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三十一





クゼが立ち去った茶屋の裏口。

そこに立ち、しばらくそのままクゼの背中の名残を見つめ考えていたコウは、ひとつの声に呼び止められた。


「そこのお姐さん。クゼって男の子と知り合いなのかい?」


その言葉にハッとする。先程の事を見ていたのか、どうやらクゼとの関係を知られたらしい。

内心焦りながらも、コウは声の主の方へ顔を向けた。


「……あんた、誰だい?」


引戸のすぐ脇、腰まである塀の向こう側。そこに立っていたのは、ニコニコ笑みを顔に浮かべた細身の男であった。

こんな知り合いは居ない筈だ。初めて見る顔だった。


「私はハクビと言う者だよ」


その男は自身の名を告げる。

その名にコウはまたもやハッとした。確かクゼの話に出てきた名だ。最近クゼの元に現れる、変な奴。なるほど確かに、話に出てきた通り胡散臭い風体の男だ。


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