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月夜の龍命士《ドラグナー》  作者: 蒼海
プロローグ~第二次戦夜~
2/3

幻惑の紅瞳

投稿に時間がかかってすみませんでした。できるだけ早く投稿できるように頑張ります。

1話冒頭を改変、2話の冒頭に追加を行いました。

勇者は、龍の能力に擬似した力を得る。


月の勇者は月龍(げつりゅう)の理を見抜く力。


幻の勇者は幻龍(げんりゅう)の他を惑わす力。


夢の勇者は夢龍(ゆめりゅう)の理想を除く力。


華の勇者は華龍(かりゅう)の昇化を招く力。


封の勇者は封龍(ふうりゅう)の万物を縛る力。


霊の勇者は霊龍(れいりゅう)の消失を覆す力。


これらを勇者以外が再現することは、魔王以外には行えないことから、龍の力を持つものを龍命士(ドラグナー)と称えた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



気がついたら、壊れた家の中にいた。


壊れた屋根の隙間から黒い太陽が見えた。


「太陽が黒い?それに、なんだか薄暗くて夜みたいだ。」


ん?そういえば、外が騒がしい。


「グルアアアアァァ!!!」


いきなり雄叫びをあげながら、虎のような白い獣が飛び込んできた。


獣の双眼はしっかりと僕を捕らえていた。


僕は、壊れて倒れていた机に向かって走っていき視界から外れる、そこで一呼吸入れてから、元いた方向へもう一度走る。


これは、僕が鬼ごっこで培った逃走術。一呼吸入れることで、逆の方向へ行ったと思わせる。


だが、失敗するとこうなる。


獣は、動いていなかった。いや、正確には上体を低くし臨戦体制をとっていた。


そして、獣は僕に向かって飛びかかろうとした。避けようと、体を投げ出すように飛んだ。


だが、獣は飛び掛かってはいなかった。


「くっ!・・・フェイント!?」


獣は倒れた僕に近づいてきた。その時、獣の後ろ側。100メートルくらい先で獣の倍くらいはありそうな鳥が女性と少女を睨んでいた。


『助けてやってくれ』龍の言葉を思い出す、もしかしてあれが・・・僕が助けなきゃいけない仲間?



ー僕には誰かを守ることなんてできやしないー


どこからか、声が聞こえた。特徴のないただ頭に刻み込まれる言葉。


ーそんなことない、僕だってきっと誰かを守れるはずだー


声は続いた。


ー本当に?なんの力もないくせに、力を貸してもらうことも出来ないのにー


ー違う。僕はもう力を手に入れた。僕があの子を守る!こい、聖剣!ー


何も起こらない・・・


気がつけば、獣が僕の左腕に手を乗せるようにした。それだけで、僕の腕の骨は砕けた。


「くッ、うわあああ!なんで!?なんでだよ!おい、龍!早く力を!!」


腕の痛みと予想外の事態に僕は悲鳴を上げる。


ーわからないのか?それは、自分なんかが人を救えないと、お前が理解しているからだよー


僕は、何も言えない。確かにそうだと、そう頷くしかないのだ。強くなければ生きていけない、強くなければ守れない。


ーだけど・・・ー


ーん?ー


ーだけど、弱くても・・・守れないとしても・・・守ろうとすることは、できるー


僕は、獣に覆い被さられ手足を折られていたが、必死に手を伸ばし叫んだ。


『来い、聖剣!!』


右手に白く輝く光の帯が集まっていき、それが剣の形を象った。


龍の声が聞こえた。


『我が魔力を形とし、我が主の力となれ・・・月明剣』


僕は、今にも獣に殺されそうであるのに、その剣に見とれた。その剣は名前のとおり月のように美しかった。その姿は月のようでありながら、闇夜に浮かぶ三日月や星空に佇む満月とは、似て異なる美しさがあった。あの、龍の純白の輝きのような、そう例えるなら湖面に写った鏡月だろうか。そんな、すこしのことで揺らいでしまいそうな淡い輝きを放っていた。


『どうだ、佑華よ・・・気に入ったか?ついでにすこし手を貸そう。我が名を呼び力を求めろ・・・


ああ、我が名を教えていなかったな、我は月龍。そして、我と契約したお前は、月の龍命士(ドラグナー)だ』


「月龍・・・龍命士(ドラグナー)・・・」


やるよ、月龍!僕は心のなかでそう言った。


「力を貸せ『月龍』!」


その瞬間、地面に魔法陣が現れた。白い光が獣を包み込み、音もなく消えて行った。そして微かに残った光が僕を覆い、傷や損傷を直していった。


光が収まったと同時に僕は立ち上がり走った。あの人達を助けないと・・・



あっ・・・


女性と少女の方を見た僕は愕然とした。女性を鳥の嘴が貫いていた。


僕はこの時思った。もし、僕が最初から聖剣を出せていれば、女性は助かったのではないのかと。


鳥が少女を見据え、少女を殺そうとした。


頼む、守りたいんだ。届け!


僕は、無意識のうちに斬撃をはなった。聖剣は僕の意思を読み取ったのか光輝き、鳥に向かってその光を飛ばした。


その光の斬撃は鳥の首を綺麗に落とした。


僕はよかったと安堵の息をはいた。そして、少女に駆け寄る。


「大丈夫?怪我はない?」


僕がそう聞くと、少女は苦しそうに「大丈夫」と言った。


僕は、いまだ少女が手をとっている女性を見た。もう、胸に大きな穴が空き血が流れ出ている、もう生きてはいないだろう。僕は、悔やんだ。助けられたのに、僕が最初から助けに行っていたら・・・


「ゴメン、助けれなかった・・・」


僕は、自分を攻めるようにそう口にした。


すこし間を開があき「ありがとう」と少女が言った。


その言葉を聞いて僕は、やっとその人を守ることが出来たと感じた。


そのあと、少女がパタンと倒れたので急いで助け起こすと、寝ているだけのようだったので、近くにあった避難所まで、連れていった。



「なあ、そこの人。この子を頼めないか。寝ているだけだと思うけど、一様心配なんだ。」


「ああ、別に構わないが。この子の親とかは知ってるか?」


僕は、避難所にいた男性にリリィのことを頼んだ。


「すみませんが、よくわからなくて。道で倒れてたのをここまで運んできたんだ。」


男性は、回りの人よりすこし服装などがしっかりとしていたので、頼っても大丈夫だろう。たぶん。


「お前、名前は?」


僕は、なんて名乗るか少し考え、「ユウカ」とだけ答えた。


「俺は、グラッドだ。この子が起きたら、君のことを伝えておこう。」


僕は、軽く頷いて外へと向かう。


グラッドが、僕を呼びとめる。


「おい、ユウカ!お前まさか外に行くのかよ。俺はてっきり、親のところに行くのかと。」


僕は、振り向いて言う。


「僕は、襲われている人達を助ける。『来い聖剣』。」


僕の手に光輝く剣が現れると同時に、力が沸いてきた。やっぱりこの剣を持っている時は、月龍の力を借りることができるようだ。


「まさか、ユウカ・・・お前は。勇者なのか?」


グラッドが、その剣を見て言った。


「勇者?何のこと?」


勇者といえば、あれだろうか。ファンタジー系のゲームの主人公とかによくある魔王を倒すために旅だつ、あの人達のことか。


「お前その剣どこで手に入れた?」


「ああ、月龍ってやつがくれたみたいだ。」


グラッドは、「月龍・・・」とつぶやき言った。


「お前は月の勇者だ。伝説では、魔王を倒して王になったって言う・・・。ユウカ、勇者の伝説をよく白ねえなら、俺が説明してやる。長くなるが少し我慢してくれよ。まずは、この町に伝わる伝説の話だ。ある時、平和な・・・」


長い話を聞いている暇はない。僕は、「時間が惜しいんだ。またきくよ。」と言って、外に向かって走り出す。


グラッドが、引き止めようとなにか行っていたが無視した。



僕は、町にいる。怪物を片っ端から、切り倒して行き。沢山の人を助けた反面、沢山の死体になった人達を見た。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



妖魔襲来から、3日。


この町、ズムフトは王都ヨフェルから派遣された、黒薔薇騎士団という、厨二病のような名前と格好をした奴らに守られながら、町を囲うように防護壁を築く工事をおこなっている。


そして、勇者のことだがグラッドさん(意外と偉い人だったのでさん付け)に改めて色々な話を聞いた。


まず、この世界は俗に言う魔法と剣の世界とゆうやつだ。テンプレ的に冒検者ギルド等のギルドや、騎士団などがあり、職業では商人等の他に魔法使いや剣士などと名乗れる。また、エルフや半獣などの人間意外の種族も存在している。


そして、肝心の勇者と龍についてだ。これは、伝説をさらっと聞いた。簡単にまとめると、魔族の王の魔王が魔族と妖魔などの魔物とともに攻めてくる、それを竜の上位種の龍に選ばれた勇者が魔王を倒すことで止めるこれを常夜聖戦という。という感じだ。はっきりと言わせてもらうと(心の中で)、常に夜ってのはまあわかるけども、なんで聖戦なんだよ。あれかな?大儀名分ってやつかなぁ。神を背中に背負って戦ってるから、魔物や魔王を殺してもいいみたいな。


まあつまり、二千年前の伝説が実際に起こったってことだけど。


ちなみに、前の魔王は光の勇者に倒されたみたいだ。



「ユウカ?どうしたのぼうっとして。なんか、心ここにあらずって感じだよ。」


「もしかして、ユウカくん。楽しめてない?」


「ユウカくん?ねえってば。」


今、僕を女の子達が囲んでいる。様々な身分なのであろう、商人のような格好の子や、スラムとかにいそうな少しぼろめの服をきた子などが様々だ。共通点は、僕に救われたことだろう。


「ああ、ごめんね。ちょっと考え事をしていたんだよ。」


僕の回りには、5人の少女達。いわゆるハーレムってやつだよな、これ。ハーレム系のアニメやライトノベルは結構好きなのだが、なんだか素直に喜べない。たぶんこの中に霧ヶ峰がいないからだろう。あのあと霧ヶ峰は、どうなったのだろうか・・・今度、月龍と話せたら聞こうかな。



僕は、商店で砂糖のような物がかかったパンを6つ買い、少女達と食べた。少女達は、すごく嬉しそうだったのでこの世界でもおごってあげると好感度が上がるのは同じらしい。



今から、大事なことを話していこう。


僕が何故少女達に囲まれているのかと言うと、町の復興がどのくらい進んでいるのか知りたくて、避難所から出てくる時一緒に生きたいという少女達に呼び止められたのだ。黒薔薇騎士とか言う奴らが守ってるから安全なのだが、まだ危険なのは変わりないからとかなんとか言ってついて来たのだ。


店とかやってるし、家が壊れてない人は住んでるってのに、何が危険なのやら。後から知ったが、騎士団はこの世での王が持つ最高戦力らしい。



町の回りの壁は、ほぼほぼ完成していた。魔法が存在するため、日本よりも技術が発展しているようだ。まあ、確かに雰囲気はいかにもファンタジーだけど、科学的なものいっぱいあるしな。避難所の砦とか、地下から競り上がってきてたし。蛍光灯とかないけど、電気ランプとかあったし。


魔法使いは、希少な存在なので魔法で工事しているわけではないようだ。



僕は、少女達と別れてグラッドさんの家へ帰る。扉をノックする。


「グラッドさん、ユウカです。今、帰りました。」


グラッドさんの家は、そこらの民家の3倍くらいあり日本の一軒家と比べても、一回り大きかった。


鍵が開いた。魔力で家の中では、扉の前で言った言葉が聞こえ、鍵を開けることができる。


僕は、いつもの癖で「ただいま」といい、中に入る。そして、リビングのような部屋に向かう。


おかしいな、いつもならグラッドさん、僕を迎えに来て雑学でもいいながら、一緒に廊下を歩くんだけど。忙しいのかな?


リビングの部屋の扉に手をかけて、止まった。いつも開いてるのに閉まってる。


リビングで、誰かがたてた音が聞こえた。


僕は察した。ハーレムの次はこれか・・・まあ、開かないけど。フラグじゃないよ。マジで。ガチで。ホントに。


リビングの方で、誰かが転んだみたいだ。やはり、今入って行ったらやばかったな。


僕は、俺はフラグをへし折ったんだ。とどや顔をした。


さて、少し待つか。あの子目が覚めたのか。よかった。


「ユウカ、助けてくれ!早く!」とグラッドさんの声が聞こえた。僕は、咄嗟に動いた。本当のハプニングかよ!


僕は、扉を開き疾風のような速度で助けに行こうとした。そして、気づいた。はめられたと。


部屋の中には、僕が来たのに焦って服を着用しようとしたのか。下着姿の少女がズボンで足が絡まり床に倒れていた。


グラッドのやろうは、後にいた。たぶんどや顔も見られた。僕はすかさずグラッドの方に体を向け、全力で引き返す。だが、グラッドが扉を閉める。ちょっと待てよ!扉を閉める時のグラッドの顔が


ーいいもの見せてもらった、ありがとう。お前の犠牲は無駄じゃなかったー


と、言っているようだった。


扉は、固く押さえられていた。


どうする。聖剣で吹っ飛ばすか?それともこのままで見てないって言って許してもらうか?なんで、反射的に助けに行くんだよ。おもっきり後から声しただろ!


僕は、かつてないほどの頭を回転させ気がついた・・・僕はもう社会的に死んでいる、と・・・


「あなたが、ユウカさん?」


僕は、振り向いた。そして、目が会う。まだ、少女は立ち上がってズボンをはき直そうとしていたが半裸だった。


少女は、しゃがみ込んで言った。


「こっち見ないでよ!」


僕は、すぐに扉を開けて、部屋から出た。



「おい、グラッド・ルーデス。覚悟はいいな?」


僕は聖剣を携え、静かに死の宣告をした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



私は、妖魔に襲われていたところを助けてもらったあと、眠ってしまったらしい。


私を保護してくれた、グラッドという人にユウカという勇者が私を助けたと聞いた。


グラッドさんに、服を渡され「汗かいてるだろうし、シャワー貸すよ。」と言われた。手短にシャワーを浴びた。着替えが、なかったので借りた。その時、グラッドさんの目が厭らしく私のタオルをまいただけの姿を見ていたので、別の部屋で待ってもらい、浴室まで戻るのが面倒だったので、そのままリビングで着替えると、ユウカさんが帰って来た。リビングに向かって来る気配を感じたので、慌ててズボンをはこうとしたら、転んでしまった。そしたら、「ユウカ、助けて!早く!」というグラッドさんの声が聞こえた。そして、ユウカさんが、部屋に入ってきた。


ユウカさんの証言では、グラッドに騙された。扉押さえられた。と泣き顔で言っていた。


グラッドさんは、俺は入るなと言われていたので、ユウカに助けれるなら助けろという意味で言っただけと言っている。


とりあえず、グラッドさんに平手打ちをしておく。


「なんで、俺だけ・・・」と、グラッドさんが言っていた。


グラッドさんが「大きかったな。」とか言って、ユウカさんをからかっていたからだ。


ユウカさんにお礼を言いたかったんだけどな。


私のため息でこの事件の幕を引いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



リリィと言う少女が目覚めてから2日たった。


町は、活気にあふれていて妖魔が来たことなど忘れているかのようだ。


僕はこの5日間で集めたの情報で特に重要な情報は、一つ目は勇者が2人、ここズムフトの近く王都ヨフェルで待機している。


二つ目はいわゆる魔王の城というやつが、意外に近くにあり、馬で行けば約3日だ。ちなみに、バイクらしきものはあるが自動車はない。


とりあえずは、魔王が弱いということは、考えにくいからやっぱり魔王城とは逆の方角でも王都に行き、他の勇者と合流するべきだよな。


たしか月龍は、仲間を助けろって言ってたけど、リリィさんも勇者なのか?



「リリィさん。あなたももしかして勇者なんですか?」僕は単刀直入に聞いてみた。リリィは、頭に?を浮かべて「違うと思うよ」と言った。



リリィは、14歳で僕と同い年だ。けど、なんだかしゃべりずらくて、さん付けで呼んでいる。たぶん、グラッドさんのせいだな、きっと。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



満月が昇った夜。ある家の屋根に座り、美しい光を放つ剣を見ている少年がいた。


「月龍・・・聞こえないのか?聞きたいことが沢山あるんだよ・・・僕はこれからどうすればいいんだ?勇者として魔王を倒せばいいのか?答えろよ、月龍!!」


返事はない。少年は、別の世界に飛ばされ人々を守った。だが、そのあとのことがわからなかった。自分が何をすべきなのか、どうやったら帰れるのか、残された霧ヶ峰が無事なのか・・・


少年は、剣に拳を叩きつける。


「なんで、なんで・・・帰らせろよ・・・帰りたい・・・僕が何をしたんだよ・・・ただ・・・ただ、皆を守りたいだけなのに・・・なんで・・・」


満月で照らされた夜は、明るく静かだった、だけどこの先の先の見えない道のりを考えると、ひどく悲しい風景に見えた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



この世界に来てから、一週間。だいたいのこの世界の情報は把握した。それらの情報から僕は王都へ向かうことにした。


「本当に旅立つのかよ・・・」


「グラッドさん、今までお世話になりました。また、他の勇者と合流したら、この町によると思うのでよろしくお願いします。」


「ああ、もちろん・・・・・・・・・ユウカ・・・死ぬなよ・・・」


グラッドさんは僕みたいな子供が魔王を倒しに行くなんて・・・といつも言っていた。調子に乗りすぎなところもあるけど根はいい人だ。素直にそう思える・・・


「俺は死にませんよ。勇者ですから。」


僕は無理にでも笑って見せた。男の別れに涙はいらない。そう、グラッドさんに教えてもらった。


そんな僕の顔を見て、グラッドさんは涙を流して笑った。それは、気持ち悪かったけども、不思議と嫌だとは感じなかった。


僕は、騎士団の人が手配してくれた馬車に乗った。気づけば僕も涙を流していた。


出発の前、店仕事でお見送りに間に合わなかった。リリィが走ってきた。


「ユウカ、助けてくれてありがとう。私・・・この町でユウカの帰りを待ってるから、必ず帰ってきてね。もう、会えなくなるなんていやだから・・・」


「リリィ・・・もちろん、帰ってくるよ。どのみち、魔王を倒しに行く前にもう一度寄るしね。」


僕は、笑顔を向けて言った。嬉しかった。リリィから僕に話しかけてくれて。



「勇者様、馬車を出発させますが、よろしいですか?」


僕は馬主に「ああ」と了承の意を伝えて、リリィに手を振った。


「またね!」


こうして、僕は勇者としての旅の一歩を踏み出した。なんて、簡単にはいかなかった。



手を振り替えしていたリリィが黒いローブを羽織った何者かに口と腕を押さえられた。そして、何者かは紅い一降りのナイフを取り出しリリィの胸に突き立てる。



視界が真っ白になるような気がした。リリィは、大量の血を流し顔を真っ青にして僕を見ていた。



僕は咄嗟に馬車から大きく跳躍をする。


『来い、聖剣』


僕は、空中で剣を呼び出し着地の衝撃に耐えるため、月龍の力で身体能力を上げる。そして、着地した瞬間に走り出す。


僕は適を見据え、練習しておいた飛ぶ斬撃を放つ。


僕の放った天翔剣(自分で命名)は道を瞬く光で切り裂き、ローブの男(多分)に向かっていく。


ローブの男に当たった瞬間軽い光の爆発がその場を包んだ。


「やったか!!」


言ったあと、生存フラグだと気づき、僕は追い撃ちをかけるため走る。だが、そこでありえないことが起こった。なんと、植物の蔦が僕に絡み付いてきた。


「チッ!」


僕は、蔦を切り払おうとしたが、剣は空を斬っているように手応えがない。


僕は、仕方なく魔力を剣に集めるように集中した。次の瞬間、蔦は何の前触れもなく消えた。それで、僕の集中は途切れた。


「幻?」


魔法等で幻を見せるようなことができるか知らないが、一つ心当たりがある。"幻の勇者"幻を見せるという幻龍(げんりゅう)と契約した者。最初は、華の勇者かと思ったが、手応えのなさから幻だと推測する。月龍が言ってた仲間ってのはあいつなのか?


色々考えたがすべては後の祭。もう、ローブの男の姿はない。そして、リリィもそこにはいない。


僕は、剣を胸の前につがえて集中する、月龍から魔力が送られて来る、僕のオタ知識からすると、多分これは月龍から魔力を借りることができる神器的なものだろう。


月龍の魔力を纏う、感覚が研ぎ澄まされるようだ。


僕は、全ての神経を使い散策を行う。


沢山の人々のどよめきが聞こえる。「勇者様だ」と無邪気に言う子供達。この中で、ここから離れていく足音を探す。


「できるわけねえよな・・・」


声ならともかく足音はきつい・・・


「ユウ・・・カ・・・助け・・・て・・・」


それは、足音よりも小さい微かな声だった。僕は走った。剣の瞬く光で白い残像を残しながら、流星のように駆ける。


「リリィ!!」


まだ、生きている。まだ、助けられる。僕は絶対、リリィを守る!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



闇を閉じ込めた暗い路地で僕は、空を仰ぎ見て叫んだ。


「リリィーーーーーーーィ!!」


もちろん返事はない。完璧に見失った。もう、終わった。


僕の心は哀しみの底に落ちていき、ただただ徘徊を続けるしかなかった。


「こんにちは、勇者様。」


闇に紛れて近づいてきた少年が声をかけてきた。


「悪い、今は少し急ぎなんだ。」


僕は、振り替えり軽く断りを入れ、走り出そうとした。


「待った。まだ話しも聞いてないのに行くのかい。このままじゃ、本当に負けるよ。君は生きていられるかも知れないけど、リリーナ・アルベルトは死ぬね。」


僕は立ち止まる。


「君は、守りたいんだろ。なら、僕を少し頼ってくれ。」


僕は、少年の方を向き言う。


「助けられるのか・・・」


「それは君次第だ。」


少年はキッパリと言い放つ。僕は、騙されるのではと思ったが、従うことにした。僕はこの時、大切な何かを救うためなら騙されても構わないと、絶対に守ってやると誓った。


「了承するんだね。じゃあ、情報を提供しよう。リリーナをさらったのは、ロン・レゾニック。通称、幻の勇者。龍器は短刀。それ以外は使えない。特技に暗殺だね。多分足音消せるから、君には見つけれないよ。けど、僕にはわかる。やつは、西区の崩壊した民家で待機している。今行けば、発見撃退くらいなら君にできるだろう。」


僕は、圧倒された。なぜ、そんなに情報を持つ?だが、それを言ってる暇はない。


「見返りは何が欲しい。」


少年は、驚きを隠せなかったのか、少し動揺していた。


「ああ、そうだね。なら、僕のピンチの時に助けてくれるってのは、ダメだよね~」


「わかった。努力する。」


僕は走り出す。微かに「君が僕に感謝をしてくれれば、それでいいんだけどね」と言ったのが聞こえた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



西区、それは妖魔の襲撃で一番ダメージを負った場所だ。


家はほぼ全てが壊れていて、活気と言うものはすこしもない。とりあえず僕は一つ一つ家を調べていく。


すると、うめき声が聞こえた。


「クソ、早くしろよ、幻龍!・・・僕に死なれるとまずいんだろ。」


僕は物影で隠れ、顔をすこしだけ出して状況を確認した。ローブの少年、ロン・レゾニックは目を押さえて苦しんでいた。


リリィはどこだ?


ロンの後に、魔方陣の上に寝そべり胸に短刀が突き刺さったリリィがいた。


僕は、聖剣を構え直して、ロンに向かって突撃をはかる。ロンは、こちらに気づき、恐怖の表情で言った。


「待ってくれ、やめて・・・まだ、死にたくない。」


僕は、速度を緩めロンの近くまで行き、聖剣をロンの首元に突き付けた。


ロンは、ブツブツと「死にたくない」だの「俺は悪くない」だのとつぶやいていた。


「おい、リリィは生きてるのか?なぜ、こんなことをした?返答次第では、命はないぞ・・・」


僕は、冷たい声で言った。その言葉でロンは顔を蒼白にした。


なんだか、おかしいな。もっと抵抗してくると思ったのだけど・・・


「俺は、死にたくない。だから、力が必要なんだ。お前らに勝てる力が・・・」


次の瞬間、違和感が走った。なんか、ヤバい!アニメなどを見ている時によく感じる違和感、敵キャラが意外と早くたおせた時とかの・・・


次の瞬間、ロンがその場から消えた。そして、リリィが音もなく立ち上がる。まさに、ホラゲのゾンビのように手をつかずに上半身が競り上がってくる。


「なんで、早く助けてくれなかったの?ユウカが助けてくれるって信じてたのに・・・」


リリィは、音もなく僕の目の前に移動して、首を絞めた。


「ユウカも一緒に死のう・・・私とずっと一緒に・・・」


これは、幻だ。そうだと分かっているのに体は動かない。本当に首を絞められ、本当にリリィにそう言われているようだ。気づけば、さっきと同じ位置にロンがいる。


ロンは、ニヤッと笑い言った。


「ほらね、幻龍。俺はすごいでしょ、どんな幻を使えば有効なのか全部分かってる。僕が、君の力を最もうまく使えるんだよ。」


ロンは短剣をくるくると回し、パシンと音をたて持ち直す。


そして、僕に近づいてくる。


「この世界では、誰かを殺さないと生きていけないんだよ。だれを蹴落とすか、だれを陥れるか、君はそんなことを考えながら生きて行けるのか?なあ、わかるだろ、お前は殺される側なんだよ。」


ロンは僕のに短剣の先を向ける。その短剣は、紅く染まっていたがそれは血の汚れではなく元々の色だとわかる。それほどに美しい紅だった。血で汚れない剣それは聖剣と同じ種類の剣だとわかる。つまり、あの短剣は幻龍の剣。


ロンは幻龍の短剣を軽く振りかぶる。


「それは、お前の方だぞ。弱虫。」


僕はフッと笑い、聖剣を振りかぶる。それは、ロンのこめかみをかする。


ロンはそれに戸惑い距離をとった。


幻のリリィが3人に増え僕の両腕をも抑える。


「その、幻じゃ動揺しないのかよ。」


僕は返事の変わりに、詠唱する。


グラッドさんが買ってくれた。魔導書に書いてあった光属性の上級魔方・・・月龍の力を借りている時だけ使える僕の切り札。


「月に誓う・・・(そら)に遍く全ての星よ、我が呼び声に答えよ、光の箱船となりて、闇を切り裂け・・・」


僕を中心にして魔方陣が僕を包むようにして複雑な魔方陣の障壁が展開される。月と星を媒体とした光の魔法、試し打ちしたときはその効果に度肝を抜かれた・・・


僕は魔力を解放し、意味を持つ言葉を紡ぎ魔法の引き金を引く。


月下暗転(レイデント・ノア)


白く光る魔方陣からさらに瞬い光が一際大きく展開されていた正面の魔方陣から溢れるように放出される。その光は、周囲一帯を包み込み光に溶かしていった。


「これは・・・」


ロンは必死に魔法から逃れようとするが、光はロンを捕らえ白い世界へと引きずり込む。




魔法が終了し、世界に静寂が満ちた。


あの光に包まれた建物などには、変化はない。


むしろ、魔法などなかったように。


空は、変わらず薄く照らされているが、なんだか闇がすこし薄れた気がした。


そう、『レイデント・ノア』は月龍と光の箱船の存在を媒体とした魔法で、闇のみを消し去る。つまり、リリィを傷つけず、ロンのみを消し去れる。


「終わった・・・」


僕は、息を吐きながらポツリと言った。


僕自信人間を殺したことはなかったからなんだか気持ちが落ち着かない。まあ、性格には消しただけど。


「あの、ちょっといいですか?」


「ん?なに?・・・って!お前・・・なんで!?」


ロンが、僕の横で首を傾げている。


「さすが、月の勇者ですね。あれほどの魔法を打てるなんて。しかも、わざわざ殺さない魔法を選ぶなんてね。承知しました。あえて、殺さないというなら手を貸すしかないですね。」


「は・・・?殺さない魔法?」


僕は、ロンが何を言っているのか分からなかった。


「え?もしかして今の魔法が闇を司る者にしか効果がないって知りませんでした?あ・・・僕、勇者なんで光側ですけど・・・」


そうだった、勇者だった。仲間だったよ。危ない危ない。真剣で魔法撃ってたよ・・・


「も・・・もちろん、殺すつもりはなかったよ。けど、なんでこんなことをしたんだ?」


「いや、それは・・・」


僕は、今最も聞かなければいけないことを聞いてみた。


ロンは申し訳なさそうに言った。


「死にたくなかったんだよ・・・知ってるか、魔王を倒した勇者がどうなったか。幻龍が言ってたんだけど、どうやら力を手に入れられるのは、一人だけなんだ。考えてみれば普通だよな、王は一人だけ・・・複数王になろうとするものがいれば殺しあいが起こる。月の勇者が王になった後、他の勇者が月の勇者を暗殺したんだ。」


僕は、グラッドさんに力や王については聞いたが、その後は知らない。暗殺・・・勇者同士の殺しあい・・・


「なるほどね、つまり今回の常夜聖戦つまり魔王討伐における勇者六人の中に王を目指すものが2人以上いれば、殺しあいになるってことか?」


僕は、今までの情報からの推測を口にする。


「その通りだよ。その中で、ひ弱な幻の勇者が生き残るには、この『幻惑』の能力を使うための『龍眼』を手に入れなければいけない。」


ロンは自分の目を指していった。ロンの目は紅く輝きを燈している。後から、幻であろう犬が飛びついてくる。


犬が消えると、ロンの瞳の輝きは消えて元の碧眼に戻った。


「そのために、この『龍器』つまるところ僕と幻龍を繋ぐ唯一の武器。これを使ってリリィさん・・・華の勇者の『龍眼』の能力『開華』を一時的に幻龍が作動させて、僕の『龍眼』を開華させる。って感じだよ。心配しなくていいよ、リリィさんは、魔力を使いきってるだけだ。」


僕は、持ち前の頭のよさとファンタジー脳をフル活用しなんとか理解する。そして、理解する。これはいわゆる、最初に出た敵が仲間になるイベントだ。


「そんなことしなくても、俺がお前を守ったのに・・・」


「え?」


僕は、守ると告げる。僕には、これしか出来ないから・・・守ることしか出来ないから、僕は何度も言う、守る・・・と。


「俺は、皆を守るために力をもらった。それで結果的に勇者になった。君を殺す気はない。


だから、俺は君の手をとる・・・力を貸してくれ!ロン!」


ロンは、僕の差し出した手と僕の顔を交互に見て、口をつぐみ手をとった。そして、ロンは静かに泣き出した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



気がついたら、ユウカの魔法の光にのまれていた。そのあと、私をさらった少年とユウカが話していた。


私は、ナイフで刺されたはずだが傷がないなんでだろう。


なんだか、自分から起きていくのもあれなので、ユウカが起こしにくるのを待っていたそしたら、少年とユウカが手を取り合ってなんかいい感じの雰囲気を出していた。



ーあれ?私って忘れられ・・・

あまりギャグ系の話は上手く書けないです。主人公のキャラが崩壊してるかも知れないので、そのあたりのことを感想にでも書いてくれると嬉しいです。

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