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五十二
「やめろよ! 止まれ! 止まってくれよっ!」
誰も止めることができず、走りながら、人に揉まれながら、クゼは自身の暮らす廃屋の近くまで来た。
「……めてっ! ……れはダ……!」
「いい……ろよ! どうせ……りだ!」
何やら微かに叫び声らしきものが聞こえる。
(まさか……!)
嫌な予感がして、クゼは廃屋に駆け寄った。だんだんとはっきり聞こえてくる怒鳴り声。
「駄目! これは兄ちゃんの大切なっ!」
「うるせぇ邪魔すんじゃねぇ!」
ガタンッと、戸を勢いよく開ける音と共に、ゴツッと、低く鈍い音が響いた。
「っ……!」
戸を開け放ったクゼの目に映ったのは、体格の良いひとりの男と、その足元に力無くゆっくりと倒れていく見覚えのある幼い女子、そしてその頭から吹き出す、紅い――




