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五十

クゼは、寝間着のまま、冬空の下を走っていた。

先程の光景を思い浮かべる。あれは、あの書物に記されていた龍王崩御の際に起きる現象であった。青白い閃光は青龍の証。死した王の身体から龍が脱け出し、天に昇る時の軌跡だと伝えられている。しかし、それは滅多に起こることではなかった。常では、龍の王は次の龍王の器に龍を引き継ぎ、次の者が正式に王となる儀をして後死する。その死は、龍王が既に次の者に継承してあるため、龍王の崩御とは成らない。龍王の崩御となるのは、王が龍をその身に宿したまま死する時。確かに王が病を(わずら)っていると触れはあった。だが、自身の命がもう長くないと分かっていながら、王が次王を指名せずに崩御することがあるのだろうか。つまり、これは。


(王が本当に突然死したか、万が一にも……誰かに(しい)されたか……!?)


何れにせよ、あの光景は、国民の動揺と混乱を誘う。王が、居なくなったのだから。

いくら国が荒れようと、この龍王國民には国を出るという選択肢は毛頭無かった。龍王國には国交と言うものが殆どない。あったとしても、王族が他の国に嫁ぐというものだけで、国民の殆どは国外がどうなっているのか知る者は少なく、ましてや国外に出たことがある者など皆無であった。出てはいけないというわけではない。この国での生活しか知らぬ民にとって、未知の国外に出るという考えが浮かばないだけなのだ。その八方ふさがりの中、国の凶事の象徴とも言える青白い閃光が上がれば、国全体の一大事が起これば、どうなるか。


「雨水は大丈夫かよ……!?」


雨水は王都の中で最も治安の悪い地。平時でさえ、殺人や盗みが横行している、死臭漂う灰色の街。荒れるとしたら、中心は雨水であろう。この懸念が実現しなければいいが。クゼは、自身を止める少女の声を振り切り、全速力で駆け抜けた。


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