四
「嫌だわ、また何かあったのかしら? 最近物騒ね」
娘がそうぽつりと呟く。その呟きにハクビはピクリと反応した。
「最近、物騒なのかい?」
「ええ、掏摸や強盗が横行しているらしいわ。王様がご病気だからかしら。なんだか、今年の実りもあまり良くないと聞くし……。この先この国がどうなるのか、みんな不安なのよ、きっと」
「そう……」
ハクビは娘の言葉に眉根を寄せた。
この国、龍王國にとって、王と言うのはある重要な意味を持つ。この国は龍の王が統べる国。王は龍に選ばれるとされている。古からこの国は、龍が選んだ王が統治することで、龍の加護を受けて成り立っている国であった。それは迷信などではなく、実際にこの国が水の都と呼ばれるほど水に恵まれているのは、龍……青龍が、この国を守護しているからであった。
龍に選ばれた者が王として統治しているからこそ、この国は豊かでいることが出来る。即ち、龍王が揺らげばこの国が揺らぐ。龍の王は、この国の平安の支えであり、国民の心の支えであり、この国の守護神との契約の支えであった。
そんな王が、先日病にお倒れになったと宮中から触れがあった。療養中であるとのことだが、容体はどのようであるのだろうか。王が病の中だという事は、国民に多くの動揺を与えたようであった。
「ちょっと、どうにかする必要があるね……」