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十
「ひぃ、ふぅ、みぃ……」
その金額を数えると、少年はより笑みを深めた。もう一つの金子入れも検めていく。再び大量の銭が落ちてきた。
「さっすがオレ。上出来じゃん」
そして、最後の一つに手をつける。濃紅の色をした、滑らかな肌触りの上品な金子入れであった。これだけは何やら格が上のようだ。中身がいっぱい詰っているのか、その金子入れは丸々と太っている。少年は逸る気持ちを抑え、同じように引っ繰り返した。
ゴトリ。
「あれ?」
そこから落ちてきたものに、少年は目を瞠った。
少ないとは言えない量の銭と、もう一つ。僅かな光を受けて輝く、飴色をした掌程の大きさの塊。その形は角が丸まった四角形で、何やら持ち手とみられる突起と、その反対側には文字が彫られている面があった。
(これって、もしかして……)
反して彫られている文字を見る。
「やっぱり、これ……印?」
「そうだよ」