勘違い女
――人間、自分に対して評価を下す時には無意識に甘口の採点を行ってしまうものなのだろうか?
自室の勉強机にて片肘をついて嘆息する私。そんな光景が何度、この空間で繰り返されただろうと思う。しかし、自分の抱いていたある種の幻想が打ち砕かれた事によって抱える羽目になった鬱屈とした感情に、溜め息の一つや二つ、十や二十は飛び出してしまう。
どうやら私は――ブス、らしいのだ。
自分ではとびっきりに可愛いとは思っていないながらも五段階評価なら四、上中下の採点で言えば中の上か、上の下――それくらいの自負があっただけに、好きな人へ告白した結果が惨敗だったというのは心に重くのしかかるものがある。
今まで友達だった相手に、関係が損なわれる事を承知で告白したのだけれど、
『何で付き合わなきゃいけないの?』
『あり得ない』
『意味が分からない』
などと、引き攣った表情で語られてしまったのだ。
私は今にも落涙しそうな壊れかけの心を抱きしめながら、とりあえず友人の前では気丈に振舞い、笑みを浮かべてその場を去った。
――もう、友人ですらなくなったかも知れない。
恋心を露呈させれば、もう友達になんて戻れないというアレだろうか。
しかし、今までからずっとこうだったのだ。好きな人に告白する度、申し訳なさそうに断られるのではなく明確な嫌悪や、不理解を示される。
そんな対応を受ける人生で私は段々と確信を深めていったのだ。
自分の顔面が――造形的に恵まれていないという事に。
……そういえば、いつだっただろうか。
クラスでも一番の男前だなんて騒がれ、皆が羨んでいる子が私に告白してきた事があった。そもそも、付き合えるはずのない男子が私に告白してきた――その事実に、私は馬鹿にされているのだと思った。
ブスの私に、何らかの罰ゲームとして告白して来い――などという結果がもたらした告白なのだろうと瞬時に分かった。
顔の造形が恵まれないだけで、こんな仕打ちに合うのかとさえ思った。他人の欠点を嘲笑い、そういった行いで私を蔑んでくる。見蕩れていた、なんて皮肉を込めた告白の台詞を吐いてくる彼に対して、私の憎悪は燃え上がった。
だから、私は引き攣った表情で彼に言ったやったのだ。
『何で付き合わなきゃいけないの?』
『あり得ない』
『意味が分からない』
ブスの私から徹底的に否定されて心をへこませたのか彼は、今にも落涙しそうな壊れかけの心を抱きしめながら、とりあえず私の前では気丈に振舞い、笑みを浮かべてその場を去った。
――ざまあみろ!
そう思いつつも、たかが顔面一つでこんな悪戯にさえ合う自分の不幸を恨んだ。
でも、まぁ……物を買う時にはやっぱりまずは見た目だし、「者」だってそうなのだろうか?
そう思考すると、また私は嘆息して机の上でうつ伏せとなる。
「あぁ……彼女欲しい」