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「ふーんふーふふーん」


清々しい昼下がり。肌寒くなってきた大通りを、機嫌良く鼻歌交じりで歩く男が1人。

色素の薄い栗色の髪、細められた橙の眼。簡易ながらも纏められたその髪は猫毛のようで所々跳ねており、もともと細いのだろう目をさらに細めその顔に笑みを浮かべている。どこかの放蕩息子だろうか、煙管(きせる)を蒸かしながら歩くその様は優美で、彼の家が裕福な事を醸し出していた。


「あら、ハクビさんじゃない!」


店の前で接客していた茶屋の看板娘が、彼を見つけて声を上げる。男はその声に気が付くと、笑顔を深めそちらに立ち寄った。

ハクビ。それが、ニコニコと笑顔を浮かべる細目の男の名前であった。


「おや。今日も綺麗だね、娘さん。東雲(しののめ)色の着物が良く似合っているよ」


「もう、ハクビさんったら」


娘は苦笑しながらも、満更でもなさそうで頬を(わず)かに赤らめる。


「寄って行かない? ハクビさん。おいしいお団子をご用意しますよ」


「いいね、お団子。ここのお団子はいつもおいしいよね。キミが出してくれるからかな?」


ハクビはニコニコと笑みを崩さずさらりと言ってのける。


「もう、ハクビさんは口が達者なんだから」


娘が再び苦笑を浮かべた時、大通りの少し離れた場所から、大きな喧騒が上がった。二人でそちらを振り返る。良く聴いてみると、その声の中には幾人かの怒号も交じっているようだった。


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