルトがちかずいてきた。
「まだ、分からないのか~、じゃあ見せてあげる。」
フェルトの目が紅く光り、魔方陣らしきものが浮かぶ。すると、シキの回りに魔方陣が現れ青い鎖を出現させる。その鎖はシキに巻き付き拘束する。最後に、一際輝く魔方陣がシキの足元に出現し、鎖が消えた。
「はい、封印完了。これが、封龍の『龍眼』の力だよ。」
そう言ってフェルトは微笑んだ。
「おい、月の勇者!」
レラーゾが、怒鳴り僕を殴り倒す。
「お前も仲間だったりするのか?」
レラーゾは槍を僕の喉に突き付けた。
「違います!その人は、正真正銘私たちの仲間です。」
リリィが言った。レラーゾは、「ちっ」といい、槍を消した。
「レラーゾ、そんなおバカさんはほっといて話を進めようよ。」
その時、シキが「ユウカ、味方してくれてありがとう。」と言った気がした。
次の瞬間、シキから膨大な魔力があふれてくる。それは、悲しさを具現化したような魔力だった。光の届かない場所に閉じ込められていたような悲しさだ。
「な、こいつ!魔族なのか!?」
レラーゾは冷汗を垂らしながら言い、槍を再度出現させる。
「せめて、お前だけは消してやる・・・」
シキは、体を起こして手を掲げる。
「我開くは『アンシャインゲート』・・・」
シキが魔法を発動させた時、天井が割れ極光が降り注いだ。
光が収まると、黒い障壁の中で身を縮めたフェルトとユウカ達が立っているだけだった。
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「お前ら・・・やってくれたなぁ」
王が頬をひくつかせながら言った。
「城の終了にいくらかかると思ってんだ?勇者じゃなかったら、処刑だぞ。」
ユウカはもうしわけなさそうに「すみませんでした」と「ごめんなさい」を言っていた。
どうやら、月の勇者が勇者の代表になっているらしい。
今では、勇者と言えばユウカ!と言うくらいだ。
そして、同じくらい有名なのが封の勇者だ。偽物のことは、ほぼ全手の人が知っている。
魔族の勇者なり済ましそれは、瞬く間に世間に知れ渡ったのだ。忌みの対象になるくらいに。
この俺の計画はいい感じに進んだな。
今夜あたりに、幻の勇者でも潰すか、あれは厄介だからな。
男は心の中で笑った。
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王の訓辞を聞いた後各自解散となった。
「リリィ、どう思う?」
僕は、ポツリとリリィに問う。
「シキさんのこと?それなら、ユウカの行動は最低だね。意味もなく助けようとして、ユウカに助けを求める人は全員がいい人って訳じゃないんだよ。」
リリィは、真剣に言った。今回は別に助けを求められた訳じゃなく自分で考えてのことなのだが・・・まあ、どっちにしろ助けようとしたのは同じか・・・
「ゴメン、感情に任せて動いてた。気をつけるよ。」
リリィは満足して、僕に微笑みを向けていた。
リリィのおかげで僕の心は軽くそして楽になって行った。
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ユウカ達は宿で休むらしいが、僕はシキの探索を続ける。それが、僕がフェルトと言う親友に与えられた使命だと思ったからだ。
まさか、フェルトまで勇者だとは思わなかったけど。
探索中のこと。ロンは自分が付けられているのに気づき、立ち止まる。誰だろうか。偽物であるなら、一旦逃げ。ユウカと共に戦う。盗賊とかならば、自らの手で迎撃しよう。
「お前は・・・」
自分を付けていた人物が姿を見せた。フェルトだった。
「フェルトか・・・趣味が悪いぞ。」
フェルトは笑った。「酷いじゃないか」と。
フェルトの後から、魔族が現れた。
「おい、『フェロス』、こんなのが勇者なのか?」
魔族は僕を嘲笑うように見定めた。
「その通りだよ、『アロファトス』。でも、油断しないでね、幻の勇者の能力は強くないけど厄介だからさ」
フェルトの姿が変わっていった。そう、魔族の姿に。
「嘘だろ、なあフェルト!お前が偽物だなんて・・・」
フェルトはいつもの笑いより、更に卑劣な笑みを浮かべた。魔族はあまり人間とは変わらない姿だ、固体によって翼や角が生えていたりする。フェルトには、翼が生えていた。それ以外は外見上変化がないが魔力の質が変わっている。
後の魔族が大剣をで切りかかってきた。僕は、鼻先を掠めたものの回避する。そして、龍眼を発動する。
奴に効果がありそうな幻は特になさそうだな・・・テンプレでいくか。
次の瞬間、魔族2人は世界が歪んだように感じた。
そして、味方が敵に見えたり見えなかったり分からなかったりした。
「チッ!やりやがった・・・」
ロンはこの隙に逃亡を返しする。もちろん、幻でダミーを作って。幻の効力は、視野の範囲なので、後向きに走る。
そして、効力が切れる瞬間に全力で走った。だが、その先にはレラーゾがいた。ここは、仲間として頼るべきところだが、嫌な予感がしたので警戒した。
「あ・・・れ・・・」
いきなり、何物かに後からナイフで刺された。レラーゾが笑っていた。
後から、僕を刺した人は鬼のような角が生えていた、鬼人だ。その鬼人は虚空から刀を抜き出した。よく見れば、その鬼人には足がない。
「レラーゾ・・・!お前・・・」
そう、この人は霊だ。霊の勇者は霊を使い魔として使役できる。
「幻の勇者を手駒にできれば、勝ったも同然だ。俺こそが王の力を手に入れる者だ!」
レラーゾはひどく愉快そうに宣言した。
僕は、龍眼で幻を見せようと魔力を込めたが、体が痺れて倒れてしまい、視界から外れてしまった。
「殺せ。」
レラーゾがそう言った。体は動かない。クッソ、自業自得だな。すまない、ユウカ・・・。
鬼人は刀を振りかぶる。
せめて、ユウカに伝えないと・・・早く逃げろ・・・と。
やっとプロローグの終わりがきそうです。展開急いで雑になっていたらすみません。ちょくちょく修正入れたいと思います。