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 とある森林地帯。今そこでは火薬の匂い、人の叫び声、銃弾の音が混じり合っていた。そんな中を

「ハァハァ―――」

1人の少女が走っていた。歳は13くらいだろうか。明らかにサイズの合わない黒い上着を無造作に羽織り、蒼い髪を一纏めにしている。顔立ちは可愛らしいというよりか、凛々しい。そんな少女がまるで何かから逃げるように必死で走っていた。

「―――ったく!何でこうなるんだよ!」

誰かに対してではなく、この状況に少女は怒っていた。そして下唇をぐっ、と噛みしめて、我慢するように顔をゆがませる。

「あいつらのせい?!どちらにしろ、こんなことにはならなかったのに!!」

叫びは空しく、騒がしい森林の中で小さく響く。



********


「カロイス、いつになったら終わるんだぁ?」

「んなの、こっちが勝つまでに決まってるだ―――っろ!」

カロイスと呼ばれた男は襲ってきた敵の兵を剣一振りで薙ぎ倒す。

「それよりキメイル。敵の情報はつかめたのか?」

「あぁ、今回の軍は結構ちっさいみたいー。んで、上に報告したらその中のうちの人間1人、連れて帰って来いって言われたー。ていうか今回の任務はその人間を連れてくるためみたいー。」

のんびりと言うキメイル。


「で、どいつを連れてくんだ?」

「うん。なんか青髪の女らしいよ。可愛い子だったらいいのに~。」

「・・・いや、敵だから。」

ため息をつきながらカロイスは、隣にいる金髪の色男を見た。

「はいはい。でも青髪って目立つよねぇ。滅多に見ないもん。青髪っていえば『アノ一族』しか思いつかないんだけど。ねーカロイス?」

「どこの誰であったとしても、俺たちには関係ねーよ。」

しゃべりながらも、目的地に向かって2人は敵を倒し、歩き続ける。

カロイスはほぼ無表情で。キメイルはどこか楽しそうに。森林の中を2人は進む。




「あれ?ここってさっき来たような・・・」

蒼髪の少女は迷子になっていた。逃げていたが何から逃げていたのか忘れるくらい、走って、走って、走って、走って。最後には迷子になっていた。

「敵からは離れられたよね・・・。うん。結果オーライ。」

拳を固めながら、一人頷く。騒ぎからは遠く離れたようで、一息ついた。

「とにかく戻ろう。だいたい、アタシがこんなことにならなきゃいけないんだよ!」

ぶつぶつ、文句を言いながらとにかくさっきまでいた方とは反対の方にあてもなく進む少女。

「だいたい!夜襲かけられた上にまた別のやつらから奇襲ってなによ!ほんとに―――――ちっ!!」


少女の目線の先には、2人の男が立っていた。1人は茶髪で目つきが少々悪い男。もう1人は金髪のいかにも女の子にモテそうな男。そして2人とも騎士団の服装、胸には国章が縫われていた。

「逃げ・・・いや、もう無理か。」

気がつけば、少女は2人に挟まれて立っていた。


「わー綺麗な青髪だねぇ。初めましてお嬢さん。僕たちはね、アリバールの騎士団員。君を探してたんだよ。」

「・・・見つけたんだ。さっさと帰るとするぞ。」

「はいはーい。カロイスって本当にせっかちだよね。」

そう言うと金髪男はひょい、と少女を荷物のように担いだ。

「ひゃあ!?」

「あー、暴れないでね?」

「ちょっとアタシをどこに連れていく気だ!てめえらにこんなことされる筋合いはないっ!!放せ、血族の(アーレイヌ)の軍人!」

「やっぱりお前はベッセムの人間だな。このアリバールの国でその言葉を知っているものは、ごく少数だからな。」

ちらり、と少女を見ながらカロイスが言う。それを聞いた少女はかみつくような勢いで

「血族の民くらい生まれた時から教えられてる。血の流れこそすべてだと考えている愚か者たちってな!」

早口で捲くし立てた。

「・・・キメイル。」

「なーに?」

「黙らせとけ。」

「へーい。」

どすっ

「うっ・・・」

少女は気を失った。



「カロイスさぁ、機嫌悪い?」

「別に・・・」

3人は馬車の中にいた。馬車と言ってもとても簡素なものだが。

「ウッソだー。この子がさっき言ったこと気にしてるんでしょ。」

「当たり前だ。ベッセム人なのにアリバールの言葉を知っている時点で、怪しかったものの。『禁句』まで知っているようじゃ、拷問だけじゃ済まないだろう、この娘。」

「その割にはこの子の身を気にしてるんだねー。」

「ふん。そんなことない。」

「はぁ。本当に素直じゃないね。」

そうキメイルが言うとカロイスはそっぽを向いて黙り込んだ。


馬車はアリバール向かって進み続ける。





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