黎明の月
初投稿です。頭で描いてある、ところまで書けるかわからないので、あらすじは、プロローグの内容(本編になるかも)を書いておきました。つじつまを合わせようとして主人公の性格ぶれてるかも知れないので、アドバイスください。
ー魔王を倒した勇者はこの世界の王となるー
これは伝説として言い伝えられた物語
二千年ほど前、平和な世界に魔王という魔族の王が現れた。魔王は太陽を黒く染めあげ、世界を常夜へと変える。黒い太陽の影響を受けた妖たちは妖魔となり、昼間でも活動する魔物となる。妖魔は人々を襲い、田畑を荒らす。
そんな世界を見兼ねた神が龍と呼ばれる特別な存在を創成した。龍は、勇者を選別し『龍命士』として希望の力を授ける。選ばれた勇者達は、魔王を倒し王になるためにその身を授ける。
そして、魔王を殺した勇者は王になる。
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夜明け前の、静かな時間。ほとんどの人はまだ寝ているが、主婦等が朝食を作っていたりする時間だ。私はその時間を狙い、市場で朝食のデザートに果物を売っている。
「お嬢ちゃん、今日も早いな。」
「おはようございます。」
隣の店の男性は、魚等を売っていて、漁商ギルドに所属している。
男性と最近の漁獲の調子を聞いていると私の店に客が来た。
「おはようございます。何か買いますか?」
私は笑顔で私の店に来たエプロン姿の女性に話しかける。この人はよく果物を買っていく人で、たしか女性でありながら、騎士になったすごい人だ。名前まで覚えてないけど・・・
「おはよう、リリスちゃん。朝早くからご苦労様。いつもの果物をくださいな。」
私は赤い果実を渡して、代金を受け取った。
女性は若き日の話を沢山してくれる。冒険談から色恋話まで色々と正直めんどくさいが、暇な時には調度いい。
「おっと、話し過ぎたね。そろそろ帰るよ。夫と子供が待ってるからね。」
「はい、ありがとうございますまた来て下さいね。」
女性は「はいね」と言い、帰ろうとした。
その時、隣の店の男性が言った。
「おい、見ろよあれ」
と言い太陽を指差す。
西の空には見ているだけで吸い込まれそうな漆黒の太陽が出ていた。黒い太陽は暗く、私達を仄かに照らしていた。
「嘘・・・だろ・・?」
隣の店の男性がおぼつかない声で言った。
「魔王が・・・降臨したのかっ!?」
「魔王ってあの伝承に出てくる?」
私は、男性に問いた。
「ああ、お嬢ちゃんも知ってるだろう。『黒い太陽が浮かぶ時、世界に魔王が降臨する』お母さんに教えてもらっただろう。」
確かにおとぎ話で聞いた事がある。
「じゃあこの村も・・・」
男性は言葉を繋ぐ。
「そう、『妖魔に襲われる』」
ゴォーン、ゴォーンと警鐘が鳴り響いた。その音はこの世の終わりを告げるように、不気味に響いた。
「逃げろ!西から妖魔の大群が攻めて来たぞー!!」
妖魔は、妖が魔族の影響を受けて魔物となった者だ。妖は、魔族の影響を受けやすく、魔物になりやすい事で有名だ。普通、妖魔は人の多くすむ場所には近づくことはなく、人がすみずらい場所を選び巣を作るため、町に妖魔が現れるのは、はぐれてしまった、ドジな妖魔くらいだ。
私は警鐘に驚き硬直した。
「お嬢ちゃん早く!逃げるぞ!!」
「はい」
私は駆け出した。
狭い路地を通り、町の緊急避難所へ向かう。あそこなら、守護騎士がいるし砦もある。妖魔から身を守れる。
「うわあああ」
隣の路地から悲鳴が聞こえた。
私はそれに恐怖を抱きながらも、必死に走る。
ー怖いー
緊急避難所の入口が見えた。
開いたところに出ようとしたとき、目の前に鳥型の妖魔がいた。
「ギシャャャャァァァァァ」
妖魔はこの世のものとは思えない雄叫びをあげて、顔を翼で覆うようにしていた。
妖魔は、始祖鳥のように、爪と牙をもちながら、大きな翼を持っていた。赤いその羽毛からは、血を連想させられた。
すると、いきなり物影に引き寄せられた。
「静かに!!」
女性が緊張した声で言った。
「あの妖魔は目があまり良くない。他のことに集中している今なら、屈んで行けば気づかれないだろう、いいかい絶対に妖魔の方を向いてはいけないよ。」
私は素直に従うことにした。首を縦に振り了解の意を伝える。女性は「ついて来てといいできるだけ、妖魔を迂回しながら、緊張避難所の扉に向かった。
私は静かにそれについていく。
ビチャ・・・クチャ・・・
妖魔が発てる音は気持ちの悪い音だった。だが、女性の言ったことを守り、妖魔を見ないようにする。
何もない、何にもありはしない。そこには人の死体等ないし、妖魔がそれを食べている事もない。
私は目に涙を浮かばせながら、ついていく。
「助け・・・て・・・」
微かに声が聞こえた。
私は反射的にそちらを向く。なぜなら、それが隣の店の男性の声だったから。
私は叫び声を上げていた。
妖魔は鳥ではなく、獣のように男性を貪って嘴を朱く染めていた。
その目が、私たちに向いた。
女性は舌打ちをしながら、私を引き離脱させる。
妖魔はは私たちを狙い嘴で突いた。「ヒィッ」私は思わず声を出した。
女性はそれを軽くかわして、足元の木材をけり上げ、それを槍のように扱い鳥の目に突き刺した。
「ギュルアアアァ!!」
妖魔は咆哮を発して、もがいた。
「今のうちだよ!リリィちゃん。」と、言い私の手を引いて起き上がらせようとする。
私は何とか立とうとして、手をひっぱりかえした。が、ストンと手が落ちた。暖かい朱い液体が頬に伝う。
「えっ?」
目の前では、妖魔に後ろから嘴で突かれて、体に大きな穴が空いている女性の姿があった。
私は叫んでいた。
どうして、私がこんな目に合わなきゃいけないんだ。
こんな事になるんなら 、もっとしっかりと生きていればよかった。何気ない一日をしっかりと過ごしておけばよかった。隣の店の男性の名前を聞いておけばよかった。女性の名前を聞いておけばよかった。もっとたわいもない事を楽しく話しておけばよかった。
こんなこと起こらなければ、せめて昨日からやり直したい。ダメなら、今日の朝からでもいいから・・・
目の痛みになれたのか妖魔がしっかりと私を見据えている。
私、ここでしんじゃうのかぁ、もう少し生きたかったなぁ
妖魔が朱く血で染まった嘴を向け、わたしを貫こうとする。
絶望の中で、私は声を聞いた。
『悲しみのなかに咲くもの、皆の心に安らぎを送るもの、過酷な世界の希望となるもの、闇を超える道しるべとなるものよ。汝が試練を成し遂げ、王へといたらんことを』
視界の端に、一筋の美しい閃光が走った。それは、妖魔の頭を落とした。
「大丈夫?怪我はない?」
その閃光を放ったのは、人だった。薄い金色の髪、まだ幼さを残す顔立ち。そして美しい光を放つ一降りの剣。
少年は、私の横の女性をみて・・・いや、女性だったものをみて、悔しそうに言った。
「ごめん・・・助けられなかった・・・」
私は、静かに少年に「ありがとう」と述べ、助かったという安心で、眠りに落ちた。
微かに、少年の心配する声が聞こえた。
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僕は、夏樹 佑華。ごく普通の中学生だ。ただただ、アニメやゲームが好きなだけなのだが、クラスで少し引かれていたりする。はっきり言って、アイドルとかの歌を聞いている方が不健全だと思うのだが、僕は萌え系のアニメまだ手を出してないし。
いじめられる理由は男子に人気な霧ヶ峰 真狐さんに、「佑華くんって他人思いのいい人だね。」と言われたり、同じく男子に人気な高田 由利さんが「石原くん(クラスのリーダーのようなイケメン)よりも優しそうだし、白馬の王子様って感じがする。」と言われたからだ。
ある放課後のこと
「ごみひろいのボランティア参加できる人いる?」
担任の河村先生がクラスの皆に問い掛けた。ごみひろいは放課後に行われるため皆やりたくないので、誰も応じる人はいない。
「しょうがないなぁ、ごめんけど、学級役員がやってくれない?」
級長の石原が「マジか!俺、部活あるのに・・・」と言った。
河村先生が「ごめんね」といい、教室からでていった。
すると、石原が僕のところに来た。
「おい、お前部活入ってねぇだろ?俺の変わりにやってくれないかなぁ?」
「ごめんけど、今日は用事があって・・・」
「ああ?俺に逆らうのかよ?優しい優しい白馬の王子様よぉ。
石原の取り巻きらしき奴らが後ろで笑った。
「コイツが王子様だったら、俺は神だなww」
「こんな、貧弱なやつが王子かよw」
「やべえ、おもしれえw」
何が面白いのか、下品な笑いを浮かべている。
「ごめんよ石原くん、ホントに今日は用事があるんだ。」
石原は笑うのをやめて、低く重い声で言った。
「そっか」
ブンッ
僕は、殴られた。石原の右フックをまともに食らい、僕は床に俯せに倒れた。
「おい、起きろよ。王子様。」
足で頭を蹴りながら石原は言った。
「石原サイコー!!!」
取り巻きが囃し立てる。
石原はフッと微笑をしながら僕の腹を蹴る。
「グハッ」
思わず痛みで声が出る。
「おい、夏樹!ごめんなさいって言えるか?逆らってすみませんって言えないか?」
石原は僕の頭を持ち上げる。
「・・・」
僕は答えない。痛みで声が出ないのだ。
「夏樹君、感謝してね。君の頭を治してあげるよ。ごめんなさいが言えるようにね♪」
石原は陽気な声でそう言って、僕の頭を床に何度も何度も打ち付けた。
何十回か打ち付けられたときに、僕は意識を失った。
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「大丈夫?」
気づいたら、そこには石原ではなく霧ヶ峰さんがいた。
「ごめんね、佑華くんわたしのせいで・・・」
僕は、なんで君のせいなの?とはてなを浮かばせる。
「私ね、石原くんに告白された事があったんだけどね。その時に『私は佑華くんが好きなんだ』って言っちゃったの、そしたら、次の日から石原くんが佑華くんをいじめだして・・・」
霧ヶ峰さんは泣きながら言った。
「だからね、石原くんが佑華くんをいじめたのは、全部私のせいなんだ。ホントにごめんね。悪気はなかったんだよ、ホントだよ。」
霧ヶ峰さんは苦しそうに顔を歪ませて言った。
「大丈夫、君は悪くない。」
僕はそう言って、起き上がった。
「ほら、霧ヶ峰さん、ボランティアに行こう。僕は大丈夫だから。」
立ち上がって伸びをしてみせる。
「えっ・・・と、佑華くん、用事があるんじゃなかったの?」
霧ヶ峰さんが申し訳なさそうに聞いてくる。
「別にいいよ、早く終わらせて帰ろう。」
僕はありったけの笑顔で笑いかける。
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僕は、ボランティアが終わったので、全速力で家に向かった。僕のクッソタレ!!ボランティアなんか行かなきゃよかったのに・・・
「佑華くん、一緒に帰・・「ごめん、急ぐから。」」
霧ヶ峰の誘いを悔い気味で断り駆ける。
目的地は中央病院。ここからは約3キロ。10分でついてみせる。
僕は必死に走った。全力で走った。お母さんの手術に間に合うように・・・
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私は重い病気を持っている。そのせいで、息子には迷惑をかけている。息子はゆうくんと言って、人のためなら自分を犠牲にするくらい優しい。私にとって最高の息子だ。
私は今日、手術を受ける。成功率は20パーセントだ。成功はまずないだろう。
息子は、「今日は学校が終わったら、すぐに駆け付ける」と言っていた。だが、学校が終わり1時間経ったが来ない。息子の事だから、何か面倒なことを変わりに引き受けたりしているのだろう。
「今から、手術室に、移動します。」アナウンスが聞こえた。死ぬ前に息子の頭を撫でてあげたかった。だから、この手術、成功しますように・・・
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はあはあ、僕は中央病院についた。時間は手術開始ジャスト、僕は荒い息を吐きながら、中央病院の中へと駆け込む。
お母さんは、僕が泣いて帰ってきても、僕が喧嘩して帰ってきても、いつも僕を諭してくれた。僕は、お母さんのおかげで今、この僕が存在しているのだと、思っている。
成功率20パーセント、そんなのしるかよ。成功以外はありえない。ゲームやアニメではどんな可能性でも成功した。お母さんは死なない。
「お母さん!!」僕は、手術室に入っていくお母さんに向かって叫んだ。「がんばれ!お母さん!!」
20パーセント、それは死を告げられたもどうぜんだ。20パーセント、はっきり言って日本がんばれよ!と、言いたくなる数字だ。だが、そんな患者も存在する。
夏樹家は、父、母、息子の三人家族だ。
父、和也は警察官であり、息子に思いやりや優しさを教え、将来は警察官という仕事を継がせようとしていた。だが、和也は暴漢との殴り合いになり、相手を殺してしまう。そして、自らの命をも断ってしまう。
母、文江は保育士であったが、和也の死と同時期、重い病気で倒れてしまい入院。それから、息子、佑華は一人暮らしを始める事となる。
こうして、佑華は孤独の道を突き進んだ。
そして、手術開始から12時間たった。結果は失敗だった。
お母さんは、僕に「優しい人間でいてね、決して人を悲しませたりしてはいけないよ、お父さんのように、悪い奴から皆を守る、強い心を持ったカッコイイ人になりなさい。」と伝えてほしいと言っていたらしい。
僕は誓った。皆を守れるような心の強い人になろうと決心した。そして、僕は学校を休みずっとずっと泣き続けた。暗い暗い部屋の中で・・・
次の日、僕は家に帰った。その日も僕は学校を休んだ。心は沈んでいるが、腹は減る。家の食料が無くなって来たので、コンビニへ向かう。
僕は、遠くのおばあちゃんの家に引っ越しすることに決まった。少しこの土地を離れるのは名残惜しいが、仕方ない。
コンビニに向かう途中、霧ヶ峰の声が聞こえた。
「あなた達、佑華くんに謝りに行きなさい!」
どうやら、石原達と話しているようだ。
「何言ってんだよ。あいつは、心よく引き受けてくれたんだぜ。俺達が謝る必要なくね。てか、あいつが手術に間に合ったからって何か変わるのかよ?」
霧ヶ峰は言葉を詰まらせる。
「けど、だって佑華くんは・・・」
僕は無言で石原達の横を過ぎた。
取り巻き達は、ひいっ と短い悲鳴を上げた。が、こちらが無関心なのを見て、胸を撫で下ろした。
「佑華くん!!」
霧ヶ峰が呼び止めた。
「なに?」
思った以上に冷たく、掠れた声が出た。霧ヶ峰は悲しそうな顔をして「なんでもない」と、答えた。
コンビニで菓子パンやジュースを買って帰る途中、まだ霧ヶ峰達がいたので迂回して行こうとしたとき
パァン!と乾いた音が響いた。霧ヶ峰が、石原の頬に一発平手打ちを叩き込んだのだ。まさしく、クリーンヒットだ。だが、石原は何ごともなかったかのように、拳を振るった。
「危ない!!」
僕は、菓子パンやジュースをほうり出し、走り出していた。
霧ヶ峰は石原の拳をまともにくらい、倒れる。おい、お前ら、乗せろ。
石原は、ちかくにある下田(金持ちな取り巻き)の車を指した。
取り巻き達は霧ヶ峰を運ぶ。
「おい、お前なにやってんのかわかってるのか?」
俺は、石原につかみ掛かる。だが、後ろから取り巻き達に差し押さえられる。そしてタコ殴りにされ、車の後ろに荷物とともに詰め込まれた。
「まずいですよ、石原さん。こんなことしたら。」
「なぁに、ばれやしないさ。実は、今使われてない工場でな・・・」
「なるほど、さすが石原様です」
何やら、俺達は廃工場に連れて行かれるようだ。
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廃工場は意外と遠くにあったようで、見覚えのない場所である。すると、沢山のバイクが走ってきて止まる。取り巻き達だ。てか、お前ら免許持っていないだろ。
俺は個室に連れられて、柱に縛り付けられ口にはガムテープを張られた。た。抵抗したが、虚しく終わった。
霧ヶ峰が部屋に入ってきた。石原も取り巻きを2人連れて来た。
「さて、今から霧ヶ峰を犯そうと思うのだが、佑華くんはどうだい?一緒にやらないか?」
取り巻きが、ガムテープを外した。
「断る」
俺は、はっきりと拒絶した。低く、自分でも冷や汗が出るような声で。
「そうか、ならおとなしくしていろ。」
石原は俺の脇腹に蹴りを入れた。
「このいい子ちゃんが、あとでセメントで固めて海に捨ててやるから、それまで待ってろ。」
取り巻きは俺の口を再度ガムテープでふさぐ。
冗談じゃない、セメントずけだと!!ふざけるな!ともがくが、ロープは外れそうにない。そんな・・・
石原が霧ヶ峰に触れる。
「いやぁあ!!」霧ヶ峰は必死に抵抗したが取り巻きに押さえられる。
霧ヶ峰は取り巻きに押さえられ、裸にされた。そして、石原や取り巻きに犯された。入れ代わりで霧ヶ峰を犯す取り巻き達や気持ち悪い顔で笑う石原、僕にはまるで醜いゴブリンのように見えた。
僕は、霧ヶ峰の苦しそうに声を上げたり、助けてといいたげに僕を見ている。
ー悔しいー
僕は、誰も守ることが出来ないと実感した。自分の力は、弱く脆くなにを守る事が出来ない。
力が欲しい。皆を守れる力を、霧ヶ峰を守れる力を、だれでもいい、誰だろうと構わない・・・僕に力を・・・
『汝美しく映るもの、輝きを見据え自らも瞬くもの、幾多の星を連れしもの、皆を守りしもの、汝が試練成し遂げたとき、汝が王へといたらんことを・・・』
声が聞こえた。それは美しく、透き通った声。
次の瞬間、視界が白い光でうめつくされた。
石原は叫び声を上げた。いきいなり、佑華の足元に魔方陣が現れて、白い光が佑華を連れ去ったのを見たからだ。
「おい!夏樹!!どこ行ったぁあ!!」
石原は混乱し大声で叫んだ。
さっきまで佑華がいた場所に魔方陣が描かれていた。治まってきていた魔方陣の白い光が再度輝く。そして・・・
後日、廃工場では、石原と取り巻き達の獣の爪で引き裂かれたような死体が見つかった。胸を貫かれた霧ヶ峰の死体も見つかったのだった。そして、夏樹 佑華の死体が見つかることはなかった。
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「ここは、なんだ?」
佑華は光の道の中にいた。そこは、白い光の糸が絡み合い、流れていた。佑華はその光の奔流に流されている。なんだか、心が落ち着く。もしや、自分は死んでしまったのだろうか?佑華は不安を感じ辺りを見渡す。
すると、白い大理石でできた神殿のような場所に立っていた。
「あれ、おかしいな。さっきまでこんなところじゃなかった気がするんだけど・・・」
佑華が首を傾げていると、声が聞こえた。
『こっちだ。ひ弱な人族よ。』
僕は声に導かれるように歩いた。
『名は何と言う。』
「夏樹 佑華」
僕は、自然にその名を口にした。なんだか、自分の名前が他人の名前のように感じた。これは、ホントに僕は死んでいるのでは?
『佑華・・・か・・・心得た。』
僕は、神殿の奥に歩いて行き、声の主を見て愕然とした。
『佑華よ・・・我は、汝にこちらの世界を救ってもらうために喚びだした。済まないが、力を貸してくれないか』
そこには、ドラゴンがいた。純白の体の純白の翼。頭には、金の光を放つ黄金の剣が角のようにはえていた。そして、背中には、美しい対翼。光沢を放つ鎧のような体は、金に僕はその姿に見とれた。
『汝を我が主と定める。我、汝に忠誠を誓う。統べては、汝が王へといたらんために』
純白の龍は深紅の瞳で僕を見つめる。
「どうゆうことなんだい?主?王?」
僕は異形の生物である純白の龍を前にしても落ち着いていた。なぜだろう、さっきから自分が光になったように、安心感を感じる。
『済まない。こちらとしても、ゆっくり説明したいところだが、時間が惜しい。調度君の仲間となる者が今死の危機に面している・・・どうだろうか。一つ人助けとしてくれないか。』
僕は、言葉に詰まる。今でもまぶたの裏に焼き付いた霧ヶ峰の悲しそうな目、耳から離れない、卑屈な笑い声。
「僕なんかがその人を守れるのか?」
僕は希望を求める。もし、この龍が僕にでも、守れる者がいると言ってくれるなら・・・
『心配するな。汝に我が聖なる剣を託す。心で、誰かを"助けたい"と願い、聖剣を呼ぶだけだ、あとは私に任せろ。いくらでも、力を貸そう。』
僕は、守れなかった自分と戦う、自分の弱さと戦おう。
「わかった。その人を助けてくるよ。」
この言葉を発しただけで、体が少し軽くなった気がした。
『では、行ってこい!』
僕の体が再び光に包まれる。
『汝は、星の勇者、人々を守りしもの。その命が尽きようとも皆を守ると誓え。』
「ああ、僕が絶対に守るさ、皆を」
佑華は光に連れ去られるように、神殿から消えて行った。
『頼むぞ、佑華・・・我はこの世界のためなら、どんなことでもすると決めたが・・・』
龍は神殿の上空に広がる星空に浮かぶ一際美しく輝く月を見て言った。
そして、龍は目を閉じ自分を呼ぶ声を待った。
最後まで読んでくれてありがとうございます。よろしければ感想を下さい。
勇者達が、魔王と戦う前に争って共倒れして、次の勇者にまた主人公が選ばれるのをやりたいのですが、ペース的にいつになるのやら。